銀行員時代、退職金の預け入れや老後の資産運用の相談に乗る中で、共働きのご夫婦が「夫婦で頑張って働いてきたのに、年金はこれだけなのよ」とショックを受けられる場面に何度も立ち会いました。
現役時代に夫婦全体の世帯収入が高く、ゆとりある生活を送ってきたご夫婦ほど、「共働きだから年金もそれなりに多いはず」と無意識に思い込んでしまいがちです。しかし、65歳が近づき、ねんきん定期便を開いて、理想と現実のギャップに驚かれるのです。
厚生労働省が発表する「モデル世帯」の年金額は2人分合算で月額23万7279円(令和8年度)。
ただしこの数字は「夫が会社員・妻が専業主婦」の世帯をベースにしています。
そのため、共働き夫婦のリアルな受給額は、妻のキャリアや厚生年金の加入状況によって大きく左右されます。
この記事では、共働き夫婦の年金受給額のリアルを平均データから紐解き、老後破綻を防ぐために元銀行員として知っておいてほしい「家計設計の視点」を解説します。
1. 3つのポイントの見出し
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厚生労働省の「モデル世帯」(夫会社員・妻専業主婦)の年金は2026年度で月23万7279円。共働き夫婦とは計算の前提が異なる -
夫婦ともに厚生年金加入なら平均合算で月28万円強とモデル世帯を上回るが、妻が国民年金のみなら逆に下回るケースも -
「共働きだから安心」と一括りにせず、夫婦それぞれのねんきん定期便で世帯合計の見込額を確認することが大切
2. 「モデル世帯」の年金額と、共働き夫婦のズレ
厚生労働省が示す「モデル世帯」の年金額は、2026年度(令和8年度)で月23万7279円です。
これは夫が40年間平均的な収入で会社勤めをし、妻が40年間専業主婦(第3号被保険者)だったケースを想定した金額です。
内訳は、夫の「老齢基礎年金+老齢厚生年金」と、妻の「老齢基礎年金(月7万608円)」の合計であり、妻自身の厚生年金は含まれていません。
共働き夫婦の場合、夫婦それぞれが厚生年金に加入していれば、二人分の「2階建て年金」が受け取れる可能性があります。この点で、モデル世帯とは受給の構造が大きく異なります。
3. 共働き夫婦の年金受給額はいくらになる?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、実際の受給水準を確認していきましょう。
3.1 夫婦ともに厚生年金に加入していた場合
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額は、男性が16万9967円、女性が11万1413円です。
夫婦それぞれが厚生年金に加入し、平均的な受給額を受け取ると仮定すると、合算で月28万1380円になります。
モデル世帯(月23万7279円)と比較すると、月あたり約4万4000円、年間で約53万円多くなる計算です。
ただし、階級別分布を見ると月10万円未満が19.0%、月20万円超が18.8%と個人差が大きく、実際の受給額は夫婦の勤続年数や収入水準によってさまざまです。
「平均で計算するといくら」という数字はあくまで目安として、自分たちの状況に置き換えて確認することが大切です。
3.2 妻が国民年金のみだった場合
妻がパートや自営業で厚生年金に加入せず、国民年金のみを納めてきたケースでは、妻の受給額は国民年金のみになります。女性の国民年金平均月額は5万7582円です。
この場合、夫の厚生年金(平均16万9967円)と妻の国民年金(平均5万7582円)の合計は月22万7549円となり、「専業主婦世帯」のモデル金額を下回ることになります。
「共働き」という言葉の中にも、実態はさまざまなケースがあることが分かります。
4. 【筆者からのアドバイス】共働き夫婦が押さえておきたい3つの視点
老後を迎えてから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、元銀行員の視点から、夫婦で共有してほしいポイントを3つにまとめました。
4.1 妻の働き方が年金額を大きく左右する
共働き夫婦の年金額は、妻(または収入の少ない側)がどれくらい厚生年金に加入していたかで大きく変わります。
パート勤務でも一定の要件を満たせば厚生年金の対象となり、加入期間が長いほど老後の受給額が積み上がっていく仕組みです。
「扶養の範囲内」だけを基準に働き方を選ぶのではなく、老後の年金額まで視野に入れた選択ができると、将来の安心感がぐっと変わってくるのではないでしょうか。
4.2 ねんきん定期便を「夫婦ふたり分」で確認する
共働き夫婦の場合、それぞれのねんきん定期便が届きます。
夫婦それぞれの見込額を並べて確認することで、世帯合計の受給額と、毎月の生活費との差額が具体的に把握できます。
片方だけを見るのではなく、「わが家の年金合計はいくらか」という視点で家計を考えてみましょう。
4.3 受給開始時期を夫婦で話し合っておく
年金は原則65歳から受給できますが、60〜75歳の間で繰上げ・繰下げが可能です。
夫婦で同時に65歳から受け取るのか、片方が繰下げてもう片方が先に受給するのかなど、収入と支出のバランスを見ながら選択肢を検討しておきましょう。
夫婦ふたりで方針を合わせておくことが、老後の計画をスムーズに進める上でも大切です。
5. まとめ
夫婦ともに厚生年金に加入し続けてきた場合、平均データをもとにした合算額はモデル世帯を上回る月28万円強になります。
しかし、妻の加入歴や勤続年数、その間の年収によっては、モデル世帯より少なくなることもあります。
「共働きだから安心」という漠然とした安心感は、少し脇に置いておいたほうがいいかもしれません。
まずは夫婦それぞれのねんきん定期便を手元に取り出し、世帯合計の見込額を確かめるところから始めてみてください。
数字を確認した瞬間、漠然とした不安が「あとどれくらい備えが必要か」という具体的な課題に変わります。老後の家計設計は、そこから動き始めることができます。
参考資料
和田 直子

