5. エルメスを支える「3つの強み」とパタゴニアとの意外な共通点
動画の中盤、木村さんはエルメスのビジネスモデルの強みを以下の3点にまとめています。
1.伝統の維持(家族経営)
デザインやブランドの世界観を大きく変えないという哲学。経営者が変わるたびにトレンドを追いかけて方針がブレることを防ぎ、ブランドの伝統を維持しています。
2.アンチマーケティング
テレビCMや新聞広告など「売るためのマーケティング」を行いません。「良いものを作っていれば売れる」という信念を貫いています。
3.職人による少数生産
高いクオリティと「タイムレス(時代を超越した)」な価値を提供します。顧客にとって、「価値が目減りしない」という信頼が安心感に繋がっています。
エルメスの強み:詳しくは金融経済YouTube「ミライド」へ5/8
出所:金融経済Youtubeチャンネル「 ミライド 」
この解説に対し、泉田さんはアウトドアブランドの「パタゴニア」との共通点を見出しました。パタゴニアも非上場の創業者経営であり、「このジャケットを買わないで(今あるものを大事にしろ)」といったアンチマーケティング広告を出すことで知られています。また、安い費用で製品を修理して長く使わせるスタンスが、エルメスの姿勢と非常に似ていると言います。
時間をかけてもコンセプトが変わらないエルメスやパタゴニアの姿勢は、現代においてかえって価値が高まっていると分析しています。
6. 営業利益率41%!驚異の収益構造とクロスセルシステム
こうした卓越した戦略は、驚異的な財務数字として表れています。動画の終盤で紹介されたエルメスの収益構造は、製造小売業の常識を覆すものでした。
売上に対する原価率は約29%、店舗の賃料や人件費などの販管費が約30%、そして残る営業利益率がなんと約41%に達しているのです。
比較対象として挙げられたアパレルの雄・ユニクロでさえ、原価率が約46〜47%、販管費が約37%です。大々的なマーケティング費用をかけずにこれだけの利益を残せる企業は他に類を見ません。
これを根本から支えているのが、店舗での巧みな「クロスセル」システムです。先述した通り、誰もが欲しがるバーキンやケリーを買うためには、まず顧客として実績を作る必要があります。そのため、顧客はアパレルやスカーフ、時計、食器など他の商品も積極的に購入します。また、職人の生産数には限りがあるため「1人年間何個まで」というクオータ制(割り当て)も存在します。
この仕組みにより、バッグを起点として全社的な売上が連動して伸びていく、極めて強固なエコシステムが完成しているのです。
業績トレンドを見ても、2018年以降、売上高は平均15%、営業利益は平均17%という高い成長率を安定してキープしています。 コロナ禍以降、ラグジュアリー業界全体がeコマース(EC)へとシフトし、エルメスもECで購入できるようになりました。しかし、バーキンやケリーといった特別なアイコンバッグだけは絶対にECには出さず、店舗体験とブランドの希少性を厳格に守り続けています。
7. 今回のポイントまとめ
今回の木村さんと泉田さんの対談から、エルメスという企業が圧倒的な強さを誇る理由を3つのポイントにまとめました。
・強固なガバナンスと伝統の維持
日本にはない「株式合資会社」という形態をとり、創業家が経営権を掌握。これにより、短期的な株主の圧力に屈することなく、「ブランドの世界観を守る」「職人による少数生産を守る」という哲学を貫いています。
・「売るため」のマーケティングをしない逆張り戦略
広告宣伝費を削り、製品のクオリティとタイムレスな価値に投資。パタゴニアにも通じるこのアンチマーケティングの姿勢が、逆に消費者の渇望感と強い信頼を生み出しています。
・驚異の利益率を生み出す「クロスセル」のエコシステム
アイコンバッグの圧倒的な人気と「買えない」という希少性を活用し、顧客が他のアイテムも購入する仕組み(クロスセル)を構築。結果として原価率29%、営業利益率41%という、製造業として信じがたい高収益体質を実現しています。
お二人の対談では、さらに踏み込んだエピソードも語られています。エルメスの強さの源泉を知るために、ぜひ動画本編もチェックしてみてください。
動画はこちらからご覧ください。
ミライド


