5. かつて起きた「LVMHによるエルメス買収未遂事件」
今でこそ対照的な2社ですが、実は2010年に、LVMHがエルメスの買収を画策した大きな事件がありました。
LVMHはエクイティスワップ(株式のリターンと金利を交換する金融取引)を使い、大量保有報告書の提出義務を回避しながら、ある日突然エルメス株の17%を保有していることを発表したのです。
これに対し、家族経営の伝統を守りたいエルメス一族は結集し、「今後20年間は株を売らない」という誓約で資産を凍結、買収を阻止しました。
泉田さんは、ビジネスに徹するLVMHに対し、作り手の思いを重視するエルメスを「スタジオジブリ感がある」と表現し、両社のダイナミズムの面白さを語りました。
6. 今回のポイントまとめ
- ブランド戦略の違い:エルメスは職人による伝統と希少性を重視する「単一ブランド」だが、LVMHはマーケティングとM&Aで拡大する「ブランド帝国」である。
- 投資対象としての性格:エルメスは1点突破の「グロース株」、LVMHは多ブランドに分散された「ラグジュアリーETF」的な性質を持つ。
- 圧倒的な収益力:エルメスは広告宣伝費を抑えても売れるため営業利益率が高く、足元の成長率や市場の期待値(時価総額)でもLVMHに迫っている。
- 歴史的因縁:2010年にLVMHがエルメスの買収を試みたが、エルメス一族が結束して株式を守り、これを阻止した。
動画では、さらに詳しいPL(損益計算書)の分析や、今後の成長余地についても語られています。ぜひチェックしてみてください。
動画はこちらからご覧ください。
ミライド
著者
ミライド powered by モニクル総研
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「ミライド」は、モニクルグループのシンクタンクであるモニクル総研が運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。証券アナリストの泉田良輔、木村敬子、ファンドアナリストの篠田尚子が研究員として在籍し、金融や経済ジャンルを中心に、ビジネス、テクノロジー、キャリア、ヘルスケア、スポーツに関わる話題などをアナリスト視点で深堀り解説します。データ分析やキーマンへのインタビューを通じて、ビジネスパーソンや一般投資家に役立ていただけるようなコンテンツを配信しています。(最新更新日:2025年12月5日)
監修者
京都大学文学部を卒業後、京都大学大学院文学研究科修士課程修了を経て、シティグループ証券、フィデリティ投信にて証券アナリストとして勤務。証券アナリスト時代はヘルスケア、小売、金融、半導体製造装置、テクノロジーなど様々な業界の産業分析、企業分析を担当。その後、Googleの広告営業部にてインダストリーアナリストとして営業チームの営業戦略立案やEコマース業界や旅行業界の顧客へのデジタルマーケティング提案に従事し、金融業界や消費財、化粧品、ラグジュアリー業界担当の営業チームの統括部長を歴任。2024年4月に、株式会社モニクルに参画し、同社執行役員 経営企画室長に就任。
モニクル総研では、金融業界でアナリストとして様々な産業分析、財務分析をしてきた経験、テクノロジー業界での実務経験、経営企画領域の担当経験や社外取締役の経験を元に、金融、投資、テクノロジー、コーポレート領域を中心にレポートを執筆。
カッパ・クリエイト株式会社 社外取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。