春の訪れを感じる3月、新年度を前に生活設計を見直している方も多いのではないでしょうか。

長引く物価高の影響で、特に年金で暮らすシニア世代にとっては、家計のやりくりが悩みの種かもしれません。

公的年金だけでは心もとないと感じることもあるでしょう。

実は、そんな年金受給者の生活を支えるために、いつもの年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度があるのをご存知でしょうか。

この記事では、どのような方が対象になるのか、2025年度は具体的にいくら受け取れるのか、そして手続きはどのように進めればよいのか、といった疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。

ご自身が給付の対象になるかを確認し、利用できる制度をしっかり活用していきましょう。

年金生活者支援給付金とはどのような制度?

年金生活者支援給付金は、年金を受給している方々の生活をサポートする目的で2019年に始まった制度です。

公的年金の支給に合わせて、2ヶ月に一度、条件を満たした方へ給付金が支給されます。

この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3つの種類があり、受給している基礎年金の種類によって、どの給付金の対象になるかが決まります。

それぞれの給付金には所得などの要件が定められており、それを満たす基礎年金の受給者が対象となります。

年金生活者支援給付金の支給要件を解説

この章では、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な支給要件について、詳しく見ていきましょう。

障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」を受け取るための主な要件は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることです。

加えて、前年の所得が479万4000円以下である必要があります。

ここで重要なのは、所得の計算に障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれない点です。

また、扶養しているご家族の人数に応じて、所得の基準額が引き上げられる仕組みになっています。

老齢年金生活者支援給付金の対象者

年金生活者支援給付金制度について2/9

年金生活者支援給付金制度について

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

一方で、「老齢年金生活者支援給付金」の対象となるには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受け取っていること
  • ご自身を含む同じ世帯の全員が、市町村民税の課税対象でないこと
  • 前年の公的年金などの収入と、それ以外の所得の合計額が一定の基準額以下であること(昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)

このように、老齢年金生活者支援給付金では、ご自身の所得だけでなく世帯全体の状況も考慮される点が特徴です。所得の計算において、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれません。

また、基準額をわずかに超えてしまい対象外となる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。

この補足給付の対象は、「昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方」、または「昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方」です。

2025年度における年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の支給額は、前年の物価の動きに合わせて毎年見直されます。

2025年度は、物価変動を反映して前年度から2.7%の増額となりました。

2025年度の給付額一覧

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5450円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級は月額6813円、2級は月額5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円

注意点として、老齢年金生活者支援給付金の「月額5450円」はあくまで基準額です。

実際の支給額は、この基準額をもとに、個人の保険料納付期間や免除期間に応じて計算されることになります。

給付金を受け取るための手続き方法

給付金を受け取るための手続きについて、「手続きを忘れてしまいそうで心配」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

年金生活者支援給付金4/9

年金生活者支援給付金

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

しかし、この制度では支給対象となる可能性のある方へ、日本年金機構から請求に関する書類が送付される仕組みになっています。

基本的には、その書類に必要事項を記入して返送すれば手続きは完了しますので、ご安心ください。

ただし、年金の受給状況によって書類の形式や手続きのタイミングが変わるため、ここでは3つのケースに分けて具体的な流れを見ていきましょう。

ケース1:これから老齢年金の受給を開始する方

まだ公的年金を受け取っていない方には、年金の受給が始まる約3ヶ月前に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」が届きます。

その際に「年金生活者支援給付金請求書」も一緒に封入されています。

必要事項を記入し、年金請求書とあわせて提出してください。なお、これらの書類は年金の受給資格が得られる誕生日の前日以降に提出可能となります。

ケース2:すでに年金を受給中の方

年金生活者支援給付金請求書の封筒6/9

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出典:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに基礎年金を受給している方でも、所得額の変動などによって新たに給付金の対象となる場合があります。

そうした方々に向けて、毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)7/9

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出典:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

書類が届いたら、必要事項を記入し、同封されている目隠しシールを貼ってください。最後に、差出人欄にご自身の住所と氏名を書き、切手を貼ってポストへ投函すれば手続きは完了です。

※所得状況の確認が必要な方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付される場合があります。

ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給している方

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用8/9

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出典:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

老齢基礎年金を65歳より前に繰上げて受給している方の場合、給付金の対象になると見込まれる方には、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。

手続きはケース2と同様で、必要事項を記入後に目隠しシールを貼り、切手を貼ってポストに投函してください。

※所得状況の確認が必要な方には、A4サイズの請求書と所得状況届が送付される場合があります。

一度手続きをすれば、その後は支給要件を満たしている限り、給付金は継続して受け取れます。

もし要件から外れた場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、支給が停止されることになります。

また、2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構から請求書(はがき型)が届いた方は、郵送だけでなく電子申請での提出も可能です。電子申請を利用した場合、郵送での提出は不要です。

高齢者世帯の生活実態:半数以上が「生活に苦しさ」

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、高齢者世帯の多くが経済的な厳しさを感じている実態が明らかになりました。

この調査から、高齢者世帯の生活意識に関するデータを見てみましょう。

上記の調査結果から、高齢者世帯の生活意識は以下のようになっています。

高齢者世帯における生活意識の調査結果

  • 大変苦しい:25.2%
  • やや苦しい:30.6%
  • 普通:40.1%
  • ややゆとりがある:3.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

調査結果を見ると、「大変苦しい」と「やや苦しい」を合計した割合は55.8%となり、半数以上の世帯が生活に苦しさを感じていることがわかります。

この数字は、「普通」と回答した割合を上回っており、多くの高齢者世帯が厳しい経済状況に置かれていることを示唆しています。

まとめ

今回は、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」について、その仕組みや対象者、手続きの流れを詳しく解説しました。

物価の上昇が続くなか、日々の生活に不安を感じている方も少なくないでしょう。

この給付金は、所得が一定基準以下であるなど、特定の要件を満たす年金受給者の生活を支えるための大切な制度です。

手続きは、対象となる可能性のある方へ日本年金機構から書類が届くのを待つのが基本です。

もしご自身が対象かもしれないと感じたら、送られてくる案内に注意を払い、忘れずに手続きを進めることが大切です。

利用できる制度を正しく理解し活用することで、少しでも心穏やかな毎日を送る一助となれば幸いです。

参考資料