新年度の慌ただしさも一段落し、初夏の気配が色濃くなる5月下旬。少し立ち止まって、セカンドライフの資金計画やこれからの暮らしについて落ち着いて見直すのに、ちょうど良いタイミングではないでしょうか。

ここでまず押さえておきたい大原則が、日本の公的年金は待っていればもらえるわけではなく、自ら手続きを行う「申請主義」であるという点です。

たとえマイナンバーと公金受取口座を紐づけていても、別途「年金請求書」を提出しなければ、年金は受け取ることができません。

特に、今年(2026年)に65歳の節目を迎える昭和36年(1961年)生まれの方は、すでに誕生月の3カ月前にお手元へ書類が届き始めている方もいるでしょう。

いざという時に慌てないよう、受給開始までの流れを改めて確認し、スムーズな手続きに備えておきましょう。

1. 【データで確認】公的年金の仕組み、どれくらい理解していますか?

私たちは、年金制度についてどの程度理解しているのでしょうか。

厚生労働省「生活設計と年金に関する世論調査」(2024年3月公表)によると、項目ごとに認知度に大きな差があることが明らかになっています。

公的年金制度について、みんなはどこまで知っている?1/4

公的年金制度への意識

出所:厚生労働省「生活設計と年金に関する世論調査(主な調査結果)」

  • 20歳以上の国民は、加入する義務がある: 82.0%
  • 60〜75歳の間で受け取り始める時期を選択できる: 73.0%
  • 現役で働く世代が、高齢者を扶養する制度である: 66.8%
  • 保険料の納付状況に応じて年金額が変動する: 62.5%
  • 生涯にわたり年金を受給できる: 56.4%
  • 物価や賃金の変動に応じて年金額が調整される: 42.3%
  • 「ねんきんネット」というサービスが活用できる: 30.2%
  • 「公的年金シミュレーター」というサービスが活用できる: 8.4%
  • いずれも知らない: 5.1%
  • 無回答:1.4%

加入義務や受給開始時期の選択といった基本事項は広く知られていますが、物価変動に応じた年金額の調整やシミュレーターなどの実用的なツールについては認知が十分ではないことが目立ちます。

制度を「知っている」段階から「活用できる」段階へ進めるには、まだ課題が残っていると言えるでしょう。

では、年金の「受け取り開始時期や手続き」に関してはどうでしょうか。

2. 公的年金は「国民年金と厚生年金」の2階建て構造

年金をスムーズに受け取り始めるには、まず自分がどの種類の年金を、どのような形で受け取るのかを把握しておくことが大切です。

日本の公的年金制度は「2階建て構造」と例えられることがあります。

現役時代の働き方が、将来の年金額にどのように影響するのか、基本的な仕組みから確認していきましょう。

日本の年金制度は、次の2つの部分で構成されています。

  • 1階部分(国民年金):日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎的な年金です。
  • 2階部分(厚生年金):会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する年金制度を指します。

いずれの年金も、原則として65歳から支給が始まります。

保険料を一定期間(原則10年以上)納めるなど、受給資格を満たすと、以下のように年金が支給されます。

  • 国民年金のみに加入していた方:「老齢基礎年金」
  • 厚生年金に加入していた方:「老齢基礎年金」に「老齢厚生年金」を上乗せした額

このように、現役時代の働き方によって、将来受け取る年金の種類や金額が左右される仕組みになっています。

3. 60歳〜65歳までの「年金空白期間」に年金を受給できる2つのケースとは?

ここからは、65歳になる前に年金を受け取れるケースや、具体的な申請の流れについて詳しく見ていきます。

年金保険料の納付は原則60歳で終了しますが、支給開始は原則65歳からです。

この「空白期間」がある中で、特定の条件を満たす場合に65歳前から年金を受け取れるケースがあります。

3.1 空白期間に受給できるケース1:経過措置である「特別支給の老齢厚生年金」

かつて厚生年金の支給開始年齢は60歳でしたが、制度改正により段階的に引き上げられ、現在は国民年金と同じく原則65歳から支給されます。

この変更に伴う緩和措置として、特定の生年月日以前に生まれた人は、65歳になるまでの間「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる経過措置が設けられています。

  • 1966(昭和41)年4月1日以前生まれの女性

※男性の取り扱いについて
男性は1961(昭和36)年4月1日以前生まれの方が対象でしたが、すでに全員が65歳に到達しているため、今後新たに受給権が発生することはありません。

この経過措置を受けるには、次の3つの条件すべてを満たす必要があります。

  • 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしている
  • 厚生年金保険などに1年以上加入していた
  • 生年月日に応じた受給開始年齢に達している

