4. 【年金生活のシニア】年金にゆとりがないと感じるのはなぜか

「老後は年金を軸に暮らす」そう考えてきた人にとって、「年金だけでは生活が成り立たない」という実感は、想定外の現実かもしれません。

実際、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を見ると、年金生活の厳しさは決して一部の例外ではないことが分かります。

4.1 60歳代・70歳代の約3割が「年金だけでは生活費をまかなえない」

「年金にゆとりがない」と感じる理由4/4

「年金にゆとりがない」と感じる理由

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「2025年家計の金融行動に関する世論調査」をもとにLIMO編集部作成

二人以上世帯では、60歳代の33.6%、70歳代の26.5%が、「年金だけでは日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。

さらに単身世帯に目を向けると状況はより深刻で、60歳代の50.7%、70歳代の35.5%が同様の回答をしており、半数前後が年金のみでの生活に限界を感じていることになります。

この結果を見て、「年金額が低いから」と単純に片づけるのは適切ではありません。

多くのシニアが「ゆとりがない」と感じる背景には、次のような構造的な要因が考えられます。

①生活費の中身が変わってきている

食料品や光熱費など、日常的に削りにくい支出ほど値上がりが続いており、節約努力だけでは吸収しきれない状況が生まれています。

②社会保険料や医療・介護関連費用の増加

年金からは国民健康保険料や介護保険料が天引きされ、さらに医療費の自己負担も発生します。

「年金額=自由に使えるお金」ではないことが、家計の余裕を奪っています。

③収入を増やす選択肢が限られる

現役世代であれば収入増や働き方の変更で対応できても、シニア世代では健康や雇用条件の制約が大きく、支出増に対して打てる手が少ないのが実情です。

5. まとめ

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の調査からは、年代や世帯構成によって貯蓄状況に大きな差があり、平均値だけでは実態を把握しきれないことが分かります。

特に中央値に目を向けると、40~50歳代では老後資金をこれから本格的に準備する段階の世帯が多数派であり、単身世帯では生活防衛資金に十分な余裕を持てていないケースも少なくありません。

60歳代以降は貯蓄額が増える傾向が見られる一方、70歳代では取り崩しが進み、再び水準が下がる様子も確認できます。

老後の安心感を左右するのは、貯蓄額の多さだけではありません。老後に必要なお金を把握し、自然にお金が残る仕組みを持ち、働き方や暮らし方を柔軟に見直しているかどうかが、大きな差につながっています。

年金生活に入ったあとも、物価上昇や社会保険料、医療・介護費用の負担は続きます。

「年金があるから大丈夫」と考えるのではなく、実際の手取りや支出を見据えたうえで、早めに備えを進めていくことが大切です。

参考資料

加藤 聖人