衆議院の解散総選挙が近づき、各政党から次々と公約が発表されています。

減税や社会保障制度の見直しなど、私たちの生活に関わる重要なテーマが議論されていますが、これらの政策を判断する上で欠かせないのが、日本の財政状況の理解です。

この記事では、国の財政、特に「国の借金」が現在どのような状況にあるのかを、基本的なポイントから解説していきます。

1. 国の財政とは?家計に例えてわかりやすく解説

私たちの暮らしは、毎月の「収入」と「支出」のバランスの上に成り立っています。

住宅ローンや教育ローンなど、大きな出費のために借入れをすることもあります。

実は、国の運営も個人の家計と似ています。

国は税金などを「収入」として、年金、医療、公共施設の整備といった国民のためのサービスに「支出」しています。この一連のお金の流れを「財政」と呼びます。

経済対策や社会インフラの維持など、必要な政策を実行する際、税収だけでは資金が不足することがあります。

その場合、国は「国債」を発行して市場からお金を借り、財源を確保します。

しかし、この国の借金は増加の一途をたどっています。次の章で、その具体的な規模を確認してみましょう。

2. 日本の借金総額はいくら?普通国債残高の推移

普通国債残高の推移1/6

普通国債残高の推移

出所:財務省「普通国債残高」

日本の「国の借金」にあたる公債残高は、2025年度末には約1129兆円に達する見込みです。

普通国債残高の推移を見ると、その増加のペースがわかります。

  • 1970年:3兆5000億円
  • 1980年:71兆円
  • 1990年:166兆円
  • 2000年:368兆円
  • 2005年:527兆円
  • 2010年:594兆円
  • 2015年:805兆円
  • 2020年:947兆円
  • 2021年:991兆円
  • 2022年:1027兆円
  • 2023年:1054兆円
  • 2024年:1104兆円
  • 2025年:1129兆円

このデータから、国の借金が年々拡大していることが明確に見て取れます。

収入に対して支出が上回る状態が続いていることが、借金が増加する直接的な原因です。

家計の立て直しと同様に、国もまずは支出の内容を精査する必要があります。

では、国の予算は具体的にどのようなことに使われているのでしょうか。

3. 国の支出(歳出)の内訳は?何にお金が使われているのか

2025年度における国の一般会計歳出(支出)は、総額約115兆2000億円にのぼります。

これは、国が1年間で活動するために必要な最低限の経費です。

支出の大部分、約4分の3を占めるのは特定の項目です。

【予算:115兆1978億円】

  • 社会保障関係費:38兆2938億円(33.2%)
  • 防衛関係費:8兆6691億円(7.5%)
  • 公共事業関係費:6兆878億円(5.3%)
  • 文教及び化学振興費:5兆6560億円(4.9%)
  • 経済協力費:5050億円(0.4%)
  • その他:8兆8976億円(7.8%)
  • 地方交付税交付金等:18兆8728億円(16.4%)
  • 国債費:28兆2179億円(24.5%)

内訳を見ると、国民の医療や年金などを支える「社会保障関係費」が全体の3分の1以上を占め、最も大きな割合となっています。

次に大きいのが、過去の借金の返済や利払いに充てられる「国債費」で、全体の約4分の1に相当する24.5%です。

続いて、国の収入面に目を向けてみましょう。

4. 国の収入(歳入)の内訳は?税収と借金の割合

先述した約115兆2000億円の歳出を賄うための歳入(収入)は、主に税収と国債発行(借金)によって成り立っています。

具体的な内訳は以下の通りです。

【2025年度予算の内訳:一般会計歳入総額115兆2000億円】

  • 所得税:19.7%(22兆7000億円)
  • 法人税:16.7%(19兆2000億円)
  • 消費税:21.6%(24兆9000億円)
  • その他税収:9.5%(11兆円)
  • その他収入:7.6%(8兆7000億円)
  • 公債金(借金):24.9%(28兆6000億円)

この構成を見ると、歳入全体のうち税収などでカバーできているのは約75%であり、残りの約25%を新たな借金である公債金に頼っている実態が浮かび上がります。

この借金は、将来の世代が納める税金などを財源として返済していかなければなりません。

5. なぜ国の借金は増え続けるのか?歳入と歳出の変遷

国の借金が増加した背景には、1990年代から続く長期的な経済の停滞があります。

この「失われた30年」と呼ばれる期間においても、高齢化の進展などにより社会保障費は増加し続け、歳出全体の拡大を招きました。

歳入と歳出(1990年度→2025年度)4/6

歳入と歳出(1990年度→2025年度)

