2026年に入り、3月をもって退職する人もいるでしょう。退職時には退職金が受け取れることがあります。民間企業だけでなく、公務員でも退職金制度は存在します。

なかでも、国家公務員の退職金は「金額が大きい」というイメージを抱く人も少なくないでしょう。

実際、国家公務員の退職金はいくらなのでしょうか。この記事では、国家公務員の退職金について解説します。

1. 国家公務員の退職金はいくら?

内閣官房の「令和6年度 退職手当の支給状況」によれば、国家公務員の退職金の平均額は以下のとおりです。

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国家公務員の退職金について

出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」をもとに筆者作成

常勤職員

  • 計:1094万3000円
  • 定年:2160万1000円
  • 応募認定:2470万3000円
  • 自己都合:345万4000円
  • その他:263万円

うち行政職俸給表(一)適用者

  • 計:1389万6000円
  • 定年:2148万8000円
  • 応募認定:2277万円
  • 自己都合:331万5000円
  • その他:210万円

全体平均は1094万3000円です。そのなかでも各省庁で働く行政職については、平均1389万6000円となっています。

定年退職や、早期退職を募る「応募認定」は平均を上回る金額ですが、自己都合やその他の理由では平均を下回り、200〜300万円台となっています。退職の時期や理由によって、金額は大きく変わるのです。

次章では、とくに金額が高い「定年退職」における退職金について、さらに解説します。

2. とくに高いのは「定年退職時」

国家公務員の退職金の全体平均は1000万円台前半でしたが、定年退職による退職金は2100万円台と、平均を上回っています。新卒で入庁し、定年まで勤め上げれば、2000万円台の退職金を受け取れるのです。

また、定年での退職金自体が、ほかの理由での退職よりも比較的高く設定されています。勤続年数別に、全体平均・定年・自己都合での退職金の平均金額を見てみましょう。

勤続年数別・全体平均・定年・自己都合での退職金の平均金額2/2

勤続年数別・全体平均・定年・自己都合での退職金の平均金額

出所:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」をもとに筆者作成

全体平均

  • 5年未満:88万円
  • 5年〜9年:132万5000円
  • 10年〜14年:337万5000円
  • 15年〜19年:582万1000円
  • 20年〜24年:1093万円
  • 25年〜29年:1581万8000円
  • 30年〜34年:2088万6000円
  • 35年〜39年:2389万5000円
  • 40年以上:2274万4000円

定年

  • 5年未満:169万1000円
  • 5年〜9年:394万円
  • 10年〜14年:729万円
  • 15年〜19年:855万8000円
  • 20年〜24年:1366万円
  • 25年〜29年:1581万4000円
  • 30年〜34年:2030万3000円
  • 35年〜39年:2328万6000円
  • 40年以上:2246万4000円

自己都合

  • 5年未満:30万7000円
  • 5年〜9年:96万9000円
  • 10年〜14年:287万円
  • 15年〜19年:538万5000円
  • 20年〜24年:940万円
  • 25年〜29年:1380万5000円
  • 30年〜34年:1681万3000円
  • 35年〜39年:2003万2000円
  • 40年以上:2218万2000円

定年退職は、勤続年数5年未満でも約170万円と、自己都合の30万円台、全体の80万円台と比較すると高い金額です。

勤続年数が長くなれば、どのような退職理由でも2000万円以上の金額を受け取れますが、比較的勤続年数が短いまま定年を迎えても、高額な退職金を受け取れるようになっています。

かつて「老後2000万円問題」として、老後に必要な資産額が話題になりました。しかし、物価高の影響により、現代では4000万円〜5000万円の備えが必要ともいわれます。国家公務員が定年退職したり35〜40年ほど勤めたりすれば、退職金で2000万円以上の金額を受け取れるため、老後に必要な資産の半分ほどが賄えます。退職金とは別に貯蓄や資産を用意しておけば、老後も豊かに暮らせる可能性が高いでしょう。

次章では、国家公務員の退職金を、民間企業と比較してみましょう。

3. 民間企業と退職金を比較

国家公務員の退職金は、民間企業と比較して高いのでしょうか。それとも、低いのでしょうか。

厚生労働省中央労働委員会の「令和5年賃金事情等総合調査」によれば、入社以降同じ企業で勤め上げ、定年退職した際の退職金額は、以下のとおりです。

【民間企業の退職金額】

  • 大学卒:2139万6000円
  • 高校卒:2019万9000円

一方、国家公務員になり定年まで勤めた場合の退職金の平均は2246万4000円です。よって、国家公務員のほうが数百万円ほど退職金が多くなります。賃上げの効果により退職金も増える可能性があることから、現在この差は多少縮まっている可能性があります。

次章では、退職金の受け取りで注意したいポイントを解説します。

4. 気をつけたい「退職所得控除」

国家公務員は定年まで勤めれば多額の退職金を受け取れます。退職金とあわせてiDeCoで年金を用意している人もいるかもしれませんが、こうした人は退職所得控除の使い方には注意が必要です。

退職金やiDeCoの一時金は「退職所得」に該当し、実際に受け取った退職金から「退職所得控除」を差し引いた金額の半分を所得として算入します。

  • 退職所得控除
    ・勤続年数20年以上:800万円+70万円(勤続年数-20年)
    ・勤続年数20年未満:40万円×勤続年数

この退職所得控除については、ここ数年で制度改正が続いています。

  • iDeCo→退職金の順で受け取る場合:退職所得控除を再利用できるようになるまでの期間が5年から10年に変更(2026年1月1日から)
  • 退職金→iDeCoの順で受け取る場合:退職所得控除を再利用できるようになるまでの期間が15年から20年に変更(2022年から)

そのため、退職金やiDeCoを受け取るタイミングによっては、多額の所得税を支払わなければならない可能性があるのです。

国家公務員の定年は、2031年までに65歳へ段階的に引き上げられる予定となっています。また、iDeCoは75歳までに受け取る必要があります。退職所得控除をそれぞれの受取時に活用するのは難しくなったため、退職金で退職所得控除を活用し、iDeCoは年金形式で受け取るといった工夫が必要です。

5. まとめ

国家公務員は、定年まで勤めたり35年〜40年ほど勤めたりすれば、2000万円以上の退職金を受け取れます。退職金額は民間企業よりもやや高く、民間水準に準拠した金額になっているといえるでしょう。

一方、自己都合などで中途退職した場合の退職金は1000万円以下であるケースも多く、すべての人が2000万円受け取れるわけではありません。また、物価高により多額の退職金の価値も目減りしてきています。退職金以外の資産を備えておくことが重要です。

参考資料

石上 ユウキ