令和8年6月30日、厚生労働省より「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」が公表されました。これによると、令和8年5月の正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍となり、前月と同水準にとどまっています。
働く環境がなかなか上向かず、物価の上昇も重なるなか、将来の家計に不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
止まらぬ物価上昇によって、手元にあるお金の価値が少しずつ目減りしていく現在。かつての「老後2000万円問題」が大きな話題となったひところよりも、さらに手厚く老後資金を準備していくことが求められる時代になりました。
とくに、単身でご自身の将来を支える「おひとりさま」にとって、現役時代からの計画的な資産形成は切実なテーマです。
今回は、金融メディアの編集者として日々公的データを見つめている筆者が、最新の統計データをもとにおひとりさまの貯蓄の実態を年代別にひも解いていきます。
一部の富裕層が数値を引き上げる「平均値」ではなく、よりみなさんの実感に近い「中央値」に注目しながら、一緒に私たちの現実的な立ち位置を確認していきましょう。
1. おひとりさまの貯蓄額、年代別の平均と中央値は?【30歳代~60歳代】
それでは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を基に、おひとりさまの年代別貯蓄額の最新データを確認していきましょう。
※補足:本調査における「金融資産」について
データ内にある「金融資産非保有」とは、運用や将来に備えて蓄えている資産がない状態を指します。日常的な出し入れや決済用に備えている預貯金(口座残高)は含まれていないため、必ずしも「貯金残高が完全にゼロ」という意味ではありません。
1.1 30歳代・おひとりさまの貯蓄額一覧|平均と中央値の実態
- 金融資産非保有:32.3%
- 100万円未満:14.2%
- 100~200万円未満:14.2%
- 200~300万円未満:4.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.8%
- 500~700万円未満:5.5%
- 700~1000万円未満:3.1%
- 1000~1500万円未満:5.5%
- 1500~2000万円未満:4.3%
- 2000~3000万円未満:2.5%
- 3000万円以上:3.4%
- 無回答:3.1%
◆平均と中央値
- 平均:501万円
- 中央値:100万円
30歳代おひとりさまの貯蓄額は、平均が501万円であるのに対し、中央値は100万円と、5倍もの差が見られます。
金融資産を保有していない層(32.3%)と100万円未満の層(14.2%)を合計すると、約半数が貯蓄100万円以下という結果です。
一方で、3000万円以上を保有する層も3.4%存在し、資産状況の二極化がはっきりと表れています。
1.2 40歳代・おひとりさまの貯蓄額一覧|平均と中央値の乖離
- 金融資産非保有:32.1%
- 100万円未満:15.1%
- 100~200万円未満:7.1%
- 200~300万円未満:5.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.2%
- 1500~2000万円未満:1.2%
- 2000~3000万円未満:2.8%
- 3000万円以上:9.9%
- 無回答:2.5%
◆平均と中央値
- 平均:859万円
- 中央値:100万円
40歳代になると、貯蓄額の平均は859万円に増加しますが、中央値は30歳代から変わらず100万円のままです。
これにより、平均値と中央値の差は8倍以上に拡大し、二極化がさらに進んでいることがうかがえます。
金融資産を持たない層・100万円未満の層を合わせると47.2%にのぼる一方、3000万円以上の資産を持つ層は9.9%と約1割に達しています。
1.3 50歳代・おひとりさまの貯蓄額一覧|平均と中央値から見る格差
- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
◆平均と中央値
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代の貯蓄額は、平均が999万円、中央値が120万円という結果でした。40歳代と比べると平均額は約140万円増えましたが、中央値の増加は20万円にとどまっています。
定年退職が視野に入るこの年代でも、依然として資産を持たない層・100万円未満の層が45%を超えています。
その一方で3000万円以上を持つ層も10.4%おり、一部の富裕層が平均値を引き上げる「資産格差の拡大」がより顕著になっているといえるでしょう。
1.4 60歳代・おひとりさまの貯蓄額一覧|平均と中央値の最終結果
- 金融資産非保有:30.4%
- 100万円未満:9.1%
- 100~200万円未満:4.3%
- 200~300万円未満:2.4%
- 300~400万円未満:4.5%
- 400~500万円未満:3.1%
- 500~700万円未満:6.0%
- 700~1000万円未満:4.8%
- 1000~1500万円未満:8.1%
- 1500~2000万円未満:4.1%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:15.6%
- 無回答:2.2%
◆平均と中央値
- 平均:1364万円
- 中央値:300万円
60歳代では、平均貯蓄額が1364万円、中央値が300万円へと上昇します。退職金や相続による資産の増加が考えられますが、平均値との差は依然として4倍以上あります。
特に3000万円以上の資産を持つ層が15.6%に達し、全体の平均値を大きく引き上げている状況です。
しかし、資産を持たない・100万円未満の層も約4割を占めており、本格的な老後を迎えても資産の二極化は続いています。
これからは貯蓄を取り崩していく段階に入るため、いかにして資産寿命を延ばすかが重要な課題となる世代です。
2. まとめ:他人との比較ではなく、自身の現状把握から始めよう
今回一緒に見てきた同世代のデータは、あくまでご自身の客観的な立ち位置を知るための、一つの「現在地」を示すものにすぎません。
本当の意味での家計の安定や老後の安心感は、周りの平均値や中央値に「勝つこと」ではなく、ご自身のライフスタイルに合った資産と負債のバランスを整えることで生まれてくるものです。
たとえば、手元の預貯金は少なくても住宅ローンをすでに完済している方と、貯蓄は多くてもまだ多額のローン返済が残っている方とでは、実際の資産状況の意味合いは大きく異なります。
だからこそ、住宅ローンなどの「負債」を差し引いた純資産額や、将来の住居費の負担を和らげてくれる「持ち家」があるかどうかなど、総合的な視点で見ていくことが大切になります。
まずは、預貯金だけでなくローンなどの負債も含めて、「今のありのままの家計」を見える化することから始めてみてはいかがでしょうか。
物価上昇など、先行きに不安を感じやすい時代ではありますが、ご自身の「現在地」がはっきりと分かれば、漠然とした不安もすこし和らぐはずです。
そこからご自身のペースで、ライフスタイルに合った無理のない資産形成の形を、少しずつ見つけていきたいですね。



