高市政権発足後に開催された成長戦略会議では、AIや防衛、GX(脱炭素)など17の戦略分野が示されました。これらは投資分野として取り上げられることもありますが、働く先として考えた場合はどうでしょうか。

2月9日に発表された厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報」によると、調査産業計の平均月給は35万5919円(前年比2.3%増)でしたが、戦略分野と重なる産業分類では全体平均を上回る水準となっている分野も確認できます。今回は政府が示した17の戦略分野に関連する産業の給与水準と貯蓄状況について、最新調査をもとに解説します。

1. 【高市銘柄】AIや防衛、GX(脱炭素)など戦略的投資の対象「17の戦略分野」

日本成長戦略本部は、リスクや社会課題に対して官民が連携して戦略的な投資を行い、経済成長を目指すために内閣に設置された組織です。この本部の下で「日本成長戦略会議」を開催し、世界共通の課題解決に役立つ製品やインフラの提供に向けた具体的な施策を検討しています。

「日本成長戦略会議」において、官民連携による戦略的投資の対象となっている17の戦略分野は以下の通りです。

  1. AI・半導体
  2. 造船
  3. 量子
  4. 合成生物学・バイオ
  5. 航空・宇宙
  6. デジタル・サイバーセキュリティ
  7. コンテンツ
  8. フードテック
  9. 資源・エネルギー安全保障・GX
  10. 防災・国土強靭化
  11. 創薬・先端医療
  12. フュージョンエネルギー
  13. マテリアル(重要鉱物・部素材)
  14. 港湾ロジスティクス
  15. 防衛産業
  16. 情報通信
  17. 海洋

これらの分野は、それぞれの担当大臣やワーキンググループが設置され、具体化に向けた検討が進められています。

2. 【高市銘柄】17分野の産業別でみる《給与水準》「平均月収63万円」の産業もあり

「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報」の結果をもとに、政府が指定した17の戦略分野を統計上の産業分類に紐付け、それぞれの給与実態を詳しく見ていきましょう。

戦略分野の産業分類2/4

戦略分野の産業分類

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報」をもとにLIMO編集部作成

※「創薬・先端医療」業種分類としては「製造業(医薬品)」が主ですが、サービス面を含む場合は「医療、福祉」も含まれます。
※「製造業」の範囲: 表の中で「製造業」が複数に分かれていますが、毎月勤労統計調査の分類ではこれらは一括して「製造業」として集計されます。

※「マテリアル(重要鉱物)」: 分野としては「製造業」ですが、原料採取に近い側面がある場合は、統計上の「鉱業、採石業等」が関連することもあります。
※「海洋・造船」: 検討体制図にある「造船」「航空・宇宙」「海洋」などは、今回の表の「製造業」に含めて整理します。

2.1 産業別・給与実態まとめ:製造業は伸び率「全産業の約2倍」

2025年分の速報値から、主要な分類ごとの平均月給(現金給与総額)と、前年からの伸び率をまとめました。

「製造業」に該当する分野(AI・半導体、マテリアル、防衛産業、造船、航空・宇宙、創薬など)

現金給与総額:43万622円/前年比:4.3%増

日本の基幹産業であり、戦略分野の多くがこの分類に含まれます。全産業平均を上回る伸び率となっています。

「情報通信業」に該当する分野(情報通信、デジタル・サイバーセキュリティ、コンテンツ)DX(デジタルトランスフォーメーション)

現金給与総額:54万9590円/前年比:4.2%増

給与水準は全産業の中でも高い水準となっています。

「電気・ガス業」に該当する分野(資源・エネルギー安全保障・GX、フュージョンエネルギー)

現金給与総額:63万7601円/前年比:6.3%増

脱炭素社会の実現に向けたインフラ投資が集中する分野です。今回取り上げた主要分類の中では、最も高い水準となっています。

「建設業」に該当する分野(防災・国土強靭化)

災害対策や老朽化したインフラの整備を担う国策の要です。

なお、「創薬・先端医療」分野については、研究開発を担う「メーカー(製造業)」と、実際の提供の場となる「医療、福祉」で統計上の数字が分かれています。最新の月間給与額では、製造業が43万622円に対し、医療、福祉は31万7809円となっています。一口に成長分野といっても、どのフェーズ(段階)でその産業に関わるかによって、受けられる待遇の恩恵が異なることがわかります。

3. 【高市銘柄】17分野の産業別でみる《平均貯蓄》単身で「1300万円超」

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「2025年 家計の金融行動に関する世論調査」の単身世帯(金融資産を保有していない世帯も含む)で就業先産業別で貯蓄(金融資産保有額)についてみていきましょう。

※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

世帯主の就業先産業別《単身世帯》金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯も含む)4/4

世帯主の就業先産業別《単身世帯》金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯も含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「2025年 家計の金融行動に関する世論調査」

単身世帯の貯蓄(金融資産保有額)は全体平均で919万円となっていますが、17の戦略分野が属する産業分類に当てはめて見ると、業界ごとの貯蓄傾向の違いがみえてきます。

GX・エネルギー(電気・ガス業)

17分野の中でもインフラの核となるこの業界は、平均貯蓄額が1318万円、中央値が400万円と、全産業の中で最も高い水準にあります。

AI・半導体・防衛(製造業)

戦略分野の多くを占める製造業では、平均貯蓄額が1000万円、中央値は200万円となっており、平均・中央値ともに一定水準となっています。

デジタル・サイバーセキュリティ(情報通信業)

統計上、製造業に近い水準(平均970万円程度)の平均貯蓄額であり、比較的一定の貯蓄基盤を持つ層が多い傾向にあります。

防災・国土強靭化(建設業)

平均貯蓄額は677万円、中央値は140万円であり、他の関連分野と比べると水準は低めとなっています。

このように、国策として投資が進む「高市銘柄」関連の産業は、統計上は、他産業と比べて金融資産保有額が高い傾向がみられます。

4. 【高市銘柄】国策を「味方」に。投資とキャリア両方注目

今回は、国が示す17の戦略分野に関連する業界の給与と貯蓄状況について解説しました。最新統計では、製造業や情報通信業、電気・ガス業などで全産業平均を上回る給与水準が示されています。金融資産の保有額にも業界ごとの違いが見られました。

一方で、同じ成長分野でも関わる業種やフェーズによって待遇には差があります。データを参考に、自身のキャリアや投資判断を冷静に見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。社会の動きを知ることが、将来設計の一助になるかもしれません。

参考資料

村岸 理美