散るからこそ花は美しい。平安朝の文化人も言うとおり、盛りが短いからこそ桜もよりいとおしく感じるのでしょう。生まれが関東の私は、桜は入学式に咲くものだと思っていました。松本市に住んで初めて、桜のない入学式を知ることになります。

諏訪湖の周囲にも多くの桜が植えられています。遅い春に目覚めた湖水を縁取る桜霞は、この世のものとは思えません。夢心地の春の日も、数日後には気温がぐんとあがり、たちまち霞は立ち消えて濃い緑の繁る初夏になるのです。まさに夢を見ていたかのような春のひとときです。

信州松本・諏訪地方の春を味わったことのない方、ゴールデンウィーク前半ならまだ春の余韻が感じられるかもしれません。諏訪市観光ガイドの桜だよりによると、千本桜と呼ばれる桜林が有名な「西山公園」は4月中下旬、高台にあり諏訪湖を一望できる「立石さくら広場」は4月下旬が見頃とされています。

もしあなたより一足先に春が立ち去ってしまったとしても、標高のより高い場所を訪れれば春はまだそこに留まっているはず。しかし信州の春は気温差が激しく、夜はかなり冷え込みます。花にうつつをぬかして風邪を召されぬよう、上着の準備をお忘れなく。

シマダマキ