2026年の幕開けとともに、改めて家計の固定費を見直している方も多いのではないでしょうか。
特に75歳以上の「後期高齢者」がいる世帯にとって、日々の通院や薬代などの医療費は、家計に直結する重要な項目です。
1月は、昨年の医療費の領収書を整理したり、これからの通院計画を立てたりする中で、「窓口負担の割合」がどう決まっているのかを再確認するのに適した時期です。
現在、後期高齢者の窓口負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は「2割負担」の対象となります。
この判定基準は少し複雑で、単に年金が多いかどうかだけでなく「その他の合計所得」との合算で決まります。
さらに、単身世帯か複数世帯かによっても、判定される金額のラインは大きく異なります。
2025年秋には、負担増を抑えるための時限的な配慮措置が終了したこともあり、以前よりも医療費の支払いに重みを感じている方もいらっしゃるでしょう。
今回は、2026年からの通院生活を支える知識として、「2割負担」の対象となる具体的な所得のボーダーラインを分かりやすく解説します。
自分や家族がどの区分に該当するのか、基準を一緒にチェックしていきましょう。
1. 【シニアの1人当たり医療費】どれくらいかかる?年代別でチェック!
シニア世代の医療費は、年齢を重ねるごとにかさんでいくのが一般的です。
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度、医療保険制度分)」より、60歳以上の各年齢層における、1人当たりの医療費計、および診療費における「入院+食事・生活療養」の割合について見てみましょう。
1.1 【60歳以上】1人あたり医療費計の推移
- 60~64歳:38万円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
- 65~69歳:48万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
- 70~74歳:61万6000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:42%
- 75~79歳:77万3000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
- 80~84歳:92万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:50%
- 85~89歳:107万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:58%
- 90~94歳:117万9000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
- 95~99歳:125万8000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
- 100歳以上:123万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:70%
医療費計は、60歳代前半の38万円から90歳代後半の125万円超へと、約3.3倍に増加しています。
この金額の増加を特に押し上げているのは、「入院+食事・生活療養」にかかる費用です。
70歳代までは通院が中心ですが、80歳以降では医療費の50%超を「入院+食事・生活療養」のための費用が占め、90歳代では70%に迫ります。
国の高額療養費制度を使っても、毎月の上限額の自己負担に加え、食事代や差額ベッド代(全額自己負担)といった出費が続く点にも留意が必要でしょう。
介護費用についても、生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、一時費用(※1)の合計額で47万円、月々支払う費用はひと月あたり9万円(※2)。
もちろん実際にかかる金額は、要介護度や介護をおこなう場所によっても個人差が出ます。
※1:住宅改造や介護用ベッドの購入費など
※2:いずれも公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
厚生労働省の「令和6年簡易生命表」における、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳。
長寿時代を見据えたライフプランには、入院が長期化したり、介護にかかる費用、その間の生活を支えるための視点が不可欠と言えるでしょう。
2. 【シニア世帯の所得事情】1世帯あたりの「所得額」は平均でどのくらい?
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」をもとに、高齢者世帯(※)における「1世帯あたりの平均所得額」を確認してみましょう。
上記調査によると、高齢者世帯の平均的な総所得は年間314万8000円で、月額に換算するとおよそ26万円となります。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
2.1 【内訳】高齢者世帯の「平均所得金額」を見る
総所得:314万8000円 (100.0%)
【内訳】(カッコ内は総所得に占める割合)
- 稼働所得:79万7000円(25.3%)
- うち雇用者所得(※):66万5000円(21.1%)
- 公的年金・恩給:200万円(63.5%)
- 財産所得:14万4000円 (4.6%)
- 公的年金・恩給以外の社会保障給付金:1万8000円 (0.6%)
- 仕送り・企業年金・個人年金等・その他の所得18万9000円(6.0%)
内訳を見ると、全体の約3分の2を占めるのが月額約16万6000円の「公的年金」で、次に多いのが、約2割にあたる月額約5万5000円の「雇用者所得」です。
上記から、高齢者世帯の生活は公的年金を中心に成り立ちつつ、就労による収入がそれを補完している実態がうかがえます。
※雇用者所得:世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額で、税金や社会保険料を含む
続いて、「後期高齢者医療制度」の加入対象や保険料の仕組みについて見ていきましょう。
3. 75歳のシニアが原則加入対象の「後期高齢者医療制度」とは?
