4. 負担増の原因と注意点
限度額引き上げは、中間所得層にとっては保険料の上昇を抑える効果が見られる措置です。とはいえ、社会保険料の負担は年々重くなっているように感じるでしょう。実際、私たちの保険料などを原資とする国の社会保障給付費は、上昇を続けています。
これだけ保険料負担が増えている要因は、少子高齢化にともなう医療費の増加が考えられます。とくに国民健康保険は、定年退職後の高齢者が多く加入するため、1人あたりの医療費がほかの健康保険に比べて高い傾向にあるのです。会社の健康保険料は事業主と折半して支払うため、より負担を感じやすくなっています。
増え続ける医療費を賄うには、保険料収入の増加や税収の増加などといった方法をとらなければなりません。そのため、支払い能力がある高所得者層に、負担を求め続けている状況になっています。
また、国民健康保険料を見るうえで注意しなければならないのが、自治体で決定する保険料率です。国民健康保険料は、上限こそ国が定めていますが、保険料率は定めておらず、自治体に委ねられています。そのため、高齢者が多い自治体ほど、保険料率が引き上げられ負担額が高くなっている可能性があるのです。
こうした状況では「収入はほぼ変わらないのに保険料だけが上昇する」といった事態が起こり得ます。本来恩恵のあるはずの社会保険に家計が苦しめられては、本末転倒です。保険料負担も含めた社会保障のあり方について、見直しが求められています。
