公的年金は老後生活を支える重要な収入ですが、実は「12月の支給額が上がる」ケースが存在します。
その対象となるのが、「厚生年金に加入したまま働いているシニア層」です。
本記事では、在職定時改定によってなぜ年金が増えるのか、その仕組みや要件、増額幅の目安についてわかりやすく紹介します。
1. 【在職定時改定】12月に「年金額が増える人」ってどんな人?
65歳以降も厚生年金に加入して働いている場合、70歳になるまでに支払った保険料が、毎年10月に年金額へ上乗せされます。
これを「在職定時改定」と呼び、就労を続けている間は、年1回、厚生年金の受給額が見直され、増額分が加算される仕組みとなっています。
対象期間は「前年9月から当年8月まで」で、その期間に加入していた実績をもとに、10月分から年金額が改定されます。
なお、年金は偶数月に2カ月分が後払いで振り込まれるため、増額後の年金を受け取るのは12月(10月分・11月分)からとなります。
また、改定の対象となるのは「厚生年金の部分のみ」で、国民年金の金額に変更はありません。
次章では、在職定時改定によって年金額がどの程度上がるのか、目安を確認していきます。
2. 働くシニアは「12月の支給日」から年金がどのくらい増える?
在職定時改定でどれくらい年金が増えるのか、厚生労働省および日本年金機構の資料を参考に確認していきます。
たとえば、65歳以降も厚生年金に加入し、標準報酬月額20万円で1年間勤務した場合の増額は、次の式で算出できます。
20万円 × 5.481 / 1000 × 12カ月 = 1万3154円
上記の計算結果から、10月以降に上乗せされる厚生年金は、月におよそ1100円、年間では約1万3000円程度となります。
では、ご自身の年金が「どのくらい増えたか」確認する方法はあるのでしょうか。
3. 在職定時改定で「年金が増えたか」確認する方法は?
在職定時改定で年金額に変更があった場合は、日本年金機構から届く「支給額変更通知書」で内容を確認できます。
この通知書には、「改定後の受給額」や「厚生年金保険の加入月数(年金額算定の基礎)」などが記載されています。
在職定時改定による変更であれば、通知書の決定・変更年月(6)欄にその旨が記載されます。
改定が行われた際には必ず「支給額変更通知書」が送付されるため、日本年金機構からの郵送物は見落とさず確認するようにしましょう。
次章では、働くシニアと関係の深い「在職老齢年金制度」について説明します。
4. 【働くシニア必見】老後も働くと「年金が減る」こともあるので注意
前章では、働きながら年金を受け取ることで「年金が上乗せされる仕組み」を取り上げましたが、反対に、収入が増えることで「年金が減額される制度」も存在します。
この制度を「在職老齢年金制度」と言い、年金額と働いて得る収入の合計が一定額を超えた場合、年金の一部または全額が支給されないことがあります。
厚生年金に加入したまま就労を続けている人は、年金と給与を合わせた額が基準を超えると、「在職老齢年金制度」により、年金の支給が調整される仕組みとなっています。
4.1 働きすぎると年金はどのくらい「減額」される?
支給停止の判断には、年金と給与の合計である「総収入額」が使われ、この判定基準を「支給停止調整額」と呼びます。
2025年度の支給停止調整額は51万円となっており、この金額を上回ると、超過した分に応じて年金が減額または停止される可能性があります。
年金がどれくらい支給調整されるかは、次の式で計算できます。
在職老齢年金の支給後の年金額 = 基本月額※1 −(基本月額 + 総報酬月額相当額※2 − 支給停止調整額)÷ 2
※1 基本月額:加給年金を除いた厚生年金の月額
※2 総報酬月額相当額:直近1年間の標準賞与額を12で割った額
たとえば、基本月額15万円・総報酬月額相当額30万円の場合、合計は45万円となり支給停止調整額の51万円を下回るため、年金は満額支給されます。
あくまでも一例ではありますが、基本月額15万円・総報酬月額相当額37万円では、合計が52万円となり基準を1万円超えるため、結果として5000円の減額となります。
4.2 2026年の春から「支給停止調整額」が見直しに
「高齢者が働きやすい環境づくり」を目的として、支給停止調整額は今後段階的に引き上げられる見込みであり、2026年度からは在職老齢年金の基準額が「年金と給与の合計」で月62万円へと変更される予定です。
この見直しにより、「年金受給と働くこと」の両立がこれまで以上にしやすくなるでしょう。
老後も就労を続けたいと考える場合は、自分の年金額と収入がどの範囲なら支給に影響しないか、あらかじめ試算しておくと安心です。
5. 働くシニアは年金が「増える・減る」制度の仕組みを理解しておこう
本記事では、在職定時改定によってなぜ年金が増えるのか、その仕組みや要件、増額幅の目安について紹介していきました。
厚生年金に加入したまま働き続ける場合、在職定時改定によって年金が毎年見直され、12月の支給から増額分を受け取れる可能性があります。
一方で、収入が一定額を超えると在職老齢年金制度により支給が調整され、年金の一部が減額されることもあります。
老後も就労を続ける予定がある方は、増額の仕組みと支給停止の基準を正しく理解し、自身の年金額や収入とのバランスを把握しておきましょう。
※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。
参考資料
- 厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方]第10 在職老齢年金・在職定時改定」
- 日本年金機構「令和4年4月施行年金制度改正資料 【在職老齢年金関係】」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 日本年金機構「年金決定通知書・支給額変更通知書」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
マネー編集部年金班