後期高齢者医療制度は、公的医療保険制度の一つで、原則として75歳以上の方、または65歳以上74歳以下で一定の障害認定を受けた方が加入対象となります。
就労の有無にかかわらず、75歳に到達すると、それまで加入していた国民健康保険や被用者保険、共済組合などから、自動的に後期高齢者医療制度へ移行する仕組みです。
保険料は、すべての加入者が等しく負担する「均等割」と、所得に応じて算定される「所得割」を合算した金額となります。
なお、保険料の具体的な額は、居住している都道府県ごとに定められています。
4. 【後期高齢者医療制度】医療費の自己負担割合は「1割」「2割」「3割」のいずれか
後期高齢者医療制度では、医療費の自己負担割合が所得に応じて「1割」「2割」「3割」のいずれかに区分されています。
基本的には、一般的な所得水準の方は1割負担、現役世代と同程度の所得がある方は3割負担となります。
また、2022年10月1日からは、一定以上の所得がある方について、自己負担割合が2割へと引き上げられました。
厚生労働省の見込みでは、後期高齢者医療制度の加入者のうち、2割負担に該当する人は約370万人で、全体のおよそ2割にあたるとされています。
なお、2割負担となる方を対象に設けられていた配慮措置は、2025年9月末をもって終了しています。
4.1 【現在は終了】2025年9月末まで「2割負担」の人への配慮措置があった
後期高齢者医療制度における「2割負担」は、2022年10月に新たに導入された仕組みです。
この「2割負担」の対象となる方に対しては、2022年10月1日から2025年9月30日までの期間限定で、負担を和らげるための配慮措置が設けられていました。
具体的には、2割負担へ移行したことによる自己負担の増加分について、1カ月あたりの上限を3000円までに抑える内容となっていました。
現在は配慮措置の適用期間が終了しているため、1割負担から2割負担へ移行した方では、医療費の自己負担が実質的に増える状況となっています。
次章では、「2割負担」の対象となった人の年金収入とその他の所得を合算した金額が、実際にはどの程度なのかを見ていきましょう。
5. 【後期高齢者医療制度】窓口負担が2割の人「年金収入+その他の合計所得」はいくら?
後期高齢者医療制度の加入者のうち、次の(1)と(2)の両方を満たす場合、医療費の自己負担割合は「2割」となります。
- 1:同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上のかたがいるとき。
- 2:同じ世帯の被保険者の「年金収入(※1)」+「その他の合計所得金額(※2)」の合計額が、被保険者が世帯に1人の場合は200万円以上、世帯に2人以上の場合は合計320万円以上であるとき。
※1「年金収入」は、公的年金控除等を差し引く前の金額です。遺族年金や障害年金は含みません。
※2「その他の合計所得金額」は、事業収入や給与収入等から必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額です。
参考として、ご自身やご家族が2割負担に該当するかどうかを、以下のフローチャートで確認してみましょう。
5.1 【フローチャート】医療費負担が2割になる人の「年金収入+その他の合計所得」をチェック
75歳以上の方については、世帯全体の課税所得や年金収入などをもとに、医療費の自己負担割合が2割になるかどうかが判定されます。
具体的には、「課税所得が28万円以上」であることに加え、「年金収入とその他の所得を合算した金額」が定められた基準を上回る場合、医療機関の窓口での自己負担が2割となる仕組みです。
- 単身世帯:「年金収入+その他の合計所得」が200万円以上
- 複数世帯:「年金収入+その他の合計所得」が合計320万円以上
ご自身やご家族がどの負担割合に該当するかを詳しく確認したい場合は、厚生労働省が公表しているフローチャートを参照するとよいでしょう。
6. 【知っておこう】医療費が払えない人へは「一部負担金の減額・免除等」もある
家計状況が厳しく、医療費の自己負担額を支払うことが難しい場合もあるでしょう。
そのようなケースでは、都道府県や市区町村が定める一定の要件を満たすことで、自己負担金の免除や減額といった支援を受けられる場合があります。
一例として、東京都では次のような要件が設けられています。
- 被保険者または世帯主が、震災、風水害、火災その他これらに類する災害により住宅、家財その他の財産について著しい損害を受けたとき
- 世帯主または主たる生計維持者が、干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不良その他のこれらに類する理由により収入が著しく減少したとき
- 世帯主または主たる生計維持者が、事業または業務の休廃止、失業等により収入が著しく減少したとき
- 世帯主または主たる生計維持者が、重篤な疫病または負傷により死亡し、心身に重大な障害を受け、または91日以上の入院をしたとき(被保険者のみの世帯である場合を除く)
減額や免除が適用される期間は、申請日から最長で6カ月となっていますが、実際の適用期間は、支払いが困難な状況の度合いに応じて個別に判断されます。
手続きは、居住地の市区町村の窓口で行います。
なお、申請理由や世帯の状況によって必要となる書類は異なるため、事前に窓口へ確認しておくと安心です。
7. 世帯状況に合わせた判定基準を知り、賢く家計を管理しましょう
後期高齢者の医療費が2割負担になるかどうかは、住民税の課税所得が28万円以上あることに加え、年金収入とその他の所得を合わせた合計額が「単身なら200万円以上」「複数世帯なら合計320万円以上」であることが条件となります。
この基準を正しく知っておくことは、将来の支出を予測し、無理のない生活設計を立てるための第一歩です。
2026年最初の年金振込日となる2月13日を前に、まずは手元にある納税通知書や確定申告の控えを確認してみることをおすすめします。
医療費の自己負担割合は、健康保険証(被保険者証)にも記載されていますが、所得の変化によって年度の途中で変わる可能性もあります。
制度の仕組みを正しく把握し、公的な支援を最大限に活用しながら、健やかなシニアライフを送りましょう。
参考資料
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 東京都後期高齢者医療広域連合「一部負担金の減額・免除等」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
- 厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費」
- 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
横野 会由子
