2月も半ばを過ぎ、暦の上では春を迎えましたが、まだ肌寒い日が続いています。一方で、私たちの家計に影響を与えているのは気温だけではありません。
物価の上昇が続いており、日々の生活に重くのしかかっています。総務省が公表した「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)12月分及び2025年(令和7年)平均」によると、2025年12月の総合指数は前年の同じ月と比べて2.1%上昇しました。特に、天候に左右されやすい生鮮食品と、価格変動の大きいエネルギーを除いた総合指数は2.9%も上がっており、生活必需品の値上がりが家計を圧迫している状況がうかがえます。
このような状況下で、政府は新たな経済対策として子育て世帯を支援する「物価高対応子育て応援手当」などを打ち出していますが、これまで実施されてきた住民税非課税世帯への一律給付は、今後見送られる可能性があります。
支援の対象が絞られることで、将来に不安を感じる方も少なくないでしょう。しかし、国や自治体の支援は一時的な給付金だけではありません。
税金や社会保険料の負担を軽くするための、恒久的な優遇措置も多く存在します。この記事では、見落としがちな5つの重要な支援策を取り上げ、対象となる収入の目安を給与と年金に分けて具体的に解説します。
1. 住民税非課税世帯が受けられる優遇措置とは?現金給付以外の5つの支援策
所得が一定の基準を下回る世帯は「住民税非課税世帯」として、さまざまな公的支援の対象となります。
新型コロナウイルスの流行や近年の物価高騰への対応策として、これまで住民税非課税世帯を対象とした現金給付が実施されてきました。
しかし、支援策は現金給付だけではありません。日々の暮らしを支える優遇措置にはどのようなものがあるのか、代表的な5つの例をご紹介します。
1.1 国民健康保険料の減額
- 所得に応じて、保険料の均等割額と平等割額が「7割・5割・2割」のいずれかの割合で減額されます。
1.2 介護保険料の負担軽減
- 65歳以上の第1号被保険者を対象とした制度です。具体的な減額幅は、お住まいの市区町村によって異なります。
1.3 国民年金保険料の免除・納付猶予
- 経済的な事情に応じて、保険料の全額免除、一部免除、または納付猶予のいずれかの措置を選択できます。
1.4 子育て世帯への保育料無償化
- 0歳から2歳までの子どもの保育料が無料となります。
- この措置により、実質的に0歳から5歳までの保育料が無償化されることになります。
1.5 高等教育の修学支援新制度
- 大学や短期大学、高等専門学校、専門学校での学びを支援する制度です。
- 授業料や入学金の免除・減額、そして返済が不要な給付型奨学金といった支援が受けられます。
これらに加えて、各自治体が独自に提供している支援策も存在します。
では、具体的にどのような世帯が住民税非課税世帯に該当するのか、次項で詳しく解説します。
2. 「住民税非課税世帯」の定義とは?基本的な仕組みを解説
住民税非課税世帯の条件を正しく理解するために、まず住民税の基本的な構造から見ていきましょう。
2.1 住民税の基本的な構造
住民税は、居住する都道府県や市区町村に納める地方税の一種です。地域の公共サービスやインフラ整備を支えるための重要な財源として使われています。
個人の住民税は、主に「均等割」と「所得割」の2つの要素から成り立っています。
- 均等割:所得の金額に関わらず、一定以上の所得がある方に一律で課される税金
- 所得割:前年の所得金額に応じて課税額が決まる税金
この均等割と所得割の両方が課税されない状態を「住民税非課税」と呼びます。そして、「住民税非課税世帯」とは、世帯に属する全員がこの住民税非課税の状態にある世帯を指します。
なお、所得割のみが非課税となる場合もありますが、各種支援策の対象となるかは自治体の判断に委ねられるため、お住まいの地域の基準を確認することが重要です。
3. 住民税が非課税になる3つの条件
住民税が非課税となるのは、どのような条件を満たした場合なのでしょうか。
以下の3つの条件のうち、いずれか1つに当てはまると住民税が非課税となります。
- 生活保護法に基づく生活扶助を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下である
- 前年の合計所得金額が、お住まいの市区町村が定める基準額を下回っている
1と2の条件は全国で共通ですが、3の所得に関する基準は自治体ごとに異なるため、お住まいの地域によって詳細な内容が変わります。
4. 「住民税非課税世帯」に該当する所得水準
「住民税非課税世帯」に該当する所得水準について、兵庫県神戸市を例に確認してみましょう。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
ただし、21万円は同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算
※同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者で、前年の合計所得金額が58万円以下の人
5. 住民税非課税世帯となる「収入目安」はどのくらい?
