見逃せない年収差の影響

「女性の投資比率は低い」とよく言われます。本当にそうなのでしょうか? これまで2010年から6回にわたって行ってきたサラリーマン1万人アンケートの中から女性のデータを取り出して、分析を行ってみました。そこからわかることは、女性だから投資をする人が少ないという簡単なものではないという点です。

2018年の調査では、4,477人の女性が回答し、ほぼ各年代(20代から50代)で1,000人前後の回答者数となっています。その中で「投資をしている」と回答した人の比率は23.5%で、4分の1を少し下回る水準でした。

男性の40.1%に比べると、15ポイントほど低いことがわかります。ただ、これを下のグラフのように年代別に平均年収と一緒に並べてみると、女性だから低いというよりは、平均年収が低いために投資をしている人が少ないといえる面も多いように見受けられます。

男性の場合には、20代から50代へと年収は右肩上がりに上昇しているものの、女性はほぼ横ばいに推移しており、年齢が退職に近づいても「投資をしている人」の比率は30%弱にとどまっています。

もちろん、投資をしている人の比率の男女差は、20代では20ポイントほどありますが、50代になると10ポイント程度へと縮小しています。まだまだこの格差は大きいといえますが、平均年収で300万円近い差を考えると、その差はかなり改善しているとみることもできます。

2010年からの改善度合いでみる年代格差

女性の投資をしている比率を2010年の同アンケートと、2018年で比較すると別な面も見えてきます。この8年間で、20代は14.8%から1.1ポイント上昇する一方で、50代は35.0%から5.6ポイント低下しています。その背景としては、やはり年収の影響が大きいように窺われます。

20代の平均年収は同じ期間で261.0万円から309.8万円へ18.7%増加したものの、50代の年収は412.0万円から384.9万円へ6.6%減少しました。アベノミクス効果で若年層の年収は、リーマンショック後の“就職最氷河期”と言われた時代から大きく改善していますが、40代、50代の年収は逆に下がっているのが実情です。

実際、これは男性でも同じ状況になっており、女性だけに起きている変化ではなく、年代として受けている影響といえます。ちなみに、男性20代の年収は2010年比で8.6%上昇しましたが、50代では2.5%減少しています。また投資をしている人の比率は20代で1.4ポイント上昇し、50代で1.2ポイント低下しています。

こうしたデータの分析からみると、投資をしている人の比率は男女という性差よりも、年収の影響が大きく、その結果として年代差の特徴を大きく映すことにつながっているように思われます。

男女別・年齢別の年収と投資をしている人の変化 (単位:万円、%)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、「女性の投資姿勢:水準よりも変化に注目」、2019年3月

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史