受給開始年齢は、個人の生年月日や性別によって異なります。

3.2 空白期間に受給できるケース2:希望により受給開始を早める「繰上げ受給」

老齢年金を「60歳から64歳までの間」に前倒しで受け取ることができる制度を「繰上げ受給」といいます。

2026年時点でよく紹介される「減額率0.4%(最大24%)」は、2022年4月以降に60歳を迎えた世代(1962年4月2日以降生まれ)が対象です。

一方、2026年に65歳を迎える人には、一貫して「0.5%(最大30%)」の減額率が適用されます。

この減額率は生涯変わらないため、繰上げ受給を選ぶ際には慎重な判断が必要です。

4. 2026年に「65歳になる方」が、年金請求書を受け取った際にやるべきこと

老齢年金を受け取るには、「年金請求書」の提出が必須です。

この書類には、基礎年金番号や氏名などがあらかじめ印字されており、日本年金機構から郵送されます。

4.1 「初めて老齢年金を請求する方」の手続き方法について

  • 書類が届く時期:65歳(または特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢)になる3カ月前
  • 提出できる時期:受給権が発生する誕生日の前日以降
  • 提出先:最寄りの年金事務所、または街角の年金相談センター

4.2 「特別支給の老齢厚生年金から切り替える方」の手続き方法について

現在「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている場合、65歳になると「本来の老齢年金」に切り替わります。

その際には、改めて年金請求書の提出が必要です。

  • 書類が届く時期:65歳の誕生月の初旬(1日生まれの場合は前月の初旬)
  • 提出できる時期:誕生日の前日以降
  • 提出先:日本年金機構本部へ郵送(電子申請も選択可能)

請求書の提出を忘れると、年金の支給が一時的に停止することがあるため、注意が必要です。

4.3 年金請求書の「提出期限」と「注意点」について

希望するタイミングで年金を受け取り始めるには、誕生月の末日(1日生まれの場合は前月末日)までに請求書を提出することが目安となります。

期限を過ぎても受給権が消えるわけではありませんが、支給開始が数カ月遅れる可能性があるため注意が必要です。

また、年金の受給権には5年の時効があるため、請求書が届いたらそのままにせず、適切な時期に手続きを行うことが重要です。

5. 年金受給は申請が必須!電子申請をスムーズに進めるための準備

将来の年金額をシミュレーションして安心する方は多いですが、「自ら手続きをしなければ、年金は1円も支給されない」という大原則は意外と見落とされがちです。

日本年金機構から届く年金請求書に「電子申請のご案内リーフレット」が同封されていれば、便利なオンライン手続きを選ぶことができます。途中でつまずくことなくスムーズに申請を終えられるよう、まずは以下のアイテムをあらかじめ手元に準備しておきましょう。

老齢年金請求書「事前申請に必要なもの」4/4

老齢年金請求書「事前申請に必要なもの」

出所:日本年金機構「電子申請かんたんガイド(老齢年金請求書)」

  • スマートフォンまたはパソコン
  • マイナンバーカード
  • マイナンバーカードに設定した2種類のパスワード
  • マイナポータルアプリ

パソコンで申請する場合、マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダライタなどが別途必要です。

5.1 老齢年金の電子申請が対象外となる条件

ただし、電子申請の案内が同封されていても、以下に該当する方はオンラインでの手続きができません。

  • 年金の受取口座に「公金受取口座」以外を指定する場合
  • 配偶者が別居中、事実婚、または年収850万円以上の場合
  • 別居している18歳以下(障害がある場合は20歳未満)の子どもがいる場合
  • 住民票の住所と異なる場所へ通知書などの郵送を希望する場合
  • 成年後見人などが本人に代わって手続きをする場合
  • すでに他の公的年金を受給中の場合
  • 年金の「繰上げ請求」を希望する場合
  • 年金の「繰下げ請求」を希望する場合

これらの条件に当てはまる場合は、これまで通り紙の請求書で手続きを行う必要があります。提出は、年金事務所や街角の年金相談センターの窓口、または郵送にて行います。

老齢年金請求書の電子申請が可能な期間は、受給権が発生する誕生日の前日から10カ月後の日までと定められています。

紙の請求書を提出する場合に明確な期限はありませんが、年金の支給を受ける権利には「5年の時効」があることを忘れないようにしましょう。

6. まとめにかえて:制度を「知っている」から「行動する」へ

世論調査のデータが示すように、年金制度の仕組み自体は理解していても、具体的な受給手続きの準備まで進んでいる方は限られています。しかし、どれほど正しい知識があっても、「年金請求書」を提出しない限り、受給がスタートすることはありません。

とくに2026年に65歳の節目を迎える昭和36年(1961年)生まれの方は、ご自身の誕生日の3カ月前(または誕生月初旬)に届く書類を漏れなくチェックし、速やかに手続きを進める必要があります。

年金の請求には「5年の時効」も定められています。日本年金機構からの書類を「後で読もう」と放置せず、届いたら早めに開封して提出準備を進めることが、受給漏れを防ぎ、安心できるセカンドライフをスタートさせるための最も確実な一歩となるでしょう。

参考資料

マネー編集部年金班