5月下旬から6月にかけては、お住まいの自治体から住民税の決定通知書が順次届き始める時期です。前年の所得に基づいて今年度の税額が確定するため、自身や家族の住民税の課税状況を確認するタイミングとなります。

住民税非課税世帯に該当した場合、税負担がないことに加え、給付金だけでなく医療や介護、教育などの分野で複数の優遇措置が設けられています。

一方で、非課税となる判断基準は世帯構成や収入の種類によって異なり、明確なボーダーラインが存在します。

本記事では、年金収入や給与収入における非課税ラインの目安を整理するとともに、現金給付以外にどのような支援制度があるのか、代表的な5つの優遇措置について解説します。

1. 【現金給付以外にも】住民税非課税世帯を対象とする「優遇措置」にはどんなものがある?

新型コロナウイルス対策や物価高の影響を踏まえ、政府はこれまで、住民税非課税世帯を中心に現金給付などさまざまな支援を行ってきました。

住民税非課税世帯とは、世帯全体の所得が一定基準以下であり、住民税が課税されていない世帯のことをいいます。

これらの世帯には、単発の給付だけでなく、日々の生活を支えるための継続的な優遇措置も用意されています。

本章では、その中でも代表的な5つの制度について取り上げ、解説します。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/5

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 優遇措置1:国民健康保険料の減額

所得水準に応じて、保険料の一部(均等割・平等割)が7割・5割・2割のいずれかの割合で軽減されます。

1.2 優遇措置2:介護保険料の減額

対象は65歳以上の第1号被保険者であり、軽減される割合は自治体ごとの基準により異なります。

1.3 優遇措置3:国民年金保険料の免除・納付猶予

収入状況に応じて、保険料の全額免除や一部免除、あるいは納付猶予といった措置が適用されます。

1.4 優遇措置4:保育料の無償化

0歳から2歳児の保育料が無償となります。

これにより、3歳から5歳児の無償化とあわせて、未就学児の保育料の負担が解消されます。

1.5 優遇措置5:高等教育の修学支援新制度

大学や専門学校などにおける授業料や入学金が減免の対象となります。

さらに、返済不要の給付型奨学金も利用可能となり、高等教育の実質的な無償化が進められます。

このほかにも、自治体ごとに独自の支援制度が多数設けられています。

次章では、住民税非課税世帯の定義について、より詳しく見ていきます。

2. 【住民税のキホン】そもそも「住民税非課税世帯」とはどんな世帯を指す?

住民税非課税世帯の条件を正確に把握するために、まずは住民税の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める地方税の一種であり、公共サービスの提供やインフラ整備など、自治体の幅広い活動を支える財源となっています。

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/5

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

個人が納める住民税は、「均等割」と「所得割」の2つの要素から成り立っています。

  • 均等割:所得額にかかわらず、一定の所得がある方に一律で課される部分です。
  • 所得割:前年の所得金額に応じて課税額が変動する部分です。

このうち、均等割・所得割の両方が課されていない状態を「住民税非課税」といい、世帯全員が該当している場合は「住民税非課税世帯」と呼ばれます。

なお、所得割のみが非課税となる場合もありますが、給付金などの支援の対象となるかどうかは自治体によって扱いが異なります。

具体的な要件については、お住まいの市区町村の公式サイトなどで確認することをおすすめします。

3. 住民税が非課税になるための「3つの条件」を整理

住民税が非課税となる具体的な条件について確認していきましょう。

以下のいずれかに該当する場合、住民税は課されません。

  1. 生活保護法による生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下
  3. 前年の合計所得金額が、各市区町村が定める基準額を下回っている

なお、1と2の条件は全国共通ですが、3つ目の所得基準については自治体ごとに異なるため、注意が必要です。

4. 住民税が非課税となる「所得のボーダーライン」とは?

住民税非課税世帯に該当する所得の目安は、どの程度なのでしょうか。

ここでは、兵庫県神戸市を例として確認します。

均等割も所得割もかからない人(非課税者)3/5

均等割も所得割もかからない人(非課税者)

出所:神戸市「住民税(市県民税)とは」

35万円 × (本人 + 同一生計配偶者※ + 扶養親族の人数) + 10万円 + 21万円 (ただし、21万円は同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合のみ加算します)

なお、同一生計配偶者や扶養親族がいない場合(単身者など)は、上記の「21万円」が加算されないため、 35万円 × 1(本人) + 10万円 = 45万円 となり、合計所得金額が45万円以下であることが基準となります。

※同一生計配偶者:納税者と生計を共にする配偶者で、前年の合計所得金額が58万円以下の人

5. 住民税非課税になる「給与・年金収入」それぞれの目安はどのくらい?

