2026年が幕を開けましたが、新年を機に「もしもの時」の備えを考え始めた方も多いのではないでしょうか。身寄りがないまま亡くなった場合、「自分の財産は誰のものになるの?」という切実な不安を、筆者もFPとしてよくご相談いただきます。
結論から言うと、法定相続人が1人もいない場合、遺産は最終的に国(国庫)へ帰属します。しかし、亡くなった直後に自動で国のものになるわけではありません。実は、法律上は大きく分けて「4つのステップ」があり、途中で財産を受け取れる人が現れる可能性もあるのです。
今回は、「おひとりさまの相続」について、自身の財産がたどるルートをフローチャート形式で追いながら、お世話になった人へ確実に財産を残すための備えについて、FPの視点で解説します。
1. 【ステップ1】まずは戸籍を徹底調査。本当に相続人は1人もいないのか?
相続では最初に、亡くなった人(被相続人)に法定相続人がいるかを確認します。
一般的な優先順位は以下の通りです。
- 配偶者:常に相続人となる
- 第1順位:子ども(亡くなっている場合は孫などの代襲相続人)
- 第2順位:父母(亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合は甥・姪)
1.1 疎遠な「甥・姪」が相続人になるケースに注意
「自分は天涯孤独だ」と思っていても、家系図や戸籍を遡ることで、疎遠になっていた兄弟姉妹やその子ども(甥・姪)が見つかるケースは少なくありません。まずは戸籍上の相続人の有無を確認することが、手続きの出発点となります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(甥・姪)までは相続権が引き継がれますが、甥・姪の子までは引き継がれません。ここが「親族はいない」と判断される一つの境目となります。
2. 【ステップ2】相続人不在なら「相続財産清算人」が選任され、身辺を整理する
調査の結果、相続人がいない(または全員が相続放棄した)場合、その遺産は法律上「相続財産法人」というひとつのまとまりとして扱われます。
このとき、利害関係者などの申立てにより、家庭裁判所によって「相続財産清算人」(多くは弁護士などの専門家)が選任されます。清算人は主に以下の実務を行います。
- 債務の支払い:故人に借金や未払いの税金があれば、遺産から支払います。
- 相続人の捜索:公告を行い、改めて相続人がいないかを確認します。
裁判所への申立てには、戸籍謄本一式や財産を証明する資料が必要となり、非常に厳格なプロセスを経て進められます。
3. 【ステップ3】内縁のパートナーなどは「特別縁故者」として財産を受け取れることも
相続人が見つからない場合でも、すぐに国のものになるわけではありません。民法では、亡くなった方と密接な関係があった「特別縁故者」に対し、遺産を分与する制度があります。
<特別縁故者の具体例>
- 内縁の夫や妻
- 長年同居し、身の回りの世話をしていた人
- 献身的に療養看護に努めた人
これらに該当する人が家庭裁判所に申立てを行い、認められれば、遺産の全部または一部を受け取ることができます。ただし、特別縁故者の申し立てをする際は、申立てに必要な費用があり、手続きも長期にわたります。確実に財産を渡したい相手がいるなら、この制度を期待するよりも遺言書を準備する方が、相手への負担も少なくなります。
4. 【最終出口】引き取り手がいなければ国庫へ。意思を通すなら「遺言」が必須
法定相続人もおらず、特別縁故者への分与もなければ、清算後に残った財産は国庫へ帰属します。なお、預貯金は国庫へ入りますが、もし不動産を誰かと共有していた場合は、その持分が他の共有者に帰属することもあります。
「誰にも迷惑をかけたくない」「お世話になった人へ残したい、団体への寄付をしたい」と考える方は、遺言書で財産の渡し先を決めておくことが、もっとも確実な備えになります。
5. 【おひとりさまの相続】自分の財産を「誰のために」使いたいか、未来への準備を。
今回は、身寄りがない方の遺産がどのようなプロセスを辿るのか、以下の4つのステップに沿って解説しました。
- 戸籍調査による法定相続人の有無の確認
- 「相続財産清算人」による債務清算と財産管理
- 「特別縁故者」への財産分与の申し立て
- 引き取り手がいない場合の「国庫帰属」
「おひとりさま」の相続は、放置してしまうと国庫に帰属する可能性が高くなります。自分の財産をどのように役立ててほしいか、誰に受け取ってほしいかという希望がある場合は、早めに専門家へ相談し、遺言書の作成を検討することをおすすめします。それが、自分自身の安心だけでなく、残された周囲の人々への思いやりにもつながるはずです。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法 第5編 相続/第6章 相続人の不存在(951条~959条)(相続財産清算人、特別縁故者、国庫帰属まで規定)」
- 政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」
- 最高裁判所「相続財産清算人の選任」
- 最高裁判所「相続財産清算人の選任の申立書」
- 最高裁判所「記入例(相続財産清算人選任申立書)」
- 最高裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」
- 最高裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与の申立書」
- 最高裁判所「記入例(特別縁故者に対する相続財産の分与)」
村岸 理美