年末年始や新年会など親戚や家族が集まる機会が増えるこの時期。ふと「実家のこれから」や「もしものとき」を考えた方もいるのではないでしょうか。「うちは資産家じゃないから相続争いとは無縁」と感じている方ほど、実は注意が必要かもしれません。

筆者はFPとして多くの暮らしとお金の相談を受けてきましたが、実際に揉めているのはごく一般的な家庭であるケースが少なくありません。今回は司法統計をもとに、相続トラブルが起きやすい家庭の特徴と、その背景、今からできる備えについて解説します。

1. 【相続】遺産分割事件の約8割が「5000万円以下」“ふつうの家族”が”争族”に発展

相続トラブル多発!遺産価額ボリュームゾーンはどこだ?1/5

相続トラブル多発!遺産価額ボリュームゾーンはどこだ?

出所:最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)第 52 表遺産分割事件のうち認容・ を除く)―遺産の内容別」をもとにLIMO編集部作成

「相続で揉めるのは、遺産が多い家庭だけ」という印象を持つ方も少なくないかもしれません。ところが、最高裁判所の司法統計年報を見ると、遺産分割事件のおよそ8割は、遺産価額5000万円以下の層で起きています。

中でも目を引くのが、遺産額1000万円以下のケースです。全体の約35%(2810件)を占めており、裁判にまで発展した相続トラブルの3件に1件以上が、決して特別な資産を持つ家庭ではないことが分かります。

相続でもめる背景には、財産の金額そのものより、「どう分けるか」という難しさがあります。家族それぞれの受け止め方や認識の違いが、話し合いを複雑にしてしまうのです。

1.1 「遺産1000万円以下」の争いが3割超。「代償金」を支払うケースとは

とくに多いのが、不動産を引き継ぐ人が、他の相続人に代償金を支払うケースです。遺産額1000万円以下でも、約6割の事件で代償金が定められており、現金が十分にない中で、自身の貯蓄を取り崩さざるを得ない状況に直面する家庭も少なくありません。

このように、不動産など「分けにくい財産」が中心になると、負担の偏りが生じやすく、感情的な行き違いも重なって、話し合いが長引く要因となります。

2. 【相続】「地方と大都市圏」相続トラブルが多いのはどちら?

相続トラブルが多い地域トップ53/5

相続トラブルが多い地域トップ5

出所:最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)第 44 表 遺産分割事件数―終局区分別―家庭裁判所別」をもとにLIMO編集部作成

地域別に見ると、相続トラブルが多いのは東京、大阪、横浜、名古屋、さいたまといった大都市圏が上位を占めています。全国の遺産分割事件数は年間1万5000件以上にのぼり、その中でも東京は突出した件数となっています。

都市部では地価が高く、自宅の評価額が相対的に大きくなりやすい傾向があります。その結果、「遺産の大半が自宅」というケースも珍しくありません。現金のように分けにくい財産が中心になることで、不公平感や将来の住まいを巡る不安が生じ、話し合いが難航しやすくなります。

3. 【相続】トラブル終結までどれくらいかかる?「お金のことより感情面での衝突」で長引く?

家庭裁判所で手続きがはじまってから最終的に終結するまでの期間を審理期間と言います。遺産分割の争いは、感情面の衝突も重なりやすく、短期間で終わるとは限りません。

司法統計によると、遺産分割事件の約3分の1は解決までに1年以上を要しています。話し合いが長期化すると、不動産の名義変更や預貯金の解約・分配が進まず、相続人それぞれの生活にも影響が出ることがあります。

だからこそ、相続が発生してから慌てるのではなく、事前にルールや希望を整理しておくことが重要になります。

4. 【相続】知っておきたい基本ルール

相続とは、亡くなった人の財産や権利・義務を、残された家族などが引き継ぐ仕組みです。遺言書がない場合、民法で定められた法定相続分に従って分割が行われます。

配偶者は常に相続人となり、血族には順位があります。第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹です。例えば相続人である子が既に亡くなっている場合、孫が引き継ぐ「代襲相続」が適用されます。

相続では、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐ場合もあるため注意が必要です。一定期間内に手続きをすれば引き継がない(相続放棄する)選択も可能なので、早めの現状把握が欠かせません。

5. まとめにかえて

今回は、最新の司法統計をもとに、相続トラブルが実は身近な問題であることについて解説しました。統計を見ると、トラブルの多くは遺産額5000万円以下の一般的な家庭で起きています。さらに、都市部では不動産中心の相続になりやすく、分けにくさが争いの火種になりがちです。

相続トラブルは解決までに1年以上かかるケースも少なくなく、生活面への影響も無視できません。だからこそ、「うちは大丈夫」と思い込まず、元気なうちに家族で財産の内容や希望を共有しておくことが大切です。まずは相続の基本ルールを知ることから、円満な引き継ぎへの一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考資料

村岸 理美