精神障害者保健福祉手帳の所持者が5年連続で増加し、154万人を超えています。
精神障害者保健福祉手帳を受けられるのは、精神障害を抱えており、一定の状態にある方が対象です。
手帳の発行を受けることで、公共料金の割引や所得税の控除といったさまざまな支援を受けられます。
本記事では、精神障害者保健福祉手帳を受けられる方の要件や支援の種類について解説するとともに、近年の就労状況についても紹介していきます。
1. 精神障害者保健福祉手帳とは
「精神障害者保健福祉手帳」は、発達障害を含む精神疾患によって、長期にわたって日常生活や社会生活が制限される方に交付される手帳です。
障害を持っていても自立した生活を送り、社会参加がしやすくなることを目的としており、手帳を持っていればさまざまな支援やサービスを受けられます。
1.1 対象となる方
精神障害者保健福祉手帳の交付対象になるのは、心身の状況により社会参加に一定の制限が生じている方で、対象となるのは全ての精神障害です。
例えば、以下のようなものが含まれます。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
- そのほかの精神疾患
ただし、知的障害があっても上記の精神障害状態にない方は、療育手帳制度の対象となります。
なお、発達障害と知的障害のいずれにも該当する場合は、両方の手帳を受けることが可能です。
1.2 1~3級の等級がある
精神障害者保健福祉手帳は、自立度や援助の必要性などを基準に1級から3級までに分かれており、1級が最も重度となっています。
- 1級:精神障害が非常に重く、常に誰かの援助がなければ身の回りのことができない状態
- 2級:常に誰かの介助が必要なわけではないが、一人で生活するのが非常に困難な状態
- 3級:日常生活はほぼ一人でこなせるが、対人関係や仕事などにおいて配慮が必要な状態
等級は医師の診断書をもとに判定され、更新のタイミングでの状態により重くなったり軽くなったりします。
つまり、これまで3級だった方が2級になったり、反対に2級だった方が3級になったりするというように、変動するということです。
2. 精神障害者保健福祉手帳を持っていると受けられる支援
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、幅広い支援を受けられます。
支援には、全国一律で受けられるものと自治体や事業所によっては受けられるものがあります。
2.1 【全国一律の支援】
- 公共料金の割引
- NHK受信料の減免
- 所得税、住民税の控除
- 相続税の控除
- 自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級の方)
- 生活福祉資金の貸付
- 障害者職場適応訓練の実施 など
2.2 【自治体や事業所によっては受けられる支援】
- 鉄道、バス、タクシーなどの運賃割引
- 携帯電話料金の割引
- 上下水道料金の割引
- 心身障害者医療費助成
- 公共施設の入場料等の割引
- 福祉手当
- 通所交通費の助成
- 軽自動車税の減免
- 公営住宅の優先入居
お住まいの自治体によって、独自の支援や手当があるかもしれないため、詳しい支援内容は公式サイトなどで確認してください。
3. 精神障害者保健福祉手帳の所持者は5年連続増加で154万人超に
厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況・精神保健福祉関係」によると、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方は、2024年度において154万7433人に上ります。
交付人数は2020年から2024年の5年間、連続して増加しています。
増加率が最も高いのは3級で、2024年度は前年よりも+10.0%と大きく増加しています。
また、最も発行人数が多いのは2級の89万7292人で、精神障害者保健福祉手帳を持っている方の約58%を占めています。
4. 障害者の雇用率は過去最高を更新
厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業における障害者の雇用数・実雇用率はともに過去最高を更新しています。
4.1 【精神障害者の雇用者数の推移】
- 令和7年度:16万9000人
- 令和6年度:15万1000人
- 令和5年度:13万人
- 令和4年度:11万人
- 令和3年度:9万8000人
精神障害者の雇用率が上昇傾向にある理由として、法定雇用率が段階的に引き上げられたことにより、企業が積極的に精神障害者を雇用する必要が出てきたことが挙げられます。
法定雇用率は令和5年度には2.3%であったものが、令和6年4月に2.5%に引き上げられ、さらに令和8年7月には2.7%に引き上げられる予定です。
国の施策や企業努力により、今後も増加することが予想されます。
ほかにも、働き方の多様化も雇用率の上昇に影響を与えているといえます。
テレワークが普及したことで在宅勤務が可能となり、対人関係に不安のある方が働きやすい環境が整備されている傾向にあります。
5. まとめ
精神障害者保健福祉手帳の発行対象となるのは、精神疾患により長期にわたって日常生活や社会生活が制限される方です。
手帳があることで、国や自治体からさまざまな支援を受けられます。
だれしも絶対に精神疾患にはならないとは言い切れません。
精神障害を抱え生活が制限されるときが来たときのために、精神障害者保健福祉手帳の発行という方法があることを覚えておくと良いでしょう。
参考資料
- 国立精神・神経医療研究センター「障害者手帳・障害年金」
- 厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況・精神保健福祉関係」
- 厚生労働省「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」
- 厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
木内 菜穂子