米国商務省が中国ファーウェイとその関連企業68社を同省産業安全局(BIS)のエンティティリストに加え、事実上の取引禁止措置を打ち出したことで、業績見通しを下方修正する米国半導体メーカーが相次いでいる。問題解決が長引けば、今後も米国半導体メーカーの業績に大きなマイナスの影響を与えることになりそうだ。
ブロードコムが20億ドル引き下げ
6月13日に19年度第2四半期(2~4月)業績を発表した通信半導体大手のブロードコム(Broadcom)は、発表に合わせて通期(19年10月期)の業績見通しを245億ドルから225億ドルへと20億ドルも下方修正した。10月までの6カ月で約2200億円の減収になると見ていることになる。
決算カンファレンスで社長兼CEOのHock Tan氏は、ファーウェイへの禁輸の影響について「申し上げられることは、当社の18年度におけるファーウェイ向けの売上高実績は9億ドルだったということ。20億ドルの引き下げは特定の1社だけが要因ではない。市場の不透明感からサプライチェーン内では積極的に在庫を減らそうとし、追加発注するのを懸念する動きが見える」と述べ、ファーウェイへの措置が業界全体に影響しているとの見解を示した。
通信&高周波デバイスメーカーも減収
光通信デバイスメーカーのルーメンタム(Lumentum)は、ファーウェイ向けの売上高が18年度(18年6月期)実績で11%(約1.4億ドル)、19年1~3月期実績で約18%(約7800万ドル)を占めていた。19年度は通期で15%になる見込みだったが、「出荷再開の時期は見通せない」とした。
同様に4~6月期見通しを下方修正した高周波デバイスメーカーのコルボ(Qorvo)は、19会計年度(19年3月期)にファーウェイ向けの売上高がモバイル製品、インフラ&防衛・航空製品あわせて4.69億ドルあったと公表。これは年間売上高の15%に相当する。ファーウェイへの出荷停止によって、4~6月期の売上高は1~3月期比で横ばいにとどまる見通し。
また、高周波デバイスの雄、スカイワークス(Skyworks)もファーウェイへの出荷停止を受け、4~6月期の見通しを下方修正した。同社によると、19会計年度の上期(18年10月~19年3月)実績として、ファーウェイ向けの売上高は約12%(約2.1億ドル)を占めていたという。
SiC(炭化ケイ素)のウエハーおよび高周波&パワーデバイス大手のクリー(Cree)も、4~6月期の見通しを引き下げた。これにはLED(発光ダイオード)の需要が当初想定より軟調であることも含まれている。当初は4~6月期にファーウェイの無線インフラ製品向けに最大1500万ドルの売り上げを見込んでいたが、これがなくなる。4~6月期の売上高は、SiC製品を手がける子会社のウルフスピードが1.32億~1.35億ドル、LED事業が1.13億~1.17億ドルになる見込みだ。
最も影響が大きそうなのが、光デバイスメーカーのネオフォトニクス(NeoPhotonics)だ。18年度(18年12月期)は売上高3.2億ドルの46%をファーウェイ向けが占めた。なかでも子会社のハイシリコン向けが全売上高の40%を構成していた。
見通し維持するメーカーも
一方、光デバイスメーカーのフィニサー(Finisar)を買収予定のII-VI(ツーシックス)は、業績に与える影響が極めて限定的であるため、4~6月期の見通しを変更せず、予定どおりフィニサーの買収を年央に完了させると発表した。
また、化合物エピファンドリーのIQE(本社は英カーディフ)も通年の売上見通しを変更しないと発表した。同社の化合物半導体エピウエハーを用いたデバイスを顧客がファーウェイに供給しているため、不確実性と予測不可能性が残ってはいるが、現状で売上高に対するリスクは5%未満だという。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