春の訪れとともに、新年度に向けて生活設計を見直すご家庭も多いのではないでしょうか。
特に60歳代以降の方々にとって、公的年金は暮らしの大きな柱ですが、「年金だけでやっていけるかしら」と、ふと不安を感じることもあるかもしれません。
実は、年金の収入や所得が一定の基準額以下である場合に、年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度があります。
この記事では、どのような方が対象になるのか、具体的にいくらくらい支給されるのか、そして手続きはどうすればよいのか、年金生活者支援給付金の仕組みを基本から丁寧に解説していきます。
年金生活者支援給付金とは?制度の基本を解説
年金生活者支援給付金制度は、公的年金を受給している方の生活を支援する目的で2019年に始まりました。
支給の条件を満たす対象者には、2カ月に一度、公的年金の支給日に合わせて年金生活者支援給付金が支給されます。
この給付金は3種類に分かれており、受け取っている基礎年金の種類によって「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」が設定されています。
それぞれの基礎年金を受け取っている方で、所得などの要件を満たす場合に、この給付金の対象となります。
給付金の対象者は?3種類の支給要件を詳しく解説
ここでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な支給要件について、種類ごとに詳しく見ていきましょう。
障害年金・遺族年金生活者支援給付金の支給対象
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることが前提です。
その上で、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。ここで重要なのは、所得の計算に障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれない点です。
また、扶養親族の人数に応じて所得の基準額が引き上げられることも覚えておくとよいでしょう。
老齢年金生活者支援給付金の支給対象
一方で、老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額と、給与所得や利子所得といったその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下である
このように「老齢年金生活者支援給付金」では、ご本人の所得だけでなく世帯全体の状況も要件に含まれる点に注意が必要です。なお、こちらの判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。
さらに、基準額をわずかに超えたことで給付対象外となる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みも用意されています。
この対象となるのは、前年の所得合計額が「昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方」、または「昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方」です。
平均で月々いくら?種類別の平均給付月額【最新データ】
厚生労働省が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』を基に、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を確認してみましょう。
同資料によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円という結果でした。
※2025年3月時点で認定されている方の平均給付金額です。
ここからは、年齢別の平均額をさらに詳しく見ていきます。
【年齢別】老齢年金生活者支援給付金の平均給付額
- 70歳未満:4905円(43万9628件)
- 70~74歳:4374円(56万1362件)
- 75~79歳:4092円(85万9446件)
- 80~84歳:3936円(95万453件)
- 85~89歳:3989円(82万8270件)
- 90歳以上:4045円(86万5282件)
【年齢別】障害年金生活者支援給付金の平均給付額
- 30歳未満:5692円(26万6276件)
- 30~39歳:5668円(31万6202件)
- 40~49歳:5655円(37万1772件)
- 50~59歳:5671円(46万8876件)
- 60~69歳:5749円(38万4626件)
- 70~79歳:5880円(26万4423件)
- 80歳以上:6033円(10万4991件)
【年齢別】遺族年金生活者支援給付金の平均給付額
- 20歳未満:4190円(5687件)
- 20~29歳:5310円(529件)
- 30~39歳:5310円(7881件)
- 40~49歳:5310円(3万4072件)
- 50~59歳:5310円(2万7828件)
- 60歳以上:5310円(1710件)
どうすればもらえる?年金生活者支援給付金の請求手続き
この章では、年金生活者支援給付金を受け取るための請求手続きについて解説します。
すでに公的年金を受給中の方で、新たに給付金の支給対象となった場合には、日本年金機構から請求書を兼ねたお知らせが郵送されます。
【手続きの流れ】基礎年金を受給中の場合
- 毎年9月の第1営業日から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。
- 2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構からこの請求書が届いた方は、電子申請も利用可能です。
- 電子申請を利用しない場合は、はがきに必要事項を記入し、切手を貼って投函します。
なお、支給要件に該当するかどうか確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得情報等を確認するための所得状況届」が送付されます。
次に、これから年金自体を請求する方の手続きの流れを見てみましょう。
【手続きの流れ】老齢基礎年金を新規に請求する場合
- 65歳になる3カ月前に、年金の受給手続きに必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封されて届きます。
- 必要事項を記入の上、受給を開始する年齢の誕生日前日以降に、年金の請求書とあわせて年金事務所へ提出します。
※障害年金または遺族年金の生活者支援給付金の対象者で、初めて基礎年金を請求する方には、給付金の請求書は自動で郵送されません。年金の請求手続きと同時に、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口にて給付金の請求手続きを行う必要があります。
年金生活者支援給付金の支給日はいつ?
年金生活者支援給付金は、公的年金と同様に偶数月の15日に支払われます。もし15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に前倒しで支給されます。
例えば、2月に支給されるのは前年の12月分と1月分の2カ月分です。
年金と同じ受取口座に支給されますが、通帳には年金とは別に記載されます。
年金だけで生活する世帯はどのくらい?国民生活基礎調査より
高齢者世帯のうち、公的年金のみで生活している世帯は、実は半数以下です。
厚生労働省が公表した『2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況』によると、高齢者世帯の総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯は43.4%でした。
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%
このデータから、残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得を得て生活費をまかなっていることがわかります。
公的年金だけで生活するのが難しい可能性も考え、早めに老後の生活設計を立てておくことが大切といえるでしょう。
まとめ
今回は、年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」について、対象者や支給額、手続きの方法などを解説しました。
老齢・障害・遺族の3種類があり、それぞれ所得などの要件が定められています。
特に老齢年金生活者支援給付金は、ご自身の所得だけでなく世帯全員が住民税非課税であることなどが条件となるため、少し複雑に感じるかもしれません。
もし「自分も対象になるかも」と思われたら、日本年金機構からのお知らせが届いていないか確認したり、お近くの年金事務所や「ねんきんダイヤル」に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
こうした制度を上手に活用することが、ゆとりあるセカンドライフにつながるかもしれません。







