2025年11月下旬。年末に向けて気温が下がり、家計の暖房費などが気になる時期となりました。
近年、物価高や社会保険料の負担増など、現役世代はもちろん、年金生活を送るシニア層にとっても家計管理の重要性が増しています。
老後の生活費を考える上で、公的年金がどれだけ生活を支えてくれるのかは、非常に大きな関心事でしょう。
本記事では、総務省統計局の最新データ(2024年平均結果)に基づき、65歳以上の《単身》無職世帯のリアルな家計収支を詳細に分析します。
データが示すのは、平均的な年金収入だけでは生活費を賄いきれず、毎月赤字が生じているという現実です。
さらに、厚生労働省が公表した多様なライフコースに応じた年金モデルも紹介し、ご自身の現在の働き方が将来の年金額にどう影響するかを具体的な数字で解説します。
「人生100年時代」を見据え、この赤字をどう埋めていくべきか、資産形成や年金繰下げなど、早めの対策を検討するきっかけとして、ぜひ最後までご一読ください。
1. 65歳以上のおひとりさま。生活費・税や社会保険料はひと月平均いくらかかる?
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上の単身無職世帯のひと月の家計収支データを見ていきます。
1.1 65歳以上《単身》無職世帯ひと月の家計収支
毎月の実収入:13万4116円
■うち社会保障給付(主に年金):12万1629円
毎月の支出:16万1933円
■うち消費支出:14万9286円
- 食料:4万2085円
- 住居:1万2693円
- 光熱・水道:1万4490円
- 家具・家事用品:6596円
- 被服及び履物:3385円
- 保健医療:8640円
- 交通・通信:1万4935円
- 教育:15円
- 教養娯楽:1万5492円
- その他の消費支出:3万956円
- うち諸雑費:1万3409円
- うち交際費:1万6460円
- うち仕送り金:1059円
■うち非消費支出:1万2647円
- 直接税:6585円
- 社会保険料:6001円
65歳以上《単身》無職世帯の家計は…
- ひと月の赤字:2万7817円
- エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合):28.2%
- 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合):122.9%
老齢年金を受給して一人暮らしをするシニア世帯の家計は、どのような状況なのでしょうか。
この単身世帯のひと月の支出合計は16万1933円です。その内訳は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が1万2647円、食費や住居費などの「消費支出」が14万9286円を占めます。
一方、ひと月の収入は13万4116円で、その約9割(12万1629円)は主に公的年金です。
エンゲル係数は28.2%、平均消費性向は122.9%。結果的に、この単身世帯は毎月2万7817円の赤字を抱えています。
ただし、この家計収支データには注意すべき点があります。まず、支出に「介護費用」が含まれておらず、住居費も1万円台と低めです。健康状態や住居環境によっては、これらの費用がさらに上乗せされることも考慮する必要があるでしょう。
また、「非消費支出」が示す通り、老後の年金暮らしが始まっても、税金や社会保険料の支払いは生涯続きます。
多くのシニアがこれらの費用を年金から天引きで納めている現実も踏まえ、年金収入と日常生活費だけではなく、こうした、固定費も考慮した生活設計が大切となるでしょう。
