老後の生活費に不安を感じる方は多いでしょう。65歳以上の無職夫婦世帯はまとまった貯蓄を持つ一方で、月の収支は赤字の傾向です。

年金は引き上げが続いていますが、試算値と実際の受給額には差もあり、現状把握が欠かせません。

最新の公的調査をもとに、安心できる老後への備えを確認しましょう。

1. 【生活費】4分の1は食費:収支は月4万2000円の赤字

まずは家計の収支を押さえましょう。家計調査から65歳以上の夫婦1組の世帯である「夫婦高齢者世帯」のうち、無職世帯の状況を確認します。

夫婦高齢者世帯の無職世帯は、2025年は1カ月あたりの実支出が29万6829円、実収入が25万4395円となりました。差し引きで約4万2000円の赤字であり、年間で約50万円の貯蓄の取り崩しが想定されます。

実支出の4分の1超は食料です。交通費や通信費も全体の1割を占め、教養娯楽(実支出の8.9%)と光熱・水道(同7.9%)が続きます。また非消費支出も全体の1割超と比較的高く、老後も税金や社会保険料の負担が続く状況がうかがえます。

一方の実収入は約9割が社会保険料給付です。老後は公的年金が主な収入源ながら、多くの世帯で支出を十分にカバーすることはできていません。

2. 【貯蓄】平均2500万円:安全資産が中心、株式と投信も

続いて貯蓄の状況を確認しましょう。先述の収支と期間が1年ずれますが、夫婦高齢者世帯(※)のうち無職世帯は2024年に平均して2511万円を保有しています。対して負債は23万円であり、多くの世帯は借入金の負担は小さいと考えられます。

※夫婦高齢者世帯…65歳以上の夫婦1組のみの世帯

2.1 【夫婦高齢者世帯のうち無職世帯の貯蓄および負債(2024年)】

  • 貯蓄:2511万円
  • 負債:23万円

貯蓄は大部分が比較的安全性の高い資産で構成されています。預貯金が貯蓄全体の64.9%を占め、生命保険といった保険商品(同14.7%)と合わせると約8割に達します。

これら以外の比較的リスクが高い資産では株式(同10.8%)が最も大きな割合を占めました。続いて投資信託(同6.9%)、債券(同2.4%)となっています。

債券は、リスク資産のなかでは相対的に安全性が高い商品ですが、あまり選好されていません。低リスクの運用は、預貯金が主役となってる状況です。

 

3. 【年金】インフレで増額傾向:試算と実際の支給額の違いに注意

最後に老後の収入の中核である公的年金の状況を確認しましょう。

2026年4月分からの年金支給額は、自営業者などが受給する老齢基礎年金は満額で月に7万608円、会社員などが受給する老齢厚生年金はモデル世帯(※)で月に23万7279円です。物価の上昇を反映し、年金額は前年より引き上げられました。

※モデル世帯…平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円で40年間就業した場合に受け取り始める老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)

3.1 【公的年金の支給月額(2026年4月分)】

  • 老齢基礎年金(満額):7万608円(前年比+1.9%)
  • モデル世帯:23万7279円(同+2.0%)

ただし、上記は試算値であり、実際の支給額は変動します。例えば、2024年度の受給者の平均年金月額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の双方で試算値を下回りました。

3.2 【公的年金の受給者平均年金月額(2024年度)】

  • 老齢基礎年金:5万4578円
  • 老齢厚生年金:15万1142円(老齢基礎年金の併給含む)
  • 計:20万5720円
  • (参考1)老齢基礎年金(満額):6万8000円
  • (参考2)モデル世帯:23万483円

4. 生活費・貯蓄・年金のバランスを把握して、安心の老後へ

これまでの調査をまとめると次のようになります。

  • 収支:65歳以上の無職夫婦世帯は月に4.2万円の赤字
  • 貯蓄:平均保有額は2511万円、多くは預貯金などの安全資産
  • 年金:1人あたり月額は自営業者が5~7万円、会社員が15~17万円

これらの数値を参考に、今のうちから老後に向け資産設計を始めておきましょう。

参考資料