3. 地方債の購入方法は?「役所の窓口」では購入できない点に注意!
まずはご自身が住んでいる地域などから購入したい自治体が地方債を発行する予定があるか、各自治体のホームページで調べてください。
直近で発行予定がある場合、個人が購入できる債券かどうかをまず確認してください。個人が対象の場合は「個人向け」「住民参加型」「ミニ公募債」などの表記があります。
個人が購入できることを確認できたら、以下をチェックしてください。
- 年限
- 利率の条件決定日
- 募集期間
- 購入単位(購入限度額)
- 取扱金融機関
利率の決定後、購入を決めたら募集期間内に必ず申し込んでください。また、誤解されがちなポイントが「購入場所」です。役所の窓口では購入できないので、必ず銀行や証券会社などの「取扱金融機関」を確認してください。
また、購入単位も必ずチェックしてください。1万円から購入できるものもありますが、5万円単位、10万円単位とある程度まとまった金額からでないと申し込めない債券もあります。ご自身が望む投資スタイルと合致しているか、事前にしっかり確認してください。
なお、発行する自治体にこだわりがない場合は、各証券会社のホームページ上で探すのが簡単です。商品ラインナップのなかから「債券」をチェックしてください。購入できる新発債があれば「販売中」の銘柄が表示されています。
次回、地方債の新発債がまとまって販売されるタイミングの目安は、2026年1月9日以降です。この日までに情報収集しておくとスムーズに投資を検討できるでしょう。
今日の日銀会合で利上げが決定したことから、10年国債の利回りは19年半ぶりに2%をつけました。こうした金利環境を踏まえると、1月の新発債は12月債よりさらに高い利率で条件決定する可能性が考えられます。
地方債の購入方法について理解したところで、次に国債と比較した際の地方債投資のメリットについて説明します。
4. 地方債投資のメリット
地方債投資のメリットは大きく2つです。
- 国債よりも高い利回りが得られる
- 使いみちが見えやすく、直接地域を応援できる
4.1 国債よりも高い利回り
国債よりもリスクが高いと見なされるため、より高い利回りが得られます。固定利率の5年物の場合、12月募集の個人向け国債が1.35%(税引き前)であるのに対して、地方債(12月5日に条件決定)は長野県債などが1.507%(同)となっており、およそ0.16%の差があります。
10年物になると、利率の「変動」と「固定」の違いはありますが、国債(変動)が1.23%(税引き前)であるのに対し、地方債(固定)は新潟市(12月5日条件決定)が2.062%(同)、愛知県債(12月10日条件決定)が2.085%(同)などとなっています。この差は0.8%以上にもなります。
※地方債は現在完売しています
4.2 使いみちがハッキリ、地域応援の実感がもちやすい
地方債は「学校の建設」「病院の整備」など、調達した資金の使い道が明確な債券が多いです。過去には子どもたちにスクールバスを贈るために起債した自治体もあります。このように、自分の住む街や故郷を直接応援できることも地方債投資のメリットです。
続いて地方債投資のデメリットについて説明します。
5. 地方債投資のデメリット
地方債投資のデメリットは大きく3つです。
- 途中で現金化する場合、国債とは異なり、元本割れする可能性がある
- 固定利付債しかないため、10年債の利率が途中で国債に抜かれる可能性がある
- 発行される債券の種類や発行量が限定的
5.1 元本割れの可能性がある
中途換金する場合、1年経てば利息を差し引いたうえで国が元本100%で買い取ってくれる個人向け国債とは異なり、地方債は「元本割れする可能性」があります。
株式同様、債券も中途換金することは可能ですが、株式とは異なり個人投資家が自由に売買できるセカンダリーマーケットが存在しません。このため、売却は金融機関を通じて行うこととなり、強制的に市場価格で売却するしか方法がありません。売却時の金利環境によっては、当然元本を下回る可能性も出てきます。
このため、地方債は「満期まで持ち切れる余裕資金」で投資するのが鉄則です。
5.2 利率が固定、10年債なら途中で変動する国債を下回る可能性も
10年債で比較すると、現状の利回りは地方債が2%台、個人向け国債が1.23%となっており、現時点では地方債の方が高い水準にあります。しかし、両者の最大の違いは金利の決まり方にあります。
個人向け国債は、半年ごとに利率が見直される「変動利付債」です。現在のマーケットのように金利の先高感が強い環境では、世の中の金利上昇に追随して受け取る利子が増えていくというメリットがあります。
一方、地方債は個人向けでは利率が変わらない「固定利付債」のみであり、今後どれほど金利が上がっても10年間は発行時の利率に据え置かれます。その結果、運用期間の途中で国債の利回りに逆転されたり、最終的な利子の総額が国債を下回ったりする可能性も十分に考えられます。
ただし、金利が低下した場合には、個人向け国債の利回りも連動して下がってしまいます。これに対し、地方債は一度決まった2%台の利回りが償還まで維持されるため、金利低下局面では固定金利の地方債の方が有利に働きます。
5.3 発行される債券の種類や発行量が限定的
前述のように、個人が購入できる主な地方債は年限や発行額が限定的です。特に利回りが高い新発の10年物地方債は個人向けの販売が少ないため、人気が殺到し、すぐに完売となるケースも見受けられます。
情報収集がやや難しく、各自治体や口座を持っている証券会社のホームページなどで新発債の発行予定を小まめにチェックする必要があります。
最後のページでは、どんなタイプの人なら地方債投資に向いているのか、見ていきます。
