2. 老後家計を読み解くカギは「固定費」と「変動費」
前章にて、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計を見ると、平均では毎月およそ2万円の赤字となっていることがわかりました。
ただし、この赤字は単に「収入が足りない」から生じているわけではありません。老後の家計を読み解くうえでは、支出を固定費と変動費に分けて考える視点が欠かせません。
この2つの性質を整理すると、なぜ赤字が生じやすいのか、そして調整が難しい理由が見えてきます。
2.1 老後でも避けられない「固定費」の存在
固定費とは、生活スタイルを大きく変えない限り、毎月ほぼ一定額が発生する支出です。後期高齢シニア夫婦の場合、主な固定費には次のようなものがあります。
- 光熱・水道費
- 通信費
- 医療保険料・介護保険料
- 医療費の自己負担分
- 税金などの非消費支出
住居費は持ち家率の高さから比較的低く抑えられているものの、医療・介護関連の固定費は、年齢とともにむしろ増えやすい傾向があります。
一度発生すると削減が難しいこれらの固定費が、老後の家計を下支えする一方で、収支を硬直化させる要因にもなっています。
2.2 調整できるようで実は限界がある「変動費」
一方、変動費はその月の過ごし方によって増減しやすい支出です。
- 食費
- 教養娯楽費
- 交際費
- 被服費
- 交通費
家計が苦しくなると、まず見直しの対象になるのはこれらの変動費でしょう。しかし、家計調査を見ると、75歳以上世帯のエンゲル係数は31.3%と高水準でした。
これは、生活に必要な食費の割合がすでに高く、削減余地が大きくないことを示しています。変動費を抑えようとしても、生活の質そのものを下げることにつながりやすいのが現実です。
2.3 「赤字が小さい=安心」とは言えない理由
毎月の赤字が2万円程度と聞くと、「それなら大きな問題ではない」と感じるかもしれません。しかし、この赤字は、固定費を中心に構成された支出構造の中で生じています。
- 固定費は簡単に減らせない
- 変動費はすでに圧縮されている
- 突発的な医療・介護費用が加わると、一気に赤字が拡大する
こうした条件が重なると、家計は想像以上に脆くなります。赤字額の大小よりも、「調整できる余地がどれだけ残っているか」が重要な判断材料になります。
2.4 支出構造を知ることが、老後の備えにつながる
老後の家計管理では、「いくら使っているか」だけでなく、どの支出が固定され、どこに柔軟性があるのかを把握することが欠かせません。
年金収入が大きく増える可能性が低い以上、支出の性質を理解したうえで、貯蓄の取り崩しペースや生活水準を考える必要があります。
固定費と変動費のバランスを意識することは、75歳以降の生活を現実的に見通すための、ひとつの重要な視点と言えるでしょう。