暦の上では春を迎えましたが、まだ寒さが残る2月。将来の生活設計について、じっくり考える時間を持つのも良いかもしれません。特に、老後の生活を支える重要な収入源である「公的年金」について、現在のシニア世代が実際にどれくらいの金額を受け取っているかご存知でしょうか。
厚生労働省が公表した最新データから、国民年金と厚生年金の平均受給月額を見てみましょう。
この金額をご自身の現在の生活費と比較した場合、公的年金だけで老後の生活をまかなうことは可能でしょうか。もちろん、これはあくまで平均値であり、実際にはこの額より多い方もいれば、少ない方もいます。
特に厚生年金は、現役時代の働き方が受給額に直接反映されるため、個人差が大きくなる傾向にあります。
本記事では、最新の年金データに基づき、受給額ごとの人数分布を分析します。そして「厚生年金を受け取る方で、月額10万円に満たない方と月額20万円を超える方ではどちらが多いのか」という問いを通じて、現代の年金事情に迫ります。
1. 日本の公的年金制度の基本、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造とは
公的年金は、原則として偶数月の15日に、2カ月分がまとめて支給されます。ただし、支給日が金融機関の休業日にあたる場合は、その直前の営業日に前倒しで支給される仕組みです。
日本の公的年金制度は、しばしば「2階建て」と表現されます。1階部分にあたるのが「国民年金(基礎年金)」で、働き方にかかわらず加入が義務付けられています。そして2階部分が「厚生年金」で、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。
それぞれの制度の概要を以下にまとめました。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)の概要
- 加入対象:原則として、日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての方
- 年金保険料:加入者全員が一律の金額(※1)
- 老後の受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると満額を受け取れる(※2)
- 被保険者の種類:第1号から第3号までの区分がある(※3)
※1:2025年度の国民年金保険料は月額1万7510円です。
※2:2025年度の老齢基礎年金(国民年金)は、満額で月額6万9308円です。
※3:第1号被保険者は自営業者や学生、無職の方など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は第2号被保険者に扶養されている配偶者を指します。
1.2 2階部分:厚生年金の概要
- 加入対象:会社員や公務員のほか、パート・アルバイトでも特定適用事業所(※4)で働き、一定の要件を満たす方が国民年金に上乗せして加入
- 年金保険料:収入に応じて保険料が決まる報酬比例制を採用(※5)
- 老後の受給額:加入期間や納付した保険料額によって個人差が生じる
- 被保険者の種類:第1号から第4号までの区分がある(※6)
※4:厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上となる企業などが見込まれる事業所を指します。
※5:保険料は、毎月の給与(標準報酬月額、上限65万円)と賞与(標準賞与額、上限150万円)に共通の保険料率を掛けて算出されます。
※6:第1号は民間企業の会社員、第2号は国家公務員、第3号は地方公務員、第4号は私立学校の教職員が該当します。
次の章では、厚生労働省の公表データをもとに、国民年金と厚生年金それぞれの平均受給月額を具体的に見ていきます。
2. 厚生年金の平均受給月額はいくら?国民年金と合わせた金額を確認
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、厚生年金と国民年金の平均的な受給月額を確認しましょう。
※この記事で取り上げるのは、民間企業に勤務していた方が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金額で、国民年金(基礎年金)部分を含んだものです。
2.1 厚生年金の平均月額:全体・男女別の比較
- 男女合計:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
※上記は、民間企業に勤務していた方が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の平均年金月額です。
2.2 国民年金の平均月額:全体・男女別の比較
- 男女合計:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金は保険料が一律であるため、将来の受給額も大きな差は生まれにくく、平均では男性が月額6万円台、女性が月額5万円台となっています。
このため、国民年金だけで月額10万円以上を受け取ることは、現実的には難しいと言えます。
対照的に、厚生年金は国民年金に上乗せされる部分であり、保険料が収入に応じて変動するため、受給額にも個人差が顕著に現れるのが特徴です。
これらの平均額を見ると、老後の生活を公的年金だけで維持できるのか、気になるところではないでしょうか。
厚生年金の平均月額は15万289円、国民年金は5万9310円です。世帯に月額20万円以上の年金受給者が一人でもいれば、年金収入で生活費の多くをカバーできる可能性が高まります。
一方で、国民年金のみで生活費のすべてをまかなうのは、多くの場合で厳しいのが実情です。そうした中で、一人あたり「月10万円」程度の年金収入は、公的年金を中心とした生活設計の一つの目安となりそうです。
では、実際に厚生年金(国民年金を含む)を受け取っている方のうち、
- 「月10万円未満の方」
- 「月20万円以上の方」
では、どちらのほうが多いのでしょうか。
3. 厚生年金受給者の実態:「月10万円未満」と「月20万円以上」ではどちらが多いのか
厚生年金の受給額は、加入期間の長さや現役時代の収入によって大きく異なります。ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額が、月額ごとにどれくらい分布しているのかを見ていきましょう。
3.1 厚生年金の受給額別人数分布
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金(国民年金を含む)受給権者(男女合計)における年金額の割合は、以下の通りです。
- 月額10万円未満:19.0%
- 月額20万円以上:18.8%
この結果から、高額受給者である「20万円以上」の方よりも、「10万円未満」の方のほうがわずかに多いことがわかります。
公的年金のみで老後生活を送る場合、現役時代に比べて収入が大幅に減少するのが一般的です。年金生活が始まってから慌てることのないよう、ゆとりを持って具体的な資金計画を立てておくことが大切です。
参考:厚生年金受給額の分布割合(男女合計)
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
ここで示した割合は、あくまで厚生年金(国民年金を含む)を受け取っている方に限定したデータです。
もし国民年金のみを受給している方々を加えて全体の受給権者で考えると、「月10万円未満」の割合はさらに高くなり、反対に「月20万円以上」を受け取っている方の割合はさらに低くなると考えられます。
4. 年金だけで足りる?老後に向けた資産形成の重要性
この記事では、厚生年金と国民年金を合わせた老齢年金の受給額について、「月額10万円未満」と「月額20万円以上」の受給者割合やその実態を解説しました。
全体の平均月額は15万289円ですが、実際の受給額には大きな個人差があるのが実情です。
月額10万円未満の方と月額20万円以上の方はそれぞれ全体の約2割を占め、残りの約6割の方が月額10万円以上20万円未満の範囲に収まっています。
日々の生活費や将来の医療・介護費の負担を考えると、公的年金だけで生活することに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
ご自身の理想とする老後生活を具体的に描き、どれくらいの生活資金が必要になるのかを試算してみてはいかがでしょうか。その上で、早い段階から計画的に準備を進めることが重要です。
※当記事は再編集記事です。



