「相手を無視する」という意味の「シカト」。最近ではいじめのニュースなど、あまりよくないイメージの言葉として耳にする機会も多いかもしれません。若者の間でよく使われているイメージもありますが、一体この「シカト」という言葉は、どのように生まれた言葉なのでしょうか?
無視する・無視されるときに使う「シカト」
「シカトされて傷ついた」
「あの人に関わると面倒だからシカトしよう」
「Aさんから連絡来たけどシカトしてるんだ~」
相手を無視するときに「シカトする」、相手から無視されることを「シカトされる」。どちらにせよポジティブな意味として使うことはあまりなさそうです。できれば「シカトする」「シカトされる」どちらの場面にも関わりたくないものですね。
実は「シカト」という言葉自体は、昭和30年代以降に大きく流行ったといわれ、そのため世代によっては「若者言葉」どころか「死語」扱いされている場合もあるようです。
「シカト」の語源は?
そのシカトの語源は「花札」からきています。花札とは日本のかるたの一種で、1セット48枚のカードを使ったカードゲームです。「かるたは子どものころによく遊んだけど、花札はよくわからない……」という人も多いかもしれません。ただ、そうした人でも、2人で遊ぶ花札の代表的なゲームである「こいこい」や、役の一つである「猪鹿蝶(いのしかちょう)」といった言葉は何となく聞いたことがあるのではないでしょうか。
花札の札は1月から12月まで4枚ずつあり、それぞれに四季折々の植物や動物などが描かれています。各月の4枚の札の中には、「植物のみ」「植物と短冊」などそれぞれ3、4種類がありますが、特に点数や役の高い札として、たとえば1月は「松に鶴」、2月は「梅にうぐいす」、3月は「桜に幕」……などがあります。
そして10月の絵柄としては、紅葉の下に鹿が描かれています。その鹿は正面を向いておらず、振り向いて自分の後ろにある紅葉を見ているようです。その姿はまるでぷいっとそっぽを向いているように見えます。この10月の札は「鹿の十(しかのとお)」などと呼ばれます。
そっぽをむいた「鹿の十(しかのとお)」、それが「鹿十(しかとお)」と省略され、やがて「シカト」へと変化していったとのこと。そこから、「無視すること」や「そっぽを向くこと」を指すようになったというのが「シカト」の語源といわれています。
ちなみに、「そっぽを向く」の「そっぽ」って何? という疑問もあるかもしれません。正確な語源はわかっていないのですが、有力な説として、よその方向という意味の「外方(そとほう)」が「そっぽう」→「そっぽ」となったという説があります。
学校でのシカトが「陰湿化」している!?
先にも触れた通り、シカトといえば「若者世代が使う言葉」というイメージで、最近使われ始めたと思う人もいるようですが、語源が意外と古いのもおもしろいところです。
ついでにいえば、昨今では、学校でのシカトの傾向も変化しているようです。たとえば現実でのシカトに加えて、「ネットでのシカト」。SNSなどコミュニケーションアプリ内における「既読スルー」がその代表的な例です。最初のうちは数人でトークグループをつくり、仲よくやりとりしているのですが、シカトの「ターゲット」の人間が何か発言しても誰も返信しなかったり、裏で「ターゲット」を除いた別のグループをつくって悪口を言ったりするとのこと。
こうしたSNS上のシカトは、リアルのシカトに比べて、特に部外者からはとても発見しにくいといいます。学校などでは、この対応策として、「ネットいじめ」だと判断した場合に、第三者が匿名で通報できるアプリを導入しているところもあるそうです。
このように、残念ながらますます潜伏化・巧妙化してしまっている「現代のシカト」ですが、そうしたことが発見しやすい、声を上げやすい環境を周りがつくることも大切かもしれませんね。
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