ソニーは、2021年度以降の需要見込みに対応するため、イメージセンサーの新工場(増設棟)建設を計画していることを明らかにした。スマートフォン向けを中心に需要増加の確度が高まってきたためで、19年度中に建設を決定した場合、20年度までの中期経営計画期間中の設備投資額を1000億円増額する可能性がある。5月21日に開催予定の「Sony IR Day 2019」でさらに詳細に説明する。

決算会見で新工場建設に言及

 同社は、18~20年度の中期経営期間中に全社ベースで約1.1兆円の設備投資を実行し、このうちイメージセンサーの増産に約6000億円を投資する方針を表明済み。これにより17年度末に300mmウエハー換算で月産10万枚だったイメージセンサーの生産能力を、20年度に13万枚まで増やすことにしている。

 これに加え、先ごろ開催した18年度の決算会見でイメージセンサー新工場の可能性に言及し、19年度中に建設を決定する場合は、全社ベースの設備投資額を1000億円上乗せして1.2兆円に、半導体設備投資を3年で約7000億円へ引き上げることを示唆した。「イメージセンサー需要は、スマホの台数成長が牽引する時代から、大判化と多眼化による員数増大に変化してきた。新棟の可能性は常に検討を重ねてきている。需要を注意深く見てきたが、『意外と強い』というのが確実になってきた」(代表執行役専務CFOの十時裕樹氏)

19年度の設備投資は倍増の3000億円

 19年度の半導体設備投資額は前年度比2.1倍の3000億円を計画し、うちイメージセンサーに2800億円(18年度実績は1289億円)を充てる予定で、これにより19年度末の月産能力を10.7万枚(アウトプットベース)まで高める計画だ。

 十時氏は「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野などで安定したキャッシュフローを継続して出せる状況にあり、22年以降の半導体への投資をまかなえる」と述べた。また一方で、22年度以降はイメージセンサーの需要増加が緩やかになり、設備投資額も減少するとの見通しを示した。

イメージセンサーは18%増収を計画

 19年度の半導体事業は、前年度比13%増の売上高9900億円を計画している。主にモバイル向けイメージセンサーの増加を見込む。減価償却費および研究開発費の増加で、営業利益は同1%増の1450億円にとどまる見通し。

 19年度の売上高見通し9900億円のうち、イメージセンサーは前年度比18%増の8400億円を計画している。噂されるアップルiPhone 19年モデルの3眼化などを中心に、モバイル機器向けイメージセンサーの販売数量が大幅に伸びる見通し。

 十時CFOは19年度の見通しを「1~3月期はフル稼働には足りなかったが、4~6月期はフル稼働だ。上期は大丈夫だが、下期はまだ慎重に見ている。取引先が多様化していることをポジティブに受け止めており、顧客1社の落ち込みが大きく影響しない」と述べた。

 一方、2桁の増収予測に対して営業利益が伸びない点については「減価償却費および研究開発費が引き続き増加する。減価償却、研究開発、在庫から来る操業益の順にマイナス影響が大きく、為替のマイナス影響は50億円程度にしかならない」と説明した。

18年度業績は実質的に増収増益

 18年度の半導体事業は、売上高が前年度比3%増の8793億円(うちイメージセンサーは同10%増の7114億円)、営業利益は同12%減の1439億円だった。アップルショックに揺れた1~3月期も黒字を確保した。通期では減益だったが、17年度はカメラモジュール子会社の売却や熊本地震の保険金受取などで436億円の一時的利益があったため、これらの影響を除くと18年度は実質的に235億円の増益だったことになる。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