公的年金の実態を知らずに不安視していませんか?

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何となく不安視

多くの退職後の生活に関するセミナーでは、公的年金への不安に言及されるようです。皆さんは、「公的年金は安心できますか」と聞かれたら、どう答えますか? しっかりと公的年金を理解したうえで、この答えを考えるべきですが、実際には「何となく不安だ」という人が多いのではないでしょうか。

フィデリティ退職・投資教育研究所がサラリーマン1万人に聞いた「公的年金は信頼できるか」という設問には、「安心できない」「不安だ」と回答した人が8割。これに「わからない」と回答した人まで加えると9割に達しました。逆に言えば安心だと考えている人は1割しかいないということです。

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しかし、同じアンケート調査で、これとは別に「公的年金制度の今後に対する評価」を聞くと、42.8%が「制度が廃止される」または「制度も受給額も現状のまま維持される」と答えています。

私たちは、「超高齢社会では支える人と支えられる人のバランスが大きく崩れるため、公的年金の制度そのものを維持するために受給開始時期の変更や受給額の減少は避けられない」と理解しています。その点から考えれば、「制度は維持されるが、受給額は減らざるを得ない」わけですが、そう理解されている人は全体の6割に届きません。

アンケート結果からは、多くの人が“公的年金を理解しないまま不安がっている”ように映るのです。

公的年金は重要な退職後の生活資金源

老後の生活は公的年金が意外に支えてくれる』で紹介した通り、退職後の生活資金(退職後年収)の源泉は公的年金と個人資産からの引き出しで構成されます。この構成比を、現在の高齢者に対するアンケート調査の結果から分析すると、公的年金の比率は6割で、個人資産からの引き出しの比率は4割でした。

今後20-30代が退職する時代には、前述の通り、公的年金の受給額は制度の維持のためにも減らざるを得ないと思います。その場合でも、例えば受給額を20%カットしたと想定して、公的年金の比率は5割に、そして個人資産からの引き出しの構成は5割とになります。公的年金の受給額は減るものの、それでも退職後の生活費のかなりの部分を占めていることがわかります。

個人の資産形成、資産活用に関して考える際に、公的年金の位置づけを明確にしてから運用の考え方をまとめていくべきでしょう。

年金の理解度と不安 (単位:人)

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出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート、2018年4月
注:総計の( )の比率は年金制度に対する評価の選択肢別の構成比

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史

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執筆者
野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所代表。国内外証券会社、大手外資系運用会社を経て、2019年5月に現職。資産の取り崩し、地方都市移住、雇用継続などの退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会、日本FP学会などの会員などの他、2018年9月から金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』(一般社団法人金融財政事情研究会)『老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本』(扶桑社)『定年後のお金』(講談社+α新書)『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など多数。