2. 「職人主義」vs「マーケティング戦略」
木村さんは、両社のブランド価値の源泉には明確な違いがあると指摘します。
2.1 エルメス(伝統と希少性)
熟練の職人による手作りにこだわり、あえて数を絞ることで希少性を維持しています。ロゴを前面に出さない「クワイエット・ラグジュアリー」を象徴し、ストーリーと品質で勝負するスタイルです。
2.2 LVMH(マーケティングとトレンド)
セレブリティやK-POPアイドルをインフルエンサーとして起用するマーケティング戦略に長けています。ロゴが分かりやすい「ラウド・ラグジュアリー」な特徴を持ち、トレンドを追いかけるビジネスモデルです。
ターゲット層についても、エルメスが富裕層・超富裕層に特化しているのに対し、LVMHは幅広いブランドポートフォリオを活かして、マス層から富裕層まで広くカバーしています。
3. エルメスは「グロース株」、LVMHは「ETF」?
投資家としての視点では、この2社は全く異なる性質を持っていると泉田さんは分析します。
単一ブランドで勝負するエルメスは、いわば「1点突破のグロース株(成長株)」のような存在です。一方、75以上のブランドに分散投資しているLVMHは、「ラグジュアリー業界のETF(上場投資信託)」に近い安心感があります。
「マスの予算が増えている時はLVMH、超富裕層が恩恵を受けている時はエルメス」といった、景気やターゲットに応じた使い分けも考えられるといいます。
4. 驚異的な利益率を誇るエルメスの収益構造
収益構造を比較すると、両社の違いはさらに鮮明になります。
両社とも売上原価率は3割前後で共通していますが、大きく異なるのが「販売費及び一般管理費(販管費)」の比率です。
LVMHが積極的なマーケティング活動により販管費を5割近くかけているのに対し、広告を打たずとも売れるエルメスは販管費が抑えられており、その分営業利益率が圧倒的に高くなっています。
足元の業績を見ても、2022年以降の売上高成長率はエルメスがLVMHを上回っており、時価総額でもエルメスがLVMHを追い上げる現象が起きています。


