数年前に話題となった「老後2000万円問題」以来、老後資金への不安が広がっています。

家計や保有している資産、ライフスタイルなどによって生活に必要な資金はそれぞれ異なりますが、近年は物価上昇も続いており、今や「老後に3000万円くらいないと安心できない」と感じる世帯もあるのではないでしょうか。

では、定年までに3000万円もの資産を貯めることは可能なのでしょうか。

資産形成の選択肢の1つとして、税制優遇制度の新NISAを活用した資産運用があります。

新NISAは投資で得た利益に、原則20%ほどかかる税金が「非課税になる制度」です。

そのため資産運用で利益が出た場合、新NISAを活用していないケースと比較して、非課税となるぶん手取り額が多くなるため効率的な資産形成に役立ちます。

2024年から始まった「新NISA」では年間投資枠が最大360万円に拡大され、生涯投資できる非課税枠は1人あたり合計1800万円に増えました。

また非課税で保有できる期間も無期限化され、従来以上に長期の積立投資がしやすくなっています。

そこで本記事では、新NISAの積立投資で「老後までに3000万円を貯める方法」を試算します。

積立投資を始める年齢によって、定年までに3000万円を用意するのに必要な毎月の積立額にどれほど差が出るのかをシミュレーションします。

さらに、運用利回りの違いによる影響も確認するので、ぜひ参考にしてください。

1. 「老後資金3000万円」があるシニア世帯の割合は?

まず現状として、現在の高齢世帯でどれくらいの世帯が3000万円以上の資産を持っているのか確認してみましょう。

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均結果」によると、世帯主が65歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は2564万円に上ります。

一方、貯蓄額の中央値は約1777万円となっており、多くの世帯は数千万円単位の貯蓄を持っていないことがわかります。

1.1 65歳以上世帯の貯蓄額分布

  • 100万円未満 7.7%
  • 100万円以上~200万円未満 3.7%
  • 200万円以上~300万円未満 3.4%
  • 300万円以上~400万円未満 2.8%
  • 400万円以上~500万円未満 3.2%
  • 500万円以上~600万円未満 3.4%
  • 600万円以上~700万円未満 2.6%
  • 700万円以上~800万円未満 2.9%
  • 800万円以上~900万円未満 3.0%
  • 900万円以上~1000万円未満 2.3%
  • 1000万円以上~1200万円未満 5.6%
  • 1200万円以上~1400万円未満 3.9%
  • 1400万円以上~1600万円未満 4.4%
  • 1600万円以上~1800万円未満 3.1%
  • 1800万円以上~2000万円未満 3.3%
  • 2000万円以上~2500万円未満 8.2%
  • 2500万円以上~3000万円未満 6.2%
  • 3000万円以上~4000万円未満 9.0%
  • 4000万円以上 21.1%
  • 平均値 2564万円
  • 中央値 1777万円

貯蓄額の分布を見ても、高齢世帯の間で資産額には大きな開きがあります。

3000万円以上の貯蓄を持つ世帯は全体の約3割です。

具体的には「3000万~4000万円未満」が9.0%、「4000万円以上」が21.1%を占めています。

一方で貯蓄500万円未満の世帯も約20.8%存在し、貯蓄がある世帯とそうでない世帯で二極化している状況です。

このように、老後に3000万円の貯蓄がある世帯は平均より裕福な部類と言えます。

老後資金3000万円は誰にでも簡単に達成できる額ではないからこそ、計画的な資産形成が重要になります。

では、新NISAを活用して【老後までに3000万円】の資産形成を目指すには「毎月いくら必要?」なのでしょうか。

金融庁のつみたてシミュレーターをもとに試算した結果を解説します。

2. 新NISAを活用して【老後までに3000万円】の資産形成を目指すには「毎月いくら必要?」

では、新NISAを活用して老後までに3000万円の資産を形成するには、毎月どれくらいの積立投資が必要になるのでしょうか。

金融庁の「つみたてシミュレーター」を用いて、年利3%で運用できた場合の必要積立額を試算してみました。

積立開始年齢ごとの毎月の必要積立額と、積立期間中に拠出する元本の合計額は以下の通りです。

2.1 《運用開始年齢別》3000万円目指すために必要な毎月の積立金額

積立開始年齢:毎月必要な積立金額(元本)

  • 25歳:月3万2709円(1570万)
  • 30歳:月4万791円(1713万)
  • 35歳:月5万1840円(1866万)
  • 40歳:月6万7645円(2029万)
  • 45歳:月9万1784円(2203万)
  • 50歳:月13万2603円(2387万)
  • 55歳:月21万5134円(2582万)

