5. 年金生活者支援給付金の申請・手続きポイント

老齢年金生活者支援給付金は、支給対象となったら自動的に年金に上乗せされるものではありません。公的年金本体と同様に「請求手続き」をおこなわないと、受け取ることができないお金です。

今回は、手続きフローを「これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人」と「すでに老齢年金を受給している人」に分けて紹介しておきましょう。

5.1 これから65歳を迎え、老齢年金の受給がスタートする人

誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書とともに給付金請求書が郵送されます。

必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに最寄りの年金事務所に提出します。

5.2 すでに老齢年金を受給している人

冒頭でも触れたように、すでに老齢年金を受給中の人が、所得の低下などにより新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合、毎年9月の第1営業日(2025年は9月1日)から順次、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届きます。

必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。

5.3 年金生活者支援給付金「要件満たせば、2年目以降は手続き不要で継続受給」

年金生活者支援給付金は、一度請求手続きをおこなえば「支給要件を満たす限り」2年目以降は手続き不要です。

前年の所得に基づいて継続支給の判定がおこなわれ、その結果が毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。

給付額が改定された際には「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、給付金の支給対象外となった場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。

6. 2025年制度改正/社会保険“106万円の壁”とは?

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、アルバイト・パートなどの働き方と関わりが深い、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が含まれています。

6.1 「年収106万円の壁」とは?

「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自分自身で保険料を支払う義務が発生する目安です。

保険料負担で手取りが減ることから、収入が基準額を超えないよう労働時間をコントロールする「働き控え」が生じる原因の一つとされてきました。

また、社会保険の適用対象となる企業規模はこれまで段階的に拡大されてきて、2024年10月からは「51人以上」の事業所となっています。

今回の改正では「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件の段階的撤廃」がおこなわれることが決まりました。

6.2 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

2025年7月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の改正により、このうち4の「賃金要件」と5の「企業規模要件」が撤廃されます。

いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、3年以内に廃止へ。社会保険に加入する企業の規模は、10年かけて段階的に拡大されます。

7. 【まとめ】給付金制度を味方にして、年末の家計を守る

12月は家計負担が増える時期ですが、「年金生活者支援給付金」は支援を必要とする高齢者の暮らしを下支えする重要な制度です。

冬の生活費負担が大きくなる今だからこそ、受給資格や手続きの有無、見落としている制度がないか早めにチェックして、安心して新年を迎えられる準備を進めましょう。

また年金生活者支援給付金以外にも、自治体が実施している支援策も複数あります。

お住まいの地域によって内容は異なるため、まずは自治体の公式サイト等で最新情報を確認してみましょう。

参考資料

橋本 優理