長らく低金利環境が続き、「投資対象としての債券は魅力に乏しい」と見られていた時代は終わり、「金利のある世界」が戻ってきました。日本銀行は19日、金融政策決定会合で政策金利を0.5%から0.75%に引き上げることを決定しました。

日本銀行の金融政策の転換や物価上昇などを受けて金利は上昇しています。さらなる先高感が強まっているなか、債券が再び個人投資家の注目を集めています。

特に、元本割れのリスクが極めて低い「国債(日本国債)」は、「個人向け国債・変動10年」の最新の利率が1%を上回る水準となり、その投資妙味が増しています。

こうしたなか、今、国債以上に高い利回りを提供し、ひそかに投資家の関心を集めているのが、地方自治体が発行する「地方債」です。

足元の市場では、10年物で2%を超える利率がつく地方債も現れており、これは現在の個人向け国債の利回りを大きく上回る水準です。国債と同様に、地方債も日本の公的な機関が発行する「公債」であり、その信用力は非常に高いと評価されています。

本記事では、この「地方債」に焦点を当て、その仕組みや投資の魅力、そしてメリット・デメリットを、債券に詳しい記者が丁寧に解説します。

1. 国債だけじゃない?個人が買える債券はほかもある

債券投資には多様なアプローチが存在します。投資信託や上場投資信託(ETF)を介して間接的に債券に投資する手法も一般的ですが、今回は個別の債券(現物)への投資に焦点を当てて解説します。

新しく発行される債券(新発債)を購入する場合、発行体(国、地方自治体、企業など)から発行時に定められた利率に応じた利息を受け取ることができます(この利息には源泉徴収税20.315%が課税されます)。そして、満期日を迎えると、投資元本である額面金額が償還(払い戻し)される仕組みです。

個人投資家が購入可能な、主な円建て債券の種類は以下のとおりです。

  • 個人向け国債
  • 地方債
  • 社債(事業債)

なお、債券の利率は、発行体の「信用力」によって決まります。この信用力とは、元金や利息を確実に支払う能力や財務の安定性を示すものです。一般的に、信用力が高い発行体の債券ほど利回りは低く設定され、逆に信用力が低い発行体の債券ほど、投資家がリスクをとる対価として、利率が高く設定されるのが原則です。

このため、上記の3種類の債券のなかでは、最も信用力の高い国債は相対的に最も利回りが低く、逆に社債は最も信用力が低いかわりに利回りは最も高くなります。

そして地方債は、国債と社債の中間の信用力となり、利回りも中間の水準となります。

次のページでは地方債について詳しく解説していきます。