「メインバンク」という言葉。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。起業家・経営者にとっては、パートナーともいえる重要な存在です。改めて、メインバンクについて考えてみましょう。
そもそもメインバンクって何?
メインバンクとは、会社として一番親密に付き合っている金融機関のことです。メインバンクについて、起業した当初はあまり深く考えていないかもしれませんが、会社が成長してステージが上がるに連れ、考えさせられる段階が必ず訪れます。
メインバンクをつくると何がいいのか
メインバンクがあれば、経営についての課題やその解決方法について親身に相談に乗ってもらうことができます。中でも重要なのが、旺盛な資金ニーズへの対応です。
たとえば、日本政策金融公庫からの創業融資や、保証協会つきの制度融資を借りたあと、さらにプロパー融資(保証協会などの保証がつかない融資)を借りたいとき、まずはメインバンクを頼るというのが業界慣行となっています。
さらに、経営が苦しいとき、助けてくれるのがメインバンクだともいえます。会社にとって、欠かせない協力者といっても過言ではありません。
メインバンクのつくりかた
ところが、ある銀行をメインバンクだと思っていたのに、いざ聞いてみると相手にはメインバンクという認識がなかったということはよくあります。これは金融機関により、また支店長・担当者によりメインバンクの考え方は曖昧だからです。
ではどのように付き合えばメインバンクと思ってもらえるのでしょうか。
1. 売上の入金がある
売上を入金していると金融機関の大半はメインバンクという認識を持ってくれます。金融機関は通帳の内容をいつでも確認できるので、売上金を入れるということは、金融機関にとって経営の実態をいち早く把握することが可能ということになります。
逆に会社としては手の内を見せるようなものです。そこまで情報を開示してくれるのだったらメインバンクとして支えましょうと金融機関は考えます。
2. 融資残高が一番ある
複数の金融機関から融資を受けるというのはよくあることです。その中で一番融資残高が多い場合、メインバンクと思ってくれることが多いです。
3. 決済を多く行っている
金融機関にとって収入源は金利と手数料です。仕入代金や経費、給料など各種支払いで振込を行うと金融機関には手数料が入ります。手数料が多ければ金融機関の売上に貢献していることになるので、メインバンクだと考えてくれる場合もあります。
4. 預金が多くある
金融機関は預かったお金を融資し、金利収入を得るビジネスです。そのため、預金を多く集めてくる必要があります。預金額が多いということは、金融ビジネスの根本を支えてくれていると同時に、いざというときに預金を押さえられるという考え方にもつながります。いくらあったらいいかは金融機関により異なります。
これらを組み合わせる
どこまでやったらメインバンクと思ってもらえるかは金融機関により異なりますが、上記のような取引を多く行うと、メインバンクに近づくことは間違いありません。金融機関の担当者とよくコミュニケーションをとり、好みを聞いてみるのが一番です。
もちろん取引金融機関が1つしかなく、全ての取引を集中している場合は、その金融機関がメインバンクだと認識してくれることでしょう。
メインバンクは1つだけ?
メインバンクは1つに限られているわけではありません。会社が大きくなれば複数あることもよくあります。複数のメインバンクを持てば、案件により協力してもらえる可能性も拡がるというメリットがあります。会社の成長ステージに合わせてメインバンクを考えていきましょう。
起業家にとって金融機関との付き合い方はとても重要です。どの金融機関をメインバンクにするかはしっかりと考えたいところです。金融機関との付き合い方についての詳しいことは、顧問税理士や中小企業診断士などに相談してみてはいかがでしょうか。
中野 裕哲