2月に入り、3月の定年退職を控えた方々にとってはカウントダウンが始まる時期となりました。長年勤め上げた自分へのご褒美を考える一方で、4月からの年金生活に対する漠然とした不安を感じている方も多いはずです。

物価上昇が続き、老後の生活費への不安が高まるなか、「老後資金はいくら必要か」だけでなく、「どのように使うか」にも注目が集まっています。

新NISAの拡充を背景に、現役時代から資産形成に取り組んできた人の中には、定年後に資産をどのペースで取り崩せばよいのか、具体的なイメージを持ちたいと考える人も多いでしょう。

本記事では、60歳時点で2000万円の資産を保有しているケースを想定し、毎月5万円を取り崩した場合に資産が何歳まで持つのかをシミュレーションします。

あわせて、運用利回りの違いが資産寿命に与える影響についても確認します。

1. 老後資金の「取り崩し」で重要な考え方

老後資金について考える際、多くの人は「いくら貯めれば足りるのか」に意識が向きがちです。

しかし実際には、老後に入ってからは「どのように使い、どれだけのペースで取り崩すか」が生活の安定を左右します。

新NISAを活用して資産形成をしてきた場合でも、老後に入れば運用の目的や考え方は大きく変わります。

まずは、現役時代と老後で資産運用に求められる役割の違いを整理しておきましょう。

1.1 「貯め方」から「使い方」へ視点を変える

現役時代の資産運用は、基本的に「増やすこと」が目的です。

多少の値動きがあっても、時間を味方につけて運用を続けることで、長期的な成長を目指すことができます。

収入が継続してあるため、一時的に資産が減っても、生活に直結するリスクは比較的限定的です。

一方、老後に入ると状況は大きく変わります。定期的な給与収入がなくなり、公的年金と手持ち資産が生活費の主な原資になります。

この段階では、資産運用の目的は「最大化」ではなく、生活を安定して支え続けることにシフトします。

つまり、運用による成長だけでなく、「減らし過ぎない」「使い切らない」視点が重要になります。

そのため、取り崩し期に特に意識したいのが、「資産寿命」という考え方です。資産寿命は「資産が何歳まで持つのか」を意味し、老後生活の安心感を左右する大きな要素です。

この時期は、単純な利回りよりも「取り崩し額が生活費に見合っているか」「相場が悪い年でも無理なく続けられるか」「長生きした場合にも対応できるか」といった点が重視されるでしょう。

1.2 定額取り崩しのメリットと注意点

定額取り崩しとは、資産残高にかかわらず、毎月決まった金額を取り崩す方法です。

例えば「毎月5万円」と決めておけば、年金のように安定したキャッシュフローを確保できます。

この方法の最大のメリットは、生活設計が立てやすい点にあります。収入が安定することで、生活費や趣味、医療費などの支出を計画的に管理しやすくなります。

精神的な安心感が得られる点も、老後においては見逃せないポイントでしょう。

一方で、定額取り崩しには注意点もあります。

市場環境が悪化している局面でも、同じ金額を取り崩し続けると、資産の減り方が加速する可能性があります。

特に、相場が下落している時期に多くの資産を売却すると、回復局面での運用効果を十分に享受できなくなります。

これを「取り崩しリスク」と呼ぶこともあります。

そのため、定額取り崩しをする際は、以下のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 相場が悪い年は取り崩し額を一時的に抑える
  • 生活費の一部を現金で確保しておく
  • 複数年分の生活費を低リスク資産で持つ