2. 【花王】株価低迷の核心は「国内売上比率」と「成長期待」にあり
泉田氏が株価低迷の理由を探る上で最も注目したのが、花王の「地域別の売上構成」です。
花王が発表した2026年12月期の業績予想を見ると、全体の売上高1兆7500億円のうち、日本国内の売上が9920億円、海外の売上が7600億円となっています。つまり、依然として売上の半分以上を国内市場が占めているのです。
この事実が、株式市場からの評価に大きな影響を与えていると泉田氏は分析します。
日本の市場は、少子高齢化や人口減少が進んでおり、日用品を使う人そのものが減っていく構造にあります。経済成長率(GDP成長率)を見ても、世界には日本よりも大きく成長している国や地域が数多く存在します。
株式投資において、投資家は企業の「将来の成長」に期待して株を買います。そのため、機関投資家などのプロの目線からすると、成長余地の大きい海外市場でどれだけビジネスを拡大できるかが、企業価値を測る重要な指標となるのです。
もちろん、花王も海外展開をしていないわけではありません。アジアや米州、欧州などで事業を展開していますが、泉田氏は「ビジネスは当然やっているんだけど、そこまでシェアが大きいというわけではない」と指摘します。
さらに泉田氏は、花王が世界市場で戦う相手として、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やユニリーバといった巨大なグローバル企業を挙げます。
彼らは世界中で激しいシェア争いを繰り広げ、M&A(企業の合併・買収)を駆使して成長を続けています。
もし花王が本気で彼らと同じ土俵で戦い、グローバルでの成長を目指すのであれば、手元にある資金の使い道は自ずと変わってくるはずだと泉田氏は語ります。
企業が利益を「配当」として株主に配ってしまうということは、裏を返せば「自社内で大規模な成長投資(M&Aや海外展開など)に回す資金を減らしている」ということになります。
泉田氏の目には、花王が会社の存亡をかけて海外で勝負に出ているというよりは、現在の安定した基盤を守りながら、やれる範囲で対応しているように映っているのです。
これが、投資家から「グローバルでの大きな成長は期待しにくい」と判断され、株価が上がりにくい根本的な原因となっています。
【動画で解説】花王の「配当性向」は約59%、株価はなぜあがらない?
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日