住民税が非課税となる基準は、扶養している家族の人数に加え、収入の種類によっても変わります。

所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いて算出されますが、本章では神戸市の基準をもとに、収入額ベースでのおおよその目安を見ていきます。

住民税非課税世帯に該当する世帯(神戸市)4/5

住民税非課税世帯に該当する世帯(神戸市)

出所:神戸市「いくらまでの収入なら住民税(市県民税)が課税されませんか?」

5.1 単身世帯の場合の「年収目安」を見る

単身世帯の場合、合計所得金額が45万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみ:年収110万円以下
  • 65歳以上で年金収入のみ:年金収入155万円以下
  • 65歳未満で年金収入のみ:年金収入105万円以下

5.2 同一生計配偶者か扶養親族が1人いる場合の「年収目安」を見る

同一生計配偶者か扶養親族が1人いる場合、合計所得金額が101万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみ:年収166万円以下
  • 65歳以上で年金収入のみ:年金収入211万円以下
  • 65歳未満で年金収入のみ:年金収入171万3334円以下

単身世帯では、給与収入の場合は年収およそ110万円、65歳以上で年金収入のみの場合は約155万円が非課税となる目安とされています。

一方、配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入の上限はさらに高くなります。

とくに65歳以上で年金収入のみの世帯において、扶養親族が1人いる場合は、収入の目安が211万円以下とされており、単身世帯に比べて基準が大きく緩和されている点が特徴です。

このように、住民税が非課税となるかどうかは、世帯構成や収入の種類によって大きく変わります。

6. 【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

続いて、厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」をもとに、年代別に住民税が「課税されている世帯」の割合を確認していきましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合5/5

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30~39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※ 全世帯数には、非課税世帯および課税の有無が不明な世帯が含まれます。このため、全世帯から課税世帯を差し引いた世帯数が、非課税世帯の数と一致するわけではありません。
※ 総数には、年齢不詳の世帯が含まれます。
※ 住民税課税世帯には、住民税額が不明な世帯が含まれます。

住民税が課税されている世帯の割合は、30歳代から50歳代ではおおむね9割に達していますが、60歳代になると79.8%まで下がります。

その後も年齢の上昇とともに割合は低下し、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%となっています。

これは、現役引退後に年金を主な収入源とする生活へ移行し、所得水準が下がることや、65歳以上では公的年金等控除が手厚くなることなどが要因として考えられます。

さらに、住民税の課税対象外である遺族年金を受給している場合もあります。

こうした背景から、高齢者世帯は他の年代と比べて住民税非課税となりやすい傾向があるといえるでしょう。

7. 【注意点】優遇措置の多くは「申請」が必要

最後に、住民税非課税世帯向けの支援制度を利用する際の留意点を確認します。

用意されている各種の優遇措置は、非課税世帯に該当していても自動的に適用されるとは限りません。原則として、対象者自身による「申請手続き」が必要なケースがほとんどです。

給付金をはじめ、保険料の軽減措置や教育・介護に関する負担緩和制度には、それぞれ申請期限や必要書類が細かく定められています。手続きを行わないまま期限を過ぎた場合、要件を満たしていても支援を受けられなくなります。

自身が非課税世帯に該当する場合は、利用できる制度がないか自治体の広報誌や公式サイトなどで情報を確認し、申請漏れがないよう期日までに手続きを行うことが重要です。

8. まとめにかえて

本記事では、住民税が非課税となる判定目安と、該当した場合に利用できる現金給付以外の5つの優遇措置について整理しました。

住民税非課税世帯には、国民健康保険料や介護保険料の減額、教育費の支援など、生活における各種負担を軽減する制度が複数用意されています。ただし、こうした支援制度の多くは、要件を満たしていても自動的に適用されるわけではなく、原則として期日までに申請手続きを行う必要があります。

まもなく、今年度の課税状況が記載された通知書が届く時期に入ります。世帯の課税状況や適用可能な制度をあらためて確認し、必要に応じて自治体の窓口や公式情報を参照することが、各制度を適切に利用するための第一歩となります。

参考資料