2025年も残すところあとわずかとなり、街中が慌ただしい師走の空気に包まれています。 12月は仕事納めや新年に向けた準備が重なる時期ですが、家計の将来について落ち着いて考える大切なタイミングでもあります。

特に2025年は年金制度改革関連法が成立し、シニア世代の働き方に大きな影響を与える変化が決定した節目の年となりました。 物価高騰が続く中で、老後の主な収入源となる年金の仕組みを正しく理解しておくことは、安心な暮らしを守るために不可欠です。

今回の法改正では、働きながら年金を受け取る際のルールが大幅に見直されることになりました。 本記事では、2026年度から適用される在職老齢年金の新しい基準や、現在のシニア世帯の所得実態について詳しく解説します。 制度の変更点を整理して、自分らしいセカンドライフを支えるための知識を身につけましょう。

1. 【在職老齢年金制度】年金制度改革関連法が成立!見直しポイントを整理

2025年6月13日、年金制度改革に関する法律が国会で成立しました。

多様化する働き方やライフスタイルに対応した年金制度の構築を目的とした改正です。

今回の見直しでは、パートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」に関わる見直し)や、遺族年金制度の改正(遺族厚生年金における男女差の解消、子どもが遺族基礎年金を受給できる要件の緩和)など、注目したい内容が複数盛り込まれています。

本章ではその中でも、働き続ける高齢者への影響が特に大きい「在職老齢年金制度の見直し」に焦点を当てて見ていきましょう。

在職老齢年金とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら就労している場合、年金額()と報酬(給与や賞与)の合計が一定の基準を上回ると、年金の一部、または全額が支給停止される仕組みを指します。

(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は、これまでも年度ごとに段階的な見直しが行われてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の制度改正では、2026年4月から適用される新たな基準として、現行の51万円(2025年度水準)から62万円へと大きく引き上げられることが決まっています。

厚生労働省の試算によれば、この見直しによって、新たにおよそ20万人が年金を全額受給できるようになる見込みです。

基準額の引き上げにより、年金の減額を避けるために就労を控えていたシニア世代も、収入を過度に気にすることなく、自分に合った働き方を選択しやすくなると期待されます。