2. 過去の現金給付と比較
政府は、これまでさまざまな給付金事業を実施してきています。主なものとして、直近に実施された3つの事業を紹介していきます。
また、現時点で判明している「子ども1人あたり2万円」の給付とも簡単に比較してみましょう。
2.1 【2021年】子育て世帯への臨時特別給付
2021年に、子育て世帯に限定して10万円の給付が実施されました。詳細は以下のとおりです。
- 対象:年収960万円未満の0歳〜高校3年生の子どもがいる世帯
- 金額:10万円(先行給付5万円+追加給付またはクーポン給付5万円、もしくは10万円一括給付)
- 背景:コロナ禍の影響長期化
今回の給付金と同じように子育て世帯にターゲットを絞った給付でした。金額は10万円と、今回の給付よりも大きい金額です。一方、給付の仕組みが自治体に委ねられたことで、あるまちでは一括で10万円が給付されたり、別のまちでは現金5万円、クーポン5万円と、自治体・世帯ともに混乱しかねない制度設計となっていました。
また、当時は児童の養育者が年収960万円以上の場合、給付金の対象外としていました。今回の給付は一律2万円が現金で給付されるうえ、年収・所得制限はありません。よりシンプルな制度設計がされているといえるでしょう。
2.2 【2024年】定額減税
2024年に実施された定額減税では、多くの人が減税や給付を受けられました。詳細は以下のとおりです。
- 対象:所得金額1805万円以下(給与収入2000万円以下)の納税者
- 金額:所得税3万円・住民税1万円の減税(引ききれない分は差額を1万円単位で切り上げて現金給付)
- 背景:税収増の還元
定額減税は、働く現役世代も住民税非課税世帯も恩恵を受けられる制度でしたが、1回限りの政策としては仕組みが複雑でした。所得税は直接控除される一方、住民税は6月分を徴収せず、1万円を差し引いた金額を7月から翌年5月までで分けて負担する形となり、減税されたことを実感しにくいといった課題がありました。
今回の2万円給付は、こうした複雑な制度設計にはなっていません。口座の入出金明細や通帳を見れば、振り込まれたことがすぐわかるようになっています。
2.3 【2025年】住民税非課税世帯への3万円給付
記憶に新しいのが、今年の春ごろに実施された「非課税世帯への3万円給付」です。詳細は以下のとおりです。
- 対象:住民税非課税世帯
- 金額:3万円(子どもがいる場合は1人あたり2万円が追加)
- 背景:物価高への支援
こちらは住民税非課税世帯を中心に手厚い支援をしました。しかし、2023年・2024年に実施された住民税非課税世帯への10万円給付に続く内容だったことや、金額が前年に比べて減額されたことなどから、納税者・現役世代から不満の意見も見られました。
今回の給付事業は、対象となる人に現役世代や納税者が含まれます。とはいえ、ターゲットは子育て世帯に絞られているため「不公平だ」と感じる人もいるでしょう。
次章では、給付以外の経済対策について解説します。