3月は年度末を迎え、新年度の年金や給付制度を見直すタイミングです。「年金だけでは生活が厳しい」と感じる方に向けて設けられているのが、年金生活者支援給付金です。

この制度は、所得が一定以下の方に対して年金に上乗せして支給されるもので、老齢・障害・遺族年金の受給者が対象となります。

ただし、対象であっても申請しなければ受け取れないケースがあるため注意が必要です。また、手続き方法も複数あり、「どの封筒が届いたのか」で対応が変わる点も分かりにくいポイントです。

本記事では、制度の概要から対象要件、2026年度の給付額、申請手続きの流れまでを整理し、電子申請についても簡単に確認していきます。

1. 低年金世帯を支える制度|年金生活者支援給付金の基本

年金生活者支援給付金制度について1/10

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

年金生活者支援給付金は、年金に上乗せして支給される給付金で、以下の3種類があります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

「老齢・障害・遺族」、それぞれの基礎年金を受給中の人が、公的年金を含めても所得が一定基準以下となる場合に、2カ月に一度、受け取ることができるものです。

2. 対象になるのはどんな人?老齢・障害・遺族ごとの要件

3種類の年金生活者支援給付金には、それぞれの支給要件が設定されています。3種類共通の基準は、受給者本人の「前年の所得」です。

老齢年金生活者支援給付金には、これに加えいくつかの要件が加わります。

2.1 「老齢年金生活者支援給付金」支給要件

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)である。

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.2 「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の対象者

  • それぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)の受給者である
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額)

※ 障害年金、遺族年金等の非課税収入は除く

それぞれの給付金において、上記の要件をすべて満たす場合、年金生活者支援給付金を受け取ることができます。

3. 2026年度はいくら?基準額と支給水準を確認

2026年度の年金生活者支援給付金の給付額は、前年の物価変動率にもとづき、+3.2%の増額となりました。

3.1 【2026年度】年金生活者支援給付金の給付額

年金生活者支援給付金の給付額3/10

年金生活者支援給付金の給付額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」をもとにLIMO編集部作成

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円

老齢年金生活者支援給付金のみ、上記の基準額をもとに「保険料納付済期間や免除期間」に応じて、実際の支給額が計算されます。

4. 手続きの流れ3パターン|届く封筒で対応が変わる

年金生活者支援給付金の支給対象と判定された人には、日本年金機構から請求書が届きます。

年金受給状況によって、書類形式や郵送タイミングが異なります。ここでは、3つのケースに分けて、送付時の封筒や、手続き方法を紹介しましょう。

4.1 【ケース1】これから老齢年金を受け取り始める人(緑の封筒)

これから老齢年金を受け取り始める人には、65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して「年金生活者支援給付金請求書」が送付されます。

必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書とともに年金事務所に提出しましょう。

4.2 【ケース2】すでに年金を受給している人の場合(うす緑の封筒)

すでに基礎年金を受給中で、新たに年金生活者支援給付金を受け取ることができる方には、2025年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。

必要事項を記載したら同封の目隠しシールを貼り、差出人欄に住所・氏名を記載したうえで切手を貼ってポストに投函しましょう。

※支給要件に該当するか確認できない方には、年金生活者支援給付金請求書(A4型)および所得情報等を確認するための所得状況届が届きます。

4.3 【ケース3】老齢基礎年金を繰上げ受給中の場合(うすだいだい色の封筒)

老齢基礎年金を繰上げ受給中の方のうち、年金生活者支援給付金の受給権が発生すると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

必要事項を記載したら同封の目隠しシールを貼り、差出人欄に住所・氏名を記載したうえで切手を貼ってポストに投函しましょう。

※支給要件に該当するか確認できない方には、年金生活者支援給付金請求書(A4型)および所得情報等を確認するための所得状況届が届きます。

一度申請すれば、支給要件を満たす限り2年目以降の手続きは基本的に不要です。また、所得が増えるなどして支給要件を満たさなくなった場合は、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給は停止されます。

なお、2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が届いた人は、「電子申請による提出」ができるようになりました。

電子申請により提出した場合、郵送による提出は不要です。

5. 制度改正の動き|106万円の壁と社会保険拡大

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、アルバイト・パートなどの働き方と関わりが深い、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が含まれています。

5.1 「年収106万円の壁」とは?

「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自分自身で保険料を支払う義務が発生する目安です。

保険料負担で手取りが減ることから、収入が基準額を超えないよう労働時間をコントロールする「働き控え」が生じる原因の一つとされてきました。

また、社会保険の適用対象となる企業規模はこれまで段階的に拡大されてきて、2024年10月からは「51人以上」の事業所となっています。

今回の改正では「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件の段階的撤廃」がおこなわれることが決まりました。

5.2 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

2025年7月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の改正により、このうち4の「賃金要件」と5の「企業規模要件」が撤廃されます。

いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、3年以内に廃止へ。社会保険に加入する企業の規模は、10年かけて段階的に拡大されます。

6. 受給漏れを防ぐための制度整理

年金生活者支援給付金は、所得が一定以下の方に対して年金に上乗せされる重要な支援制度です。

老齢・障害・遺族それぞれで対象要件が異なり、給付額も年度ごとに見直されるため、自分が該当するかどうかを定期的に確認することが大切です。

特に申請が必要なケースでは、「対象だったのに手続きしていなかった」という受給漏れも起こりがちです。

3月は新年度前の見直し時期でもあり、制度の確認には適したタイミングです。届いた書類の種類や手続き方法を整理しながら、必要に応じて電子申請も活用し、スムーズに受給できるよう準備しておきましょう。

監修者コメント
年金生活者支援給付金は、「対象かどうかの判定が分かりにくい制度」の一つです。実務的には、所得基準と世帯状況の組み合わせで判断されるため、「年金を受け取っている=自動で対象になる」と思い込んでしまうと受給漏れにつながります。
この給付は“申請ベース”で設計されているので、行政側もすべての対象者を完全に把握できるわけではありません。
そのため、「案内が来たら確認する」だけでなく、自分でも一度条件を照らし合わせてみる姿勢が重要です。少し手間に感じるかもしれませんが、このひと手間で受け取れる金額が変わるケースもあるでしょう。

参考資料

川勝 隆登