歴史的な高値を更新している「金(ゴールド)」への注目が高まっています。しかし、短期的な値動きばかりに目が行き、「中長期的な資産防衛」という本来の役割は意外と知られていません。
本記事では、モニクル総研のアナリストであり元外資系証券アナリストの木村敬子さんが金融経済YouTubeチャンネル「ミライド」で解説された、金が「現代の通貨制度への最強の防衛策」である理由と、長期的なポートフォリオでの位置づけについてまとめます。
1. 「金」はコモディティであり、最強の「貨幣」でもある
1.1 金・原油・プラチナは「貨幣」になり得るのか
金は一般的に「コモディティ(商品)」に分類されますが、それ以上に「貨幣(お金)」としての側面を強く持っています。
他のコモディティと比較すると、例えば「原油」は保存や交換が難しく、貨幣にはなり得ません。「プラチナ」は機能的には近いものの、希少性が高すぎて流通量が確保できないため、歴史的に貨幣として定着しませんでした。
対して金は、十分な流通量が確保できるため、人類の歴史の中で約3000年にわたり「貨幣」として、あるいは「貨幣の裏付け」として使われてきました。
1.2 貨幣の3つの機能
経済学において、貨幣には「価値の尺度機能」「交換(決済)機能」「価値の貯蔵機能」の3つの機能が必要とされます。
木村さんは、「金はこの3つの機能をすべて満たしている」と説明します。
1.3 現代の通貨制度の歴史はまだ「50年」ほど
私たちが現在使っている「紙幣(不換紙幣)」が、金の裏付けなしに使われるようになったのは、実はごく最近のことです。
1971年の「ニクソン・ショック」により、ドルと金の交換が停止されました。これにより、金本位制(通貨の価値を金で裏付ける制度)が終わり、現在の「管理通貨制度」が始まりました。
木村さんは、「長い人類史において、金という実物の裏付けがない紙幣だけで経済を回している期間は、わずか50年ほどに過ぎない」と説明します。
2. 構造的にインフレが起こりやすい「管理通貨制度」のリスク
2.1 金本位制と管理通貨制度のメリット・デメリット
現在の「管理通貨制度」には、「インフレが起こりやすい」という構造上のリスクがあります。
かつての「金本位制」では、発行できる紙幣の量が保有する金の量に制限されるため、通貨の価値や物価は安定しやすい特徴がありました。
一方、現在の「管理通貨制度」は、中央銀行や政府の信用によって通貨の発行量をコントロールできます。経済危機時に柔軟にお金を供給できるメリットがある反面、「紙幣の刷りすぎ」による通貨価値の希薄化(インフレ)のリスクを常に抱えています。
2.2 2000年以降、通貨は急激に増えている
2000年以降のデータを見ると、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックなどに対応するため、特にアメリカを中心に通貨供給量(マネーサプライ)が大きく増加しています。
また、各国通貨と金を比較した1981年からのパフォーマンスを見ると、2000年頃までは主要通貨も金に対して健闘していました。しかし2000年以降、状況は一変し、ドル・円・スイスフランは軒並み金に対して大きく価値を下げています。
「現代の通貨制度そのものが持つ過剰な通貨発行による通貨の価値下落リスクに対し、金を持つことは一番の防衛策になる」と木村さんは解説します。
3. 金投資の長期的な位置づけ
では、こうした背景を踏まえて、どのように金をポートフォリオに組み入れるべきでしょうか。
3.1 金は「相対的」に動く資産
株式や債券と違い、金そのものはキャッシュフロー(配当や利子)を生み出しません。木村さんは、「金は、金以外のもの(通貨や経済状況)がどう変化するかによって価格が決まる受け身の資産である」と位置づけています。
特に重要なのが「インフレ・通貨不安」です。金は短期的に価格変動を予測するのが難しい資産ですが、管理通貨制度の限界に対するヘッジとして、超長期的な視点で保有し続けるのが正解だと言えます。
3.2 日本円・米ドルを持つ人にこそ「金」が必要
各国の「通貨発行量」に対して、どれだけ「金」を保有しているかを見ると、ロシアやインド、また欧州諸国は、通貨量に対して金を高い比率で保有していることがわかります。
一方で、日本やアメリカは通貨量に対する金の準備高が低い水準にとどまっています。
木村さんは、「発行量の割に金の裏付けが薄い日本円や米ドルを多く持つ人ほど、その通貨自体がインフレで毀損するリスクが高い」と分析します。そのため、円やドルを多く持つ人ほど、ポートフォリオの一部に「金」を組み入れ、通貨分散を図ることが合理的と言えます。
3.3 ポートフォリオにおける金投資の重要度
経済状況と投資目的を掛け合わせた場合、ポートフォリオにおける金の重要度がどう変わるかを整理します。
このマトリクスを見ると、金の重要度が最も高くなるのは、「インフレ時」かつ「資産を守りたい・長期運用したい」場合です。
逆に、通常時に短期的に資産を増やそうとする場合、金の優先度は低くなります。金の価格は相対的に動きやすくは金利を生まないため、短期間で利益を狙う攻撃的な運用には不向きなためです。
木村さんは、「現在のインフレ環境下において、資産防衛を目的とする投資家にとって、金の組み入れは非常に合理的である」と結論づけています。
4. 資産を「増やす」だけでなく「守る」視点を
投資というと、つい「いかに資産を増やすか」に目が向きがちです。しかし、現代のような管理通貨制度の中では、「いかに資産の価値を減らさないか」という視点も同じくらい重要です。
円やドルといった「紙幣」だけに依存していないか、一度立ち止まってご自身のポートフォリオを見直してみてはいかがでしょうか。
5. ポイントまとめ
・現代の管理通貨制度はまだ歴史が浅く、構造的にインフレリスクを抱えている
・金は3000年の歴史を持つ「貨幣」で、紙幣の価値下落に対する最も有効なヘッジ手段である
・通貨量に対して金の保有比率が低い日本円や米ドルのリスクヘッジとして、金が有効である
・金は短期的なタイミングを計るのが難しく、長期的な視点で保有し続けるのが望ましい
動画はこちらからご覧下さい。
ミライド
