春は、進学や就職などに合わせて引っ越しシーズンとなります。これから、新生活に向けて引越しを予定している人も多いのではないでしょうか?

いろいろと大変な引っ越しですが、マンションやアパートに住んでいる人は退去の際に原状回復トラブルが起きやすいので注意です。

高額な退去費用を請求されることも多く、各地でトラブルが起きています。

そこで、独立行政法人国民生活センターは、「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」と題した注意喚起を実例とともに公開しています。

トラブルに巻き込まれないように、過去に起きた事例を参考にしてください。

また記事中では、消費者庁による令和7年版「消費者白書」より、最新の「消費者被害の推計額」についてもご紹介します。

※投稿の画像は【写真】をご参照ください。
※今回ご紹介する内容は、独立行政法人国民生活センターの掲載許可を頂いております。

1. 賃貸契約に関するさまざまなトラブル事例を紹介

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原状回復トラブル

gustavomellossa/shutterstock.com

マンションやアパートなどの賃貸借契約で、大きなトラブルとなるのが原状回復です。退去時に高額な費用を請求された人も多く、SNSなどで被害事例が投稿され話題を集めています。

借りる側のわれわれも、しっかりとした知識を持ち不当な高額請求は支払わないようにすることが肝心です。

ここからは、国民生活センターに寄せられたトラブル事例を紹介します。

40歳代の男性は、以下のようなトラブルを相談しました。

男性は、インターネット広告で敷金礼金0円、家賃約3万円の賃貸アパートを発見。仲介手数料や前家賃等の初期費用合計10万円を支払い、Web会議で重要事項説明を受けたそうです。

その際、賃貸借契約書にサインを求められたが、特約事項として「退去時に、故意過失にかかわらずクロスや床の張替等は100%の料金を請求する」との記載があったとしています。

契約書通りに負担したら、原状回復費用として10万円以上を支払うことになります。納得できないので契約書にはサインはしていない。申込みを取り消し、初期費用として支払った10万円を返金してほしいとしています。

また、同じく40歳代の男性は、1年ほど住んだ家賃約9万円の賃貸マンションについて、相談しています。

マンションを退去する際、管理会社から原状回復費用で約6万円を請求され、エアコンクリーニング費用として2万円が含まれていたそうです。

契約時にもらった重要事項説明書には、退去時に借主がルームクリーニング費用とエアコンクリーニング費用を負担すると書かれているが、入居時にも初期費用としてエアコンクリーニング代約2万円を支払っていたとか。

入居時と退去時の両方のエアコンクリーニング費用を負担するのはおかしいとしています。

さらに、次のページでも相談事例が続きます。

2. 管理会社や大家から、原状回復のために不当な請求をされるケースが続出

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原状回復トラブル

PHOTOCREO Michal Bednarek/shutterstock.com

ここからは、退去時に原状回復費用でトラブルを起こした事例を紹介します。

40歳代の男性は、壁紙の張替え費用に関するトラブルを報告しました。

6年間家族で居住していた賃貸マンションを退去した際、壁紙にソファの跡がついているとして張替え費用と、浴室のドアの補修費用で合計17万円を請求されたそうです。

壁紙は「経過年数6年を考慮して壁紙代金は免除するが、工賃の2割の5万円だけ負担して欲しい」と言われているとか。ソファの跡は自然損耗で、経過年数を考慮するなら工賃を請求するのもおかしいのではないかと困っています。

また、浴室のドアは、普通に使用していただけで壊していないので請求に納得できないとしています。

40歳代の女性は、クロスの全面張替えと畳の表替え費用全額を請求されたそうです。

約10年居住した家賃約4万円の賃貸アパートを退去した際、敷金の約6万円のうち約4万円が敷引きされ、別途でクロスの全面張替えと畳の表替え費用全額の約20万円を請求されました。

アパートには子どもと2人で住んでいたが、喫煙しておらずクロスを汚した覚えはないそうです。

クロスは天井の張替え費用まで請求され、契約書にはクロスや畳の表替えの費用は入居者負担と記載があるが、契約時に説明を受けた覚えはないとしています。管理会社に「高額な原状回復費用に納得できない」と伝えたが、「裁判になる」と言われ困っているそうです。

それでは、次のページではこれらの質問や報告に、独立行政法人国民生活センターが回答したアドバイスを紹介します。

3. 原状回復の費用でトラブルにならないためのアドバイスを紹介

独立行政法人国民生活センターは、さまざまなトラブルに対して、以下のようなアドバイスをしています。

まず、契約については、賃貸借契約は長い期間にわたる契約で、原則として契約内容に従うことになると回答。契約する前に内容をしっかり確認して理解しておくことが大切だとしています。