出所:財務省「これからの日本のために財政を考える」

1990年度と2025年度の歳入・歳出を比較すると、その変化がよくわかります。

5.1 歳出

1990年度 66兆2000億円

  • 公共事業、教育、防衛など:25兆1000億円
  • 社会保障:11兆6000億円
  • 地方交付税交付金等:15兆3000億円
  • 国債費(過去の借金返済と利息):14兆3000億円

2025年度 115兆2000億円

  • 公共事業、教育、防衛など:29兆8000億円
  • 社会保障:38兆3000億円
  • 地方交付税交付金等:18兆9000億円
  • 国債費(過去の借金返済と利息):28兆2000億円

5.2 歳入

1990年度:66兆2000億円

  • 税収などの収入:60兆6000億円
  • うち税収:58兆円
  • 公債金(借金):5兆6000億円

2025年度 115兆2000億円

  • 税収などの収入:86兆6000億円
  • うち税収:77兆8000億円
  • 公債金(借金):28兆6000億円

歳出で特に増加が著しいのは「社会保障費」と「国債費」です。

一方で税収は思うように伸びず、不足分を国債発行、つまり借金で賄う構造が定着してしまいました。

近年では、新型コロナウイルス対策や物価高への経済対策で大規模な予算が組まれたことも、歳出拡大に拍車をかけています。

このような収支の不均衡が続く中、日本は低金利時代を終えようとしています。金利の上昇は、借金の返済にどのような影響を与えるのでしょうか。

6. 金利上昇で国の借金返済は大丈夫?今後の財政への影響

これまで日本は長期間にわたる低金利政策のもと、巨額の国債を比較的安定して発行することができていました。

しかし、金融政策の転換により「金利のある世界」へと移行し、今後は金利が上昇していくと見られています。

もし金利が上昇すれば、国債の利払い負担が増加し、国の財政をさらに圧迫する可能性があります。

財政の自由度が低下するため、借金への依存を減らし、限られた財源をいかに有効活用するかが一層問われることになります。

令和8年度国債発行予定額5/6

令和8年度国債発行予定額

出所:財務省「令和8年度国債発行予定額」

ちなみに、2026年度に新たに発行が予定されている国債の額は約29兆6000億円であり、依然として大規模な借金に頼らざるを得ない状況は変わっていません。

7. 2026年衆議院選挙「税と社会保障」に関する公約

2026年の衆議院選挙は、1月27日に公示され、2月8日に投開票が行われます。本記事は公示翌日の1月28日時点の情報をもとに、各党の公約を整理します。

7.1 主要各党「税と社会保障」に関する公約のポイント

税と社会保障に関する各党の公約6/6

税と社会保障に関する各党の公約

出所:各党の公約をもとにLIMO編集部作成

  • 自民党:所得税減税やガソリン暫定税率の廃止を検討。食料品の消費税率を一定期間ゼロとする案も含め、負担軽減策を掲げる
  • 日本維新の会:食料品消費税の2年間ゼロ税率化や、社会保険料負担の引き下げを柱とする社会保障改革を提案
  • 中道改革連合:給付付き税額控除の創設や「年収130万円の壁」の解消、食料品消費税の恒久的なゼロ税率化を掲げる
  • 国民民主党:ガソリン暫定税率の廃止や「年収103万円の壁」の引き上げなど、手取り増加を重視した政策を打ち出す

このように、各党の公約を整理すると、消費税や社会保険料など「税と社会保障」に関する項目が共通して挙げられていることがわかります。

物価高騰が家計に与える影響が続くなかで、負担のあり方や支援策について、各党がそれぞれの立場から対応を示しています。

これらの分野は、有権者の生活に直結するテーマであり、今回の衆議院選挙においても注目される論点の一つといえるでしょう。

8. まとめ

日本の財政は、歳入と歳出のバランスが崩れたまま、借金に頼る構造が続いています。

少子高齢化の進行は、今後も社会保障費の増大を招き、財政状況をさらに厳しくすることが予想されます。

間もなく行われる選挙では、各党が財政再建や社会保障に関する様々な公約を掲げています。日本の財政の現状を踏まえ、それぞれの政策を慎重に検討することが重要です。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

和田 直子