総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」(令和8年2月3日)では、東京都などへの社会増が目立つ一方、地方では転出超過が続いています。
人口移動は地域の活力だけでなく、お墓の維持環境にも影響します。承継者が遠方に住むケースが増えるなか、無縁化のリスクは決して他人事ではありません。墓じまいの背景には、こうした人口構造の変化があります。
1. 【墓じまい】改葬15万件以上!墓じまいは北海道がいちばん多い?何に費用がかかる?
墓じまいとは、既存のお墓を撤去し、遺骨を別の場所へ移す「改葬」を指します。
1.1 改葬件数15万件超。「無縁墳墓」の改葬も年間3400件
厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例」によると、令和4年度の改葬件数は全国で15万件を超えました。墓じまいはもはや珍しい選択ではなく、一定の広がりを見せています。
■令和4年度 改葬件数(全国合計・都道府県別/多い順)
- 全国:15万1076件
- 北海道:1万2243件
- 東京都:1万915件
- 大阪府:7934件
- 兵庫県:7711件
- 千葉県:7538件
全国で15万件を超える改葬件数の中には、管理者がいなくなり法的手続きを経て撤去された「無縁墳墓」の改葬約3400件も含まれています。自らの意思で整理を進める人が増える一方、承継者不在のまま行政対応となるケースも少なくありません。お墓を次世代にどう引き継ぐのか、あるいは引き継がないのか。元気なうちに家族で方向性を話し合うことが重要です。
1.2 一時費用と継続費用。「止めるコスト」の視点
墓じまいには、いくつかの費用が発生します。
- 墓石の撤去費用
- 新たな納骨先(納骨堂・合葬墓など)にかかる費用
- 寺院墓地の場合の「離檀料」
特に離檀料は金額の目安が分かりにくい部分ですが、法律上の支払い義務があるものではなく、これまでの感謝の気持ちとして渡すお布施に近い性質です。
検討の際に大切なのは、目先の「いくらかかるか」というイニシャルコストだけでなく、今後も続く管理費というランニングコストを止められるかという視点です。家計への影響を長期で捉えることが欠かせません。
2. 【墓じまい】維持することも大切だが「今の家計」と「これからの負担」を考えるポイント
もちろん、代々のお墓を今の形のまま守り続けられるのであれば、それに越したことはありません。ご先祖様を大切に思い、お寺との関係を維持することはとても尊いことです。
ただし、維持が生活を圧迫したり、子ども世代の負担になり得る場合は、形を見直す判断も必要です。FPの立場から重要なのは、無理を重ねて家計が立ち行かなくなる事態を避けることです。「今の家計」と「これからの負担」を考えるポイントとして以下ご紹介します。
2.1 ①管理費の現状を数字で確認
- 年間管理費はいくらか
- 誰が支払っているか
- 将来も継続可能か
感情ではなく、まずは数字で現状を把握します。
2.2 ②独断を避け、目的を共有
- なぜ今検討するのか
- 誰の負担を軽減するためか
方向性を共有せずに進めると、後々のトラブルにつながります。早い段階での話し合いが不可欠です。
2.3 ③納骨先と制度の確認
- 合葬墓・納骨堂・永代供養墓などの選択肢
- 自治体独自の支援制度の有無
選択肢によって将来負担は大きく変わります。制度活用も視野に入れましょう。
2.4 ④改葬許可証の取得
墓石の撤去は、自治体の「改葬許可証」を取得してから行います。これは法律で定められた必須手続きです。正式な手続きを踏むことが前提となります。
3. 【墓じまい】お墓の問題は「家計」の問題でもある。家族で情報共有を。
守り続けることも、形を変えることも、どちらも尊重される選択です。大切なのは家計と次世代の負担を冷静に見つめることです。制度や手続きを理解すれば、不安は軽減できます。改葬許可証など法的手続きも忘れてはなりません。
記事の冒頭では人口移動についても解説しましたが、東京都などへの社会増が目立つ一方、地方では転出超過が続いています。人口移動は地域の活力だけでなく、お墓の維持環境にも影響します。準備を重ねることが、納得のいく決断につながります。
参考資料
- 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」
- 厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例」
- 独立行政法人国民生活センター「墓じまい 離檀料に関するトラブルに注意」
- 京都府舞鶴市「お墓の移動には改葬許可が必要です」
橋本 優理