貸主側(管理会社や不動産業者、大家等)からの説明や契約内容をよく聞き、わからないことがあればその場で確認するなど不明な点を無くしておきましょう。

特に、禁止事項や修繕に関する事項のほか、ハウスクリーニング費用はどちらが負担するのかなど、退去する際の費用負担に関する事項も必ず確認するようアドバイスしています。

入居時に関しては、はじめに貸主側と一緒に写真を撮ったりメモを取るなどして、住宅の状況を確認することが大事です。特に、気になるキズや汚れがあった場合は記録に残しておくようにしましょう。

エアコンなど備え付けの設備がきちんと動作するかなども入居時に確認するようにアドバイスしています。

入居中は、エアコンや給湯器など機器に不具合や故障が起こった場合や、雨漏りや水漏れなどのトラブルが起きた場合は、すぐ貸主側に連絡して相談するのが大事だとしています。

賃貸住宅の修繕は原則として貸主側に義務があり、無断で修繕を行うと退去時の原状回復でトラブルになる可能性があるからです。

賃貸住宅はあくまで借りているものであることを意識し、日頃からできるだけきれいに使うことを心がけましょう。

また、退去する際には、入居時と同じくできる限り貸主側と一緒に、写真を撮ったりメモを取ったりして記録を残しながら、賃貸住宅の現状を確認しましょう。

原状回復費用は、国交省のガイドラインに基準が示されています。

納得できない請求をされた場合は、貸主側に費用の明細などの説明を求め、費用負担について話し合いを行ってください。

原則として、年月の経過による損耗や普通の使い方をしていても発生する汚れやキズなどの修繕費用は、借主が費用を負担する必要はないとしています。

トラブルになった際は、国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」や「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を示しているので、契約を締結する前や退去時に読んでおくと原状回復の考え方の参考になるとアドバイスしています。

もし、納得できない不当な請求がある場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」へ連絡し、相談するようにしてください。

4. 2024年の消費者トラブルによる被害額は9兆円という結果に

日々消費活動を行うみなさんにとって、決して遭いたくないトラブルが「消費者トラブル」。
しかし、2025年6月に公表された令和7年版「消費者白書」によると、2024年の消費者被害の推計額(既支払額)は9兆円にのぼることがわかりました。

消費者被害・トラブル額の推計結果(新手法による算出)4/5

消費者白書

出所:消費者庁「令和7年版消費者白書」

なお、2020年からの推移は下記のとおりです。

4.1 消費者被害・トラブル額の推計結果(既支払額・信用供与を含む。)

  • 2020年:約3.6兆円
  • 2021年:約5.6兆円
  • 2022年:約6.0兆円
  • 2023年:約7.9兆円
  • 2024年:約9.0兆円

2024年の金額が近年最高額となっていることがわかりました。

なお、既支払額(信用供与を含む)ベースでの消費者被害・トラブル額の推定額は約9.0兆円ですが、この数字には誤差が含まれており、同基準の消費者被害・トラブル額は95%の確率で8.5~9.6兆円の幅の中にあると推定されています。

また推計結果の推移をみると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による消費の落ち込みの影響が考えられる2020年の約3.6兆円を除いて、だいたい5兆円から6兆円で推移していました。しかし、近年は増加傾向にあることが見て取れます。

また、消費者被害・トラブル額の推計結果の算出方法には、新手法と旧手法の2種類があります。

同白書によると、「旧手法」では、消費者生活相談情報(PIO-NETデータ)に含まれる、1億円以上の極端に高額な案件も推計に含められていました。そのため、発生自体が稀な高額案件が、推計全体に実態以上に大きな影響を与える可能性がありました。

そこで「新手法」では、消費者被害・トラブル額の推計は、1億円未満のデータに基づき行うこととし、相談案件が1億円以上のトラブルについては、推計には含めず、件数と総額を推計値に併記する形を取っています。

この新しい手法により、ごく一部の極端なデータが推計全体に影響を与えることを防ぎ、また実態により即した推計となりました。

なお、旧手法による2024年の消費者被害の推計額(既支払額)は9.6兆円と、新手法よりも金額が多くなっていることがわかります。

消費者被害・トラブル額の推計結果(旧手法による算出)5/5

消費者白書

出所:消費者庁「令和7年版消費者白書」

いずれにしても、最新の数字で9兆円にのぼる莫大な金額が被害・トラブル額として推計されている現在、消費者庁は誇大広告や偽表示を行う通販業者への行政処分、SNS広告による詐欺的副業の注意喚起など、迅速な対応を取っています。

参考資料