2. 【老齢年金】申請が必要な2つの上乗せ給付
老齢年金を受給しているシニア世代の方が、一定の条件を満たすことで、通常の年金額に加えて受け取れるお金が2種類あります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
2.1 年金の家族手当「加給年金」
加給年金は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」に例えられる制度です。
厚生年金の加入期間が一定の条件を満たす方が、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給されます。
加給年金の支給条件
- 厚生年金加入期間が20年(※)以上ある人:65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年(※)以上となった人:在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
(※)または、共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降15年から19年
それぞれ上記のタイミングで、「65歳未満の配偶者」または「18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金が加算されます。
ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)や退職共済年金(組合員期間が20年以上あるもの)を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金額は支給停止となります。
2025年度の加給年金額
2025年度における加給年金の年額は、対象者ごとに以下の通りです。
- 配偶者:23万9300円
- 1人目・2人目の子:各23万9300円
- 3人目以降の子:各7万9800円
なお、老齢厚生年金を受け取る方の生年月日に応じて、配偶者加給年金額には3万5400円から17万6600円の特別加算が上乗せされます。
加給年金終了後の「振替加算」について
加給年金の対象となっていた配偶者が65歳に達すると、加給年金の支給は終了します。しかし、その配偶者がご自身の老齢基礎年金を受け取る際に、一定の条件を満たしていれば、今度はその老齢基礎年金に「振替加算」として金額が上乗せされる仕組みがあります。
2.2 所得が一定基準以下の方向け「老齢年金生活者支援給付金」
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定の基準を満たす場合に受け取れる制度です。この給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。
ここでは「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる条件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は90万6700円以下(※2)である
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の基準額
2025年度の老齢年金生活者支援給付金における給付基準額は月額5450円となり、前年度から2.7%増額されました。
この基準額を基に、保険料の納付状況などに応じて実際の給付金額が計算されます(後述の①と②の合計額)。
給付額の具体的な計算方法
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
例えば、国民年金保険料を全期間(40年間)納付した方の場合、2025年度は月額5450円、年額にすると6万5400円の給付金が支給されます(ただし、昭和16年4月1日以前に生まれた方は計算方法が異なります)。
なお、保険料免除期間に乗じる金額は、毎年度の老齢基礎年金額の改定に応じて変動します。


