4. 高齢者世帯が住民税非課税になりやすい背景とは

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出典:厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』

厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、住民税が課税される世帯の割合は、30歳代から50歳代では約90%ですが、60歳代で79.8%、70歳代で61.3%、80歳以上では52.4%と、年齢が上がるにつれて低くなる傾向が見られます。

ただし、住民税非課税の判定は「所得」のみで行われるため、年金収入は少なくても預貯金などの金融資産を保有しているシニア世帯も含まれる点には注意が必要です。

一方で、高齢者の生活実感に目を向けると、J-FLEC(金融経済教育推進機構)の『家計の金融行動に関する世論調査 2024年』では、二人以上世帯のうち60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日々の生活費をまかなうのも難しい」と回答しています。

さらに、年金だけではゆとりがないと感じる世帯の約6割が物価上昇による支出増を懸念しており、医療費や介護費の自己負担増への不安も大きいことがうかがえます。

5. 2025年からの制度改正「年収106万円の壁」と社会保険の適用拡大

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、パートやアルバイトで働く人々の働き方に大きく影響する、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する内容が含まれています。

5.1 「年収106万円の壁」の概要

「106万円の壁」とは、パートタイマーなどの短時間労働者の年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自身で保険料を支払う必要が生じる目安のことです。

保険料の負担によって手取り額が減少するため、収入が基準を超えないように労働時間を調整する「働き控え」の一因と指摘されてきました。

社会保険の適用対象となる企業規模は段階的に拡大されており、2024年10月からは従業員数「51人以上」の事業所が対象となっています。

今回の法改正では、「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件を段階的に撤廃」することが決定しました。