老後の生活設計を考えるうえで、まず知っておきたいのが公的年金の見込額です。会社員として厚生年金に加入した人は、原則として老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。
では、平均年収400万円で38年間働いた場合、年金はいくらになるのでしょうか。現行制度と2026年度の年金額をもとに一定の条件で試算すると、受給額は額面で月約13万6000円です。ただし、これは将来の受給額を保証する数字ではなく、実際の金額は加入記録や報酬、受給開始時期などによって変わります。
今回の記事では、このモデルケースの計算条件と年金の内訳を整理したうえで、税金・社会保険料が差し引かれる場合の手取り、自分の見込額を確認する方法、老後の家計を点検するポイントを順に解説します。
1. 3つのポイントの見出し
-
平均年収400万円で38年働いた場合の年金支給額は、基礎年金と現役時代の収入に応じた上乗せの厚生年金の2階建てで試算され、目安が定まる。 -
年金は全額がそのまま使えるわけではなく、個人の居住する自治体などの判定に基づき、各種社会保険料や税金が引き去られる -
老後の家計破綻を未然に防ぐためには、定期便の見込み額から実際の受給手取り率を冷静に算定し、現在の固定費や貯蓄の管理環境を整えることが効果的である
2. 平均年収400万円・厚生年金加入38年の受給額を試算
ここでは、平均年収400万円で38年間働いた人をモデルに、公的年金の受給額を試算します。計算の前提は次のとおりです。
- 平均年収は400万円(賞与を含む前提)
- 2003年4月以降に厚生年金へ38年間加入
- 老齢基礎年金の額に反映される期間は38年
- 残り2年は学生納付特例を利用し、追納していないものとする
- 加給年金など、配偶者や扶養家族に関する加算は含めない
- 65歳から老齢年金を受け取る
会社員や公務員として厚生年金に加入した期間は、国民年金の第2号被保険者であった期間として、老齢基礎年金の計算にも反映されます。
そのため、老後は原則として、1階部分の「老齢基礎年金」と2階部分の「老齢厚生年金」を受け取る仕組みです。
2.1 老齢厚生年金は月約6万9000円
老齢厚生年金の報酬比例部分は、加入期間と現役時代の報酬をもとに計算します。今回は平均年収400万円を12カ月で割り、平均標準報酬額を約33万3000円と仮定します。
- 平均標準報酬額:約33万3000円
- 厚生年金の加入期間:38年
- 加入月数:456カ月(38年×12カ月)
2003年4月以降の加入期間については、次の式を使って概算します。
平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数
約33万3000円×5.481÷1000×456カ月
=年額約83万2279円
月額に換算すると約6万9357円となるため、老齢厚生年金は月当たり、およそ6万9400円が目安です。
なお、制度上の平均標準報酬額には標準報酬月額と標準賞与額が含まれ、過去の報酬には再評価率も用いられます。年収を単純に12で割る今回の計算は、仕組みを理解するための簡易試算です。
2.2 老齢基礎年金は月約6万7000円
2026年度の老齢基礎年金の満額は、1956年4月2日以後に生まれた人の場合、年額84万7300円、月額7万608円です。
満額を受け取るには、原則として20歳から60歳までの40年間について、保険料納付済期間などの要件を満たす必要があります。今回のモデルでは、年金額に反映される期間を38年として計算します。
84万7300円×38年÷40年
=年額80万4935円
月額換算では約6万7078円となるため、老齢基礎年金は、およそ6万7000円が目安です。学生納付特例の期間は受給資格期間には含まれますが、追納していなければ年金額には反映されません。
2.3 合計は月約13万6000円台
ここまでの試算結果をまとめると、次のようになります。
| 年金の種類 | 年額の目安 | 月額換算 |
|---|---|---|
| 老齢厚生年金 | 約83万2279円 | 約6万9357円 |
| 老齢基礎年金 | 約80万4935円 | 約6万7078円 |
| 合計 | 約163万7214円 | 約13万6435円 |
※上記は現時点の想定で算出した概算です。実際の年金額は、加入期間や過去の収入、保険料の納付状況などによって異なります。また、将来の年金額を予測するものでもありません。
したがって、今回の条件では、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた額面は月約13万6000円台となります。
ただし、これは2026年度の年金額と一定の仮定に基づく試算です。将来の実際の受給額は、その時点の年金額改定に加え、給与・賞与の推移、加入記録、免除・未納期間、繰上げ・繰下げ受給の有無などによって変わります。
また、ここで算出した金額は税金や社会保険料が差し引かれる前の「額面」です。次章では、額面と実際に使える手取りの違いを確認します。
3. 実際に使える年金は少なくなる?
前章で試算した月約13万6000円は、税金や社会保険料を差し引く前の額面です。実際には、次の税・保険料を負担する場合があります。
- 所得税および復興特別所得税
- 住民税
- 介護保険料
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
2026年分では、65歳以上の人は公的年金の年額が205万円以上になると、原則として所得税などの源泉徴収対象になります。今回の試算額は年約163万7000円のため、年金収入だけなら、この基準による源泉徴収の対象外です。
ただし、所得税が引かれなくても、65歳以上では介護保険料や医療保険料の負担が生じるため、実際に使える金額は額面より少なくなるのが一般的です。住民税を含む負担額は、前年の所得、年齢、世帯構成、居住地などによって異なります。
税・保険料は年金から特別徴収される場合もあれば、納付書や口座振替で支払う場合もあります。そのため、年金の振込額だけでなく、別途支払う保険料も含めて手取りを考える必要があります。
4. 自分の年金見込額を確認するには?
前章で見たように、年金の手取りは税金や社会保険料によって変わります。手取りを考える前提として、まずは自分が受け取れる年金の額面を確認しておきましょう。
今回算出した年金額は、平均年収400万円・加入期間38年という条件で計算したモデルケースです。実際の年金額は、一人ひとりの加入記録や報酬によって異なります。
自分の記録に基づく見込額は、日本年金機構の「ねんきんネット」で確認できます。「かんたん試算」のほか、今後の収入や就業期間、受給開始年齢、保険料の追納などを設定した試算も可能です。
ただし、表示される金額は入力した条件に基づく見込みであり、将来の受給額を保証するものではありません。見込額を確認したら、次は老後の支出や保有資産と照らし合わせていきましょう。
5. 老後資金は「収入・支出・資産」の3つから考える
今回の記事では、平均年収400万円で38年間働いた場合、年金はいくらになるのかを試算してみました。
年金額だけを見て安心したり、不安になったりするのではなく、「収入」「支出」「資産」の3つを整理することが大切です。
まず収入では、老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込額を確認します。特に老齢厚生年金は、現役時代の報酬や加入期間によって金額が変わります。厚生年金に加入していない期間がある人や、育児・介護などで働き方を変えた人は、その期間が年金額にどう反映されているかを確認しておきましょう。
支出については、毎月の生活費だけでなく、住居費や医療・介護費、住宅の修繕費などの臨時支出も考える必要があります。持ち家か賃貸か、退職後も住宅ローンが残るかによっても、必要な金額は変わります。
そのうえで、年金だけでは不足する金額を、預貯金や退職金、NISA・iDeCoなどで形成した資産からどのように補うかを考えます。資産運用をしている場合は、将来の運用成果を確定した金額として扱わず、価格変動も踏まえて見積もることが重要です。
老後資金の準備では、平均的な年金額を知るだけでなく、自分の年金見込額、必要な生活費、現在の資産を具体的に把握することが出発点になります。定期的に状況を確認し、収支の差額に応じて計画を見直していきましょう。