※新NISAで運用可能な金額は元本1800万円まで
※運用利回りは年率3%でシミュレーション

シミュレーション結果から明らかなように、積立開始年齢が早いほど、毎月の積立額を少なくして3000万円の達成を目指せます。

たとえば25歳から積立投資をはじめたとすると、月々3万2709円(40年間の元本1570万)の負担で老後に3000万円を用意できる計算です。

【年利3%で試算】25歳~65歳まで「3000万円」を目指す場合に必要な毎月の積立金額3/6

【年利3%で試算】25歳~65歳まで「3000万円」を目指す場合に必要な毎月の積立金額

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

一方、55歳からでは毎月21万5134円(10年間の元本2582万)もの積立が必要となり、現実的にはかなり厳しい負担と言えます。

また注目すべきは、必要な積立元本の総額の違いです。

25歳から積立投資を開始した場合、積み立てる元本の合計は1570万円ですが、55歳で開始すると元本の合計は2582万円になります。

つまり、55歳から積立投資をはじめた場合、25歳からはじめたケースと比較して「運用期間が30年間短くなる」ことで1000万円以上も多く元本を拠出しなければなりません。

【年利3%で試算】55歳~65歳まで「3000万円」を目指す場合に必要な毎月の積立金額4/6

【年利3%で試算】55歳~65歳まで「3000万円」を目指す場合に必要な毎月の積立金額

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

この差は、複利の効果により、運用期間が長いほど運用益が雪だるま式に増える可能性があるためです。

市場の動向によりますが、長期間運用できれば元本以上に増える利益部分が大きくなることも期待できるため、必要な元本は少なくて済みます。

逆に言えば、運用期間が短いと、十分な複利効果を得ることが難しい傾向にあるため、自力で拠出する元本を増やさないと目標額に届かなくなるケースもあるでしょう。

このような理由から、時間を味方につけるためにも、できるだけ早く積立投資を始めたほうが、少ない元本負担で目標額を達成する可能性が期待できることがわかります。

ただし、ご紹介した内容はあくまでも積立投資のシミュレーション結果です。

実際の資産運用では、市場の動向や社会情勢などにより、価格変動リスクや元本割れリスクなどが伴い、利益が期待できるだけではありません。

リスクとリターンは比例する傾向にあるため、大きなリターンを目指すとその分リスクも高まることが考えられます。

3. 運用利回りの違いで必要額はどう変わる?

上述の試算では年利3%で運用できたケースを前提としました。

しかし、実際の投資では将来の運用利回りが確約されているわけではありません。

では、運用利回りの前提が違うと、目標達成に必要な毎月の積立額はどの程度変わるのでしょうか。

25歳から40年間積立投資を行い、老後に3000万円を目指す場合で比較してみます。

仮に運用利回りが年1%にとどまる場合、必要な積立額は月5万907円ほどになります。

目標金額3000万円「想定利回り1%・積立期間40年」試算結果5/6

目標金額3000万円「想定利回り1%・積立期間40年」試算結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

一方、運用利回りが年5%得られたとすると、必要積立額は月2万236円程度で済みます。

両者を比べると、毎月の積立額に2.5倍以上の開きが出る計算です。

運用利回りが資産形成のスピードにいかに大きな影響を及ぼすかが分かります。

市場の動向にもよりますが、長期で分散すれば年3~5%程度の運用益を得られるケースも期待できるでしょう。

運用利回りの差は、長い年月をかけると、最終的な資産額に大きな違いを生むことが考えらえます。

目標金額3000万円「想定利回り5%・積立期間40年」試算結果6/6

目標金額3000万円「想定利回り5%・積立期間40年」試算結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

4. 資産形成は「時間を味方につけて」コツコツ続ける選択肢も

本記事で紹介してきたように、老後資金の準備は早く始めるほど、時間を味方につけて資産形成を進めていくことが期待できます。

長期間運用できれば複利の恩恵を受けられるため、毎月の負担を軽くしつつ目標額を目指すこともできるでしょう。

一方、預貯金だけに頼っていては、現在の日本のように物価上昇が続く環境ではお金の実質的な価値が目減りしてしまうことも考えられます。

また、低金利の銀行預金に預けておくだけでは、大きく資産を増やすことは難しい傾向にあり、むしろインフレ分だけ資産の購買力は目減りしていくのです。

老後に備える選択肢の1つとして、新NISAなどの税制優遇制度などを活用するなど、できるだけ早いうちからコツコツと資産形成を始めることが大切です。

まだ老後は先の話と思っていても、時間はあっという間に過ぎてしまいます。

将来の暮らしのために、家計や保有している資産全体の状況、年金情報などを確認し、各ご家庭に合った資産形成について考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料