厚生労働省より2026年度の年金額改定が公表され、障害基礎年金月額は1級が8万8260円、2級が7万608円になります。障害年金受給者の中には「障害年金はいつまでもらえるの?」「65歳になったら老齢年金も併せてもらえるの?」などの疑問を感じている人もいるでしょう。

社会保険労務士として年金相談を行っている筆者が、障害年金制度の基本から併給ルール「損しない選択」の考え方までわかりやすく解説します。

1. 障害年金、3つの公的年金「1人1年金」の原則

「1人1年金」の原則とは、支給事由の異なる複数の年金受給権を持つ場合、1つの年金しか受給できないというものです。たとえば、障害年金と遺族年金の受給権を持つ場合、どちらか一方を選択して受給することになります。選択しなかった方の年金は支給停止となり、支給停止分は受け取れません。

公的年金は、支給事由によって老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金)と障害年金(障害基礎年金や障害厚生年金)、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)の3種類に大別されます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権を持つ場合、支給事由が同じであるため、両方を同時に受け取れます。基礎年金と厚生年金は年金制度(国民年金や厚生年金)の加入状況によって異なります。

「1人1年金」のイメージ1/4

1人1年金が原則です

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」

2. 障害年金、併給ルール「障害年金と老齢年金」どちらを選択するのがお得?

支給事由の異なる複数の年金受給権を持つときは「1人1年金」が大原則ですが、65歳以上の人に限り特例的に併給可能です。ただし、受給権を持つ年金の種類によって受給方法は異なります。障害年金の併給について紹介します。

2.1 老齢年金との併給

65歳以上で障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)と老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給権を持つ場合、次の3パターンから1つを選択して年金を受給します。

  • 障害基礎年金と障害厚生年金
  • 障害基礎年金と老齢厚生年金
  • 老齢基礎年金や老齢厚生年金

つまり、65歳以上になると支給事由の異なる「障害基礎年金と老齢厚生年金」という組み合わせを選択できることになります。

老齢年金との併給イメージ2/4

2.老齢給付と障害給付

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」

2.2 遺族年金との併給

65歳以上で障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)と遺族厚生年金の受給権を持つ場合は、次の2パターンのどちらかを選択できます。

  • 障害基礎年金と障害厚生年金
  • 障害基礎年金と遺族厚生年金

遺族年金との併給イメージ3/4

3.障害給付と遺族給付

出所:日本年金機構「年金の併給または選択」

ここまで、複数の年金受給権を持つときの「1人1年金」の原則と、例外的な「65歳以上の障害年金の併給ルール」について解説しました。次章では、複数の年金受給権を持つときの選択手続きとお得な選択方法を紹介します。

3. 障害年金、いつ・どうやって選ぶ?「年金請求時」の選択手続き

複数の年金受給権を持つときは、後から受給権が発生した年金の請求手続き時に受給する年金の選択が必要です。

それぞれの年金額や課税額などを考慮してどの年金を選択するかを決めます。次のケースを例に、手続きの流れを見ていきましょう。

  • 障害基礎・厚生年金の受給者
  • 63歳で「特別支給の老齢厚生年金」の受給権発生
  • 65歳で老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権発生

63歳になったら、特別支給の老齢厚生年金の請求手続きを行います。同時に、特別支給の老齢厚生年金または障害基礎・厚生年金のどちらかを選択し、「年金受給権選択申出書」を日本年金機構に提出します。

65歳時に、「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」を提出するとともに、「老齢年金との併給」で解説した3パターンから1つを選択して、選択申出書を提出します。

郵送でも手続き可能ですが、年金額などを比較・検討するために年金事務所で相談・手続きすることをおすすめします。

4. 障害年金、年金受給「65歳以上」で損しない選び方《社労士が解説》

65歳以上で障害年金と老齢年金の受給権を持つ場合「損しない選択」の考え方を紹介します。

4.1 障害基礎年金と老齢基礎年金の選択

障害基礎年金と老齢基礎年金の両方の受給権を持つ場合、障害基礎年金を選択するのが一般的です。次の通り、障害基礎年金の方が年金額が高くなるケースが多いからです。年金額は1956年4月2日以後生まれの人の2026年度の年金月額です。

  • 老齢基礎年金:満額(40年間保険料納付した場合)は7万608円
  • 障害基礎年金1級:8万8260円(2級の1.25倍)
  • 障害基礎年金2級:7万608円

年金保険料の未納などにより老齢基礎年金が満額を下回る場合、障害基礎年金の方が年金額は多くなります。ただし、老齢基礎年金に振替加算や付加年金が加算されて年金額が83万1700円を超える場合、障害基礎年金2級の方が年金額は少なくなるので注意しましょう。

障害年金の受給額イメージ4/4

障害基礎年金 ・ 障害厚生年金 の 等級 と 年金額

出所:日本年金機構「障害年金ガイド令和7年度版」

4.2 障害厚生年金と老齢厚生年金の選択

障害厚生年金と老齢厚生年金の両方の受給権を持つ場合、年金事務所などで具体的な年金額を確認し選択する年金を決めましょう。障害認定日以降の厚生年金加入状況によって、障害厚生年金と老齢厚生年金のどちらが多いかが変わってくるからです。

障害厚生年金は障害認定日までの厚生年金加入実績を基に年金額を計算し、老齢厚生年金は65歳までの加入実績を基に計算します。

4.3 障害年金と老齢年金が同額の場合

障害基礎年金と老齢基礎年金、障害厚生年金と老齢厚生年金の金額がどちらも同じ場合、障害年金を選択するのが一般的です。障害年金は非課税であるのに対し、老齢年金は課税対象となるからです。

老齢年金の方が受給額が多いが所得税などが発生する場合、どちらが得かを計算することが難しいケースもあります。この場合、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

5. おわりに

公的年金には「1人1年金」の原則があり、障害年金・老齢年金・遺族年金を原則同時には受給できません。ただし、65歳以上になると例外的に併給や選択が可能となり、どの年金を選ぶかで受給額や手取りが変わります。

特に、障害年金は非課税である点が大きな特徴で、老齢年金より有利になるケースも少なくありません。一方で、加入状況や加算の有無によっては判断が難しい場合もあります。

社会保険労務士としての実務経験からも、迷ったときは年金事務所や専門家に相談し、自分にとって最も有利な選択をすることが大切だと言えるでしょう。

参考資料

西岡 秀泰