3. 「パート収入の平均はいくら?」今後は《働き控え》の解消なるか

現場で働くパートタイム労働者の現状について厚生労働省の「毎月勤労統計調査(2025年10月分結果速報)」でみてみましょう。

3.1 パートタイム労働者の平均月収(産業種別・事業所規模5人以上)

■調査産業計:11万2283円

■月間現金給与額が多い上位5業種

  • 電気・ガス業:17万5330円
  • 複合サービス事業:15万8498円
  • 情報通信業:15万4473円
  • 学術研究等:15万221円
  • 金融業・保険業:14万7461円

平均月収は約11.2万円で、年収に換算すると約134万円です。

3.2 178万円への引き上げの影響は?

多くのパートタイム労働者はすでに「130万円の壁」付近に達しています。今回の合意で税金の壁が178万円に引き上げられることにより、所得税を気にせず働ける範囲は大きく広がります。

一方で、社会保険の壁(130万円など)が残っている点には注意が必要です。年収が130万円を超えた途端に社会保険料の負担が発生し、結果として「働き損」と感じる逆転現象が起きる懸念もあります。税金に関わるの年収の壁が上がっても、社会保険に関わる壁をどう乗り越えるかが今後の働き方を決める上での実質的な課題となりそうです。

4. 「年収の壁」制度の変化をきっかけに「働き方や家計のバランス」を見直してみよう

今回は、所得税がかかりはじめる「年収の壁」が160万円から178万円へ引き上げられる合意内容について解説しました。今回の見直しにより、所得税を気にせず働ける範囲が広がり、パートタイム労働者を含む多くの人にとって手取り増加が期待されます。一方で、106万円や130万円といった社会保険の壁は残っており、年収が増えた途端に負担が生じるケースもある点には注意が必要です。

これからは「いくら稼ぐか」だけでなく「週に何時間働くか」が手取りや将来の年金に影響する時代になっていきます。制度の変化をきっかけに、ご自身の働き方や家計のバランスを一度見直してみるのもよいかもしれません。

参考資料

村岸 理美