住民税が非課税となる所得の基準は、先に触れた「同一生計配偶者や扶養親族の人数」に加え、どのような収入を得ているかによっても異なります。
所得は、収入額から各種控除を差し引いて算出されるため、ここでは神戸市の基準を「収入ベース」に置き換えて見ていきます。
5.1 単身世帯
合計所得金額が45万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が110万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
5.2 同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合
合計所得金額が101万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)
単身世帯では、給与収入のみの場合は年収110万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下であれば、住民税は非課税となります。
一方、同一生計配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入の目安はさらに高く設定されます。
とくに、65歳以上で年金収入のみの世帯では、非課税となる上限が211万円以下となっており、単身世帯と比べて条件が大きく緩和されている点が特徴です。
このように、世帯の構成や収入の種類によって、住民税の課税・非課税の基準は変わります。
6. なぜ高齢者層で「住民税非課税世帯」の割合が高いのか?
厚生労働省が公表した「令和6年国民生活基礎調査」のデータから、どのくらいの世帯が住民税を納めているのか、年齢層別の割合を確認してみましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳代:87.5%
- 40~49歳代:88.2%
- 50~59歳代:87.3%
- 60~69歳代:79.8%
- 70~79歳代:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯および課税の有無が不明な世帯が含まれます。
※ 総数には、年齢不詳の世帯が含まれます。
※ 住民税課税世帯には、住民税額が不明な世帯が含まれます。
住民税を納めている世帯の割合は、30歳代から50歳代で約9割に達しピークを迎えますが、その後は年齢が上がるにつれて顕著に減少していきます。65歳以上では約6割、75歳以上では約5割強まで低下します。
この背景には、年金生活に入ると現役時代に比べて収入が減少する点に加え、税制上の優遇措置が大きく関わっています。
特に65歳以上の方は手厚い「公的年金等控除」が適用されるほか、遺族年金は非課税所得として扱われるため、高齢者層は住民税非課税世帯に該当しやすくなるのです。
7. 年金収入のみで生活する高齢者世帯は43.4%、多くの世帯が追加収入を必要とする実態
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、公的年金を受給している高齢者世帯のうち、収入のすべてを年金だけで賄っている世帯は43.4%でした。
この結果は、半数以上の世帯が公的年金以外に何らかの収入源を必要としている現実を浮き彫りにしています。
老後の生活を年金収入だけで成り立たせている世帯は、もはや少数派になりつつあるのかもしれません。
- 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%
年金の受給額は個人差が大きいものの、多くの高齢者世帯が「収入と支出のバランス」という共通の課題を抱えていると推測されます。
日々の生活費が年金収入を上回るだけでなく、最低限の生活を維持すること自体が困難なケースも少なくないでしょう。
もし年金だけでは生活が成り立たない場合、不足分をどう補うかが重要な課題となります。
私的年金や預貯金といった備えが十分でない方は、働き続けて収入を確保したり、家族からの支援を受けたり、あるいは公的な生活支援制度を活用したりと、ご自身の状況に合わせて早めに具体的な対策を検討してみてはいかがでしょうか。
8. まとめ
政府の経済対策が「次世代育成」へとシフトする中、これまでのような住民税非課税世帯への一律給付は見直される傾向にあります。しかし、物価上昇が続く現代において、一時的な現金給付に依存した生活設計には限界があることも事実です。
今回ご紹介した社会保険料の軽減や教育費の支援といった優遇措置は、一度対象となれば長期的に固定費を削減できる、いわば「家計を守るための強力な盾」となり得ます。
今、私たちが取るべき自衛策は、給付金の有無に一喜一憂することだけではありません。自身の所得が各種制度の対象になるかを正しく把握し、用意されているセーフティネットを賢く活用する視点を持つことが大切です。
※当記事は再編集記事です。






