「住民税非課税世帯」と聞くと、ニュースで話題になる「臨時給付金」のイメージが強いかもしれません。しかし、実はその恩恵は一時的な現金給付だけにとどまりません。

国民健康保険料の減額や介護保険の負担軽減、さらにはお子さんの教育費無償化まで、知っている人だけが活用できる「生活直結型」の優遇措置が数多く用意されています。

この記事では、意外と知られていない8つの優遇制度を厳選して紹介するとともに、「結局、年収いくらなら対象なの?」という切実な疑問に答えるべく、具体的な判定基準をわかりやすく解説します。自分や家族が対象かどうか、この機会に正しく把握しておきましょう。

1. 【住民税非課税世帯】家計の負担を減らせる「優遇措置」8選

これまで、コロナ禍や物価高騰への対策として、主に住民税非課税世帯を対象とした現金給付などの支援が実施されてきました。

住民税非課税世帯とは、所得が一定の基準を下回る世帯のことです(具体的な定義は後ほど説明します)。

こうした世帯の生活を支えるため、現金給付以外にも様々な優遇措置が講じられていることをご存じでしょうか。ここでは、代表的な8つの優遇措置をご紹介します。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/4

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 ◆国民健康保険料(応益割)の減額

  • 応益分保険料(均等割・平等割)が「7割・5割・2割」のいずれかの割合で減額されます。自治体が自動判定します。年間数万円の節約になることも。

1.2 ◆介護保険料の減額

  • 65歳以上の第1号被保険者が対象となり、減額幅は自治体によって異なります。負担額が数分の一になるケースも。

1.3 ◆国民年金保険料の免除・納付猶予

  • 全額免除、一部免除、納付猶予のいずれかの措置が受けられます。本人の申請が必要。将来の受給額にも一部反映されます。

1.4 ◆高額療養費の自己負担

1カ月の医療費支払上限が低く抑えられています。課税世帯と比べ医療費への安心感が異なるでしょう。

1.5 ◆NHK受信料

全額または半額の免除が受けられます(世帯に障がい者がいる場合や、生活保護受給者が対象となることが多い)。

1.6 ◆保育料の無償化

0歳から2歳までの子どもの保育料が無償に。3歳以降の無償化と合わせ、就学前までの教育費を大きく抑制できます。

1.7 ◆高等教育の修学支援新制度

大学等の授業料・入学金の免除、給付型奨学金など。返済不要の支援により、経済的理由で進学を諦めないための制度となります。

1.8 ◆自治体独自の支援

水道料金の基本料免除、ゴミ袋の配布、バス無料券など。自治体によって支援の種類や金額などに差があります。

住民税非課税世帯と聞くと、年金暮らしの高齢者をイメージしがちですが、実は失業中の方、育休中で所得が一時的に下がった世帯、フリーランスで所得が一定以下の世帯なども対象になります。

では次に、住民税非課税世帯の具体的な定義について見ていきましょう。

2. 「住民税非課税世帯」とは?

まず住民税の仕組みを理解した上で、どのような条件を満たすと住民税非課税世帯になるのかを確認します。

2.1 住民税の基本的な仕組み

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/4

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める地方税の一種です。地方自治体にとって重要な財源であり、地域の公共サービスやインフラ整備などに充てられます。

個人の住民税は、「均等割」と「所得割」という2つの要素で構成されています。

  • 均等割:所得の金額にかかわらず、一律で課される部分
  • 所得割:前年の所得に応じて税額が変動する部分

この均等割と所得割の両方が免除される状態を「住民税非課税」と呼びます。そして、「住民税非課税世帯」とは、世帯に属する全員が住民税非課税である世帯を指します。

なお、住民税には「所得割のみ非課税」という区分も存在します。ただし、この場合に給付金などの対象となるかは自治体の判断によるため、お住まいの市区町村の基準を必ず確認してください。

3. 住民税が非課税になるための3つの条件とは?

それでは、住民税が非課税となるための具体的な条件を詳しく見ていきましょう。

以下のいずれかの条件に当てはまる場合、住民税は非課税となります。

  1. 生活保護法による生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下である
  3. 前年の合計所得金額が、各市区町村が定める基準額を下回る

1と2の条件は全国共通ですが、3の所得に関する基準は市区町村ごとに異なります。

4. 住民税非課税となる「所得」の基準【神戸市の例】

住民税非課税世帯となる所得の基準について、兵庫県神戸市のケースを例に見てみましょう。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/4

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)とは」

35万円 ×(本人 + 同一生計配偶者(※)+ 扶養親族の数)+ 10万円 + 21万円

ただし、21万円が加算されるのは、同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合に限ります。

※同一生計配偶者とは、納税者と生計を一つにする配偶者で、前年の合計所得金額が48万円以下の人を指します。

5. 年収いくらで住民税が非課税に?【神戸市の例】

住民税が非課税となる所得の基準は、前述の「同一生計配偶者や扶養親族の数」だけでなく、収入の種類によっても変わります。

所得は収入から各種控除を差し引いて計算されるため、神戸市の基準を具体的な「収入金額」に換算して確認してみましょう。

単身世帯の場合

合計所得金額が45万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収110万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収155万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収105万円以下

同一生計配偶者または扶養家族がいる場合

合計所得金額が101万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収166万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収211万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収171万3334円以下

単身世帯の場合、給与収入だけであれば年収110万円以下、65歳以上で年金収入のみであれば年収155万円以下が住民税非課税の目安となります。

同一生計配偶者や扶養親族がいると、非課税となる収入の基準額は上がります。

特に65歳以上で年金収入のみの世帯では、扶養者が1人いるだけで非課税ラインが211万円以下となり、単身世帯と比べて大幅に緩和されることがわかります。

このように、世帯の構成や収入源によって、住民税の負担は大きく変わるのです。

6. まとめ

住民税非課税世帯という枠組みは、単に「税金を払わなくていい」というだけでなく、社会保障や教育、インフラなど多岐にわたるコストを劇的に抑えてくれる強力なセーフティネットです。

対象となる年収の境界線は、単身か扶養家族がいるか、あるいは自治体によっても細かく異なります。神戸市の例で見たように、65歳以上で夫婦世帯なら「年金収入211万円」が一つの目安となりますが、まずはご自身がお住まいの地域の基準をチェックすることが第一歩です。

参考資料