最近では、禁煙が政策で推し進められているなか、街中で「加熱式タバコ」や「電子タバコ」といった、従来とは異なるタバコを吸っている人を見かけることも多くなりました。こうした新型タバコは「紙巻きタバコよりも害が少ない」「禁煙に役立つ」といったうたい文句でも売り出されていますが、まだ歴史が浅いことから、現在もさまざまな調査が進められているところです。

この記事では、新型タバコについての議論やこれまでの経過を簡単にまとめてみます。

そもそも電子タバコ・加熱式タバコって?

加熱式タバコは、タバコの葉を加熱して発生した蒸気を吸い込むものです。「iQOS(アイコス)」や「グロー」「プルーム・テック」という商品名を耳にすることも増えているのではないでしょうか。一方、電子タバコはVAPE(ベイプ)とも言い、リキッドと呼ばれる香り付きの液体を加熱して霧状にしたものを吸う器具です。これらは混同されることも多いですが、まったく別の仕組みのものです。

電子タバコと加熱式タバコの一番の違いは、「タバコの葉を使っているか否か」という点です。アイコスやブルーム・テックといった「加熱式タバコ」はタバコの葉を加熱するものなので、従来の紙巻タバコと同じくニコチンやタールも含まれています。ただし、タバコの葉を燃やさずに加熱するため、タールが紙巻きタバコと比べて9割以上削減されていると言われています。また、副流煙がほとんど出ないため、受動喫煙による健康被害が紙巻きタバコより少ないとされ、禁煙とされる場所でも吸うことができる場合もあります。

電子タバコは、煙のように見えるミストを吸い込んで、疑似的にタバコを吸っている感覚を味わうものです。欧米では電子タバコのリキッドにニコチンが含まれている場合がありますが、日本では薬機法(旧薬事法)上の決まりでリキッドにニコチンを含ませることができないため、基本的にニコチンやタールが含まれていません。そのため、「禁煙促進に有用だ」という主張もあります。

増税が続くなか、気になるお値段は?

2018年の10月の税制改正によって、「加熱式たばこ」の区分が新たに設けられました(以前は「パイプたばこ」に区分されており、税金自体はかかっていました)。

現在、従来の紙巻きタバコの税金が60%程度であるのに対して、加熱式タバコにかかる税金は、タバコの葉の重量に応じて15%〜50%程度。節約になるという理由で加熱式タバコに切り替えた喫煙者もいるようですが、加熱式たばこの税率は2022年まで段階的に増やされ、紙巻きたばこの7~8割程度まで引き上げられることになっています。

一方、電子タバコにはニコチンが含まれていないため、日本では現状、たばこ税はかけられていません。従来の紙巻きタバコから加熱式タバコに切り替えた喫煙者も、今後の加熱式タバコ増税に伴い、節約や減煙・禁煙のため、電子タバコに移行していく可能性も高いのではないかと考えられているようです。

無害というわけではない

実際に、日本やイギリスでも、ここ数年で電子タバコの利用者が急増しています。イギリスの禁煙推進団体ASH(アクション・オン・スモーキング・アンド・ヘルス)の調査によると、電子タバコ利用者が紙巻きタバコから電子タバコに切り替えた主な理由として、禁煙が挙げられてもいます。

しかしながら、電子タバコも加熱式タバコも、従来のタバコより害が少ないとされていることに疑問を投げかけるような研究結果もあります。日本呼吸器学会では、「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある」という見解を示しており、2018年8月にはイギリスの研究チームが「電子タバコの蒸気が肺の免疫細胞を壊す可能性がある」という研究結果を発表しています。

また、ほとんど副流煙の出ない加熱式タバコも、喫煙者が吐き出した息に有害物質が含まれていると言われます。そのため、「受動喫煙の可能性は十分にあり、紙巻きタバコと同様に公共の場で吸うべきではない」と考える人も多いようです。

新型タバコへの意見

電子タバコにおいても、ニコチンやタールは入っていなくとも、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドといった有害物質が検出されています。また、非喫煙者からは「水蒸気がたくさん出ているのも、タバコの煙のようで迷惑」といった意見もあり、リキッドに香りがつけられているため「結局、臭いので意味がない」と嫌がる人も多いようです。

電子タバコや加熱式タバコを吸う人は、「周りに迷惑がかからないように、紙巻きをやめて電子タバコ・加熱式タバコに変えた」という人も多いようですが、そういった意見に対して、

「電子タバコだからいいだろう、という態度はどうなんだ」
「どんな害があるかまだわからないものを吸わないでほしい」

といった厳しい声もあります。

新型タバコの扱い方はどうなる?

電子タバコも加熱式タバコも、従来のタバコとは異なる構造のため、今のところはいわゆるタバコとは別ものとして扱われることも多いようです。しかし、本人や周りへの影響が紙巻きタバコより少ないとはいえ、害がまったくないとは言えないということが少しずつ判明してきてもいます。

タバコに関してはこれまでさまざまな議論がなされ、公共の空間でタバコを吸うことは制限されてきています。新型タバコについてはまだわからないことが多いものの、今後はそうした対応が電子タバコや加熱式タバコにも及んでいくのかもしれません